ルイのピアノ生活

第83回 モーツァルトにはまっています/モーツァルト:ソナタ kv.533-II

2009/04/30
♪ 演奏
モーツァルト:ソナタ kv.533-II  動画 動画:(9,00s)
 

私は最近少しモーツァルトにはまっています。
彼の曲を弾くと美しいだけではなく、モーツァルト自身の心の深さや奥行きを感じられます。モーツァルトの音楽を弾いたり聴いたりすると「人生って素晴らしい!生きてて良かった!」と自然に感じます。

「モーツァルトは天才だった」とよく聞きます。勿論、間違いなく天才なのですが、この「天才」という言葉が同時にモーツァルトの存在を少し遠ざけてしまう様に感じます。私はモーツァルトは本当はすごく近くに感じられる作曲家だと思います。

モーツァルトはいくら天才と言っても庶民的な一面を持ち、彼の音楽は自分の気持ち・感情というより一般の人が見て感じている事を表現しています。特にベートーヴェンの時代から作曲家達は音楽で自己主張をし始めますが、モーツァルトの音楽はその点まだとても控えめに聞こえます。彼の表現している事が決して控えめな訳ではありません。逆にすごく豊かで壮大なのですが、モーツァルト自身の主張は慎ましやかです。

彼の曲を聴くとミニ芝居やオペラみたいだと感じることがあります。芝居に色々な人物-大きい人・・小さい人・・太った人・・細い人・・優しい人・・怖い人・・面白い人・・嫌な人・・が登場します。モーツァルトのピアノ曲の中にはこんな人物たちが登場して、その人たちの織り成すストーリーの中に、色々な感情表現も聞こえて来ますが、モーツァルトは自分の素顔を隠しているようにも感じます。色んな人物を登場させて、その裏にモーツァルトが隠れているようです。やはり、どこか自分の本心を強く主張したくなかったのかも知れません。

でも、必ず曲中でモーツァルト自身の気持ち、彼の素顔がちらりと覗く瞬間があります。曲の途中、突然登場人物が消えて、モーツァルト自身の心が表れると、そこは太陽の光が差し込んで、空が一瞬晴れるように感じます。そして、その瞬間はなにより美しいです。この魔法の瞬間に触れると自分が天国にいるように感じます。

こんなモーツァルトの曲を弾くことはとても難しいですが、指一本一本を1人の人物として考えると良いです。1音1音をまるで生きているように弾くのは難しいけれど、とても楽しい事です。ピアノに座って指10本に芝居をさせていると思うと、自分の指を見るだけでも楽しいです。

それでは、また!

ルイ・レーリンク

- レッスンビデオ -
僕が弾く時に考えている事を少しでもビデオで皆にお伝えできればという思いから、 今回の曲は演奏の録画・録音と別に「レッスンビデオ」を作りました。 見ていただけると嬉しく思います。
レッスンビデオバナー

ルイ・レーリンク

オランダ出身。7歳からピアノを始め、15歳で音楽院入学。アムステルダム・スヴェーリンク音学院に於いてW・ブロンズ氏他に師事する。1996年音楽活動の為、日本に移住。「肩の凝らないクラシック」をモットーに各地で通常のコンサートから学校や施設のコンサート、香港等海外でも公演。九州交響楽団との共演、CD「ファイナルファンタジー・ピアノコレクションズ9」の演奏と楽譜監修を行うほか、CD「夢」をリリース。個人/公開レッスンや音楽講座を行い、ピアノ・音楽指導にも意欲的である。洗足学園音楽大学非常勤講師、洗足学園高等学校音楽科講師として、「演奏法」の授業 、演奏家を目指す生徒のための「特別演奏法」の授業、ピアノレッスンを受け持つ。

NHK/BSテレビ「ハローニッポン」、「出会い地球人」
TBSテレビ「ネイバリー」、TBSラジオ「大沢悠里のゆうゆうワイド」他出演。

ピアノ演奏法のページ : http://www.senzoku.pianonet.jp も作成中
演奏者のホームページ http://www.pianonet.jp

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