ピアノ曲MadeInJapan

◆大人のためのJAPAN7◆入野義朗作品(1950's-1「12音主義」)

2007/11/09
79 滝廉太郎 誕生(~1903)
1880

86 山田耕筰 誕生(~1965)
1890
1900
00 ♪滝廉太郎《メヌエット》

03 諸井三郎 誕生(~1977)
1900
00 ♪滝廉太郎《メヌエット》


03 諸井三郎 誕生(~1977)

07 平尾貴四男 誕生(~1953)
1910

14 伊福部昭 誕生(~2006)
   早坂文雄 誕生(~1955)

17 ♪山田耕筰《スクリャービンに捧ぐる曲》
1920

21 入野義朗 誕生(~1980)

29 湯浅譲二 誕生
1930
30 武満徹 誕生(~1996)
33 ♪伊福部昭《日本組曲》
三善晃 誕生
1940
40 ♪諸井三郎《ピアノソナタ第2番》
41 ♪早坂文雄《室内のためのピアノ小品集》

46 「新声会」結成
47 「新作曲家協会」結成
48 ♪平尾貴四男《ピアノソナタ》
48 「地人会」結成
1950

51 「実験工房」結成

53 ♪三善晃《ピアノソナタ》

55 「深新会」結成

57 ♪湯浅譲二《内触覚的宇宙1》
58 ♪入野義朗《3つのピアノ曲》
1960

69 ♪入野義朗《ピアノのための4つの小曲》
1970~

1950's その1 12音主義


1950年代、日本のピアノ曲は新しい時代に入ります。西欧の前衛音楽から影響を受け、日本のピアノ曲もいよいよ「現代音楽」の様相を呈してくるのです。ヨーロッパ最前線の音楽が、タイム・ラグなしに取り入れられる...。そのことにより、日本のピアノ曲も世界の同時代音楽と同じ土俵で評価される時代が始まったのでした!


12音技法到来!

きっかけを作ったのは、エリート西欧派「新声会」のメンバーでした。特に入野義朗柴田南雄戸田邦雄等は、規範としてきたドイツ音楽の最先端、シェーンベルクの12音技法に興味を抱きます。調性に支えられたドイツ音楽を、根底から覆すような新しい技法。そこに光を見出した彼らは、雑誌や論文、作曲を通して12音技法を紹介することで、日本の作曲界に大きな衝撃をもたらしました。


12音技法とは?

ところで12音技法とは...?
「オクターヴに含まれる12の半音すべてを均等に扱い、無調を組織化する技法」と、音楽之友社:音楽中辞典にはあります。

バロック以降の西洋音楽では、オクターヴ内にいくつか大事な音があり(主音、属音、導音など)、長調・短調といった調性システムが大きな力を持っていました。それが後期ロマン派以降、徐々にシステムが壊され、調性感が薄らいでいきます。シェーンベルクによって開発された12音技法は、オクターヴ内の12の音を全て均等に扱うことで、調性感のない無調の音楽を作る新しいシステムでした。

今、ピアノの鍵盤1オクターブに1~12までランダムに番号を振って、その順番通りに弾くとします。すると、12の音によるひとまとまりの音列が現れますね。

 


長調とも短調とも言えないこの不思議な音列をテーマとして、リズムを変えたり、和音にしたり、逆から(12→1)弾いたり、移調したりして曲を構成していく...。12音技法を簡単に説明するとこうなります。


《十二の音で》

例えば入野義朗の子どものための作品《十二の音で》では、楽譜冒頭に示された2種類の音列が、


様々に変形しながら19回繰り返されることで曲が構成されています。


入野義朗作曲「四つの小曲」より《十二の音で》
♪音源を聴く(外部リンク著者HPへ)


現代的な響きがする無調作品でありつつも、生き生きとした音楽が聴こえてきますね!同じく入野作品《コラール》では、音列が縦に重ねられて和音として使われることから、同じ12音技法による作品でも全く違った雰囲気を醸し出しています。


入野義朗作曲「三つのピアノ曲」より《コラール》
♪音源を聴く(外部リンク著者HPへ)


これら入野義朗作品は、全音楽譜出版社:入野義朗ピアノ作品集に収められています。12音の音列をたどりながら弾く作業には、パズルのような面白さがありますよ!

なお12音技法を用いたピアノ曲には、他にも松平頼則「盤渉調〔越天楽〕によるピアノのための主題と変奏」より《変奏3》や、諸井誠《ピアノのためのαとβ》等があります。


無調で世界に!

12音技法は、調性音楽から無調音楽への転換という点で、それまでのクラシック音楽の歴史を、180度変化させるものでした。そしてその変化は、もともと調性システムを伝統に持たない日本人にとっては、自身の感性をより直接的に表現できるきっかけともなりました。

以後ヨーロッパでは、電子音楽、ミュジック・コンクレート、トーン・クラスター、セリアリズムなど、無調音楽を進化させた様々な前衛音楽が開発されます。そして日本のピアノ曲も、それらをタイム・ラグなしに取り入れていく中で、世界の同時代音楽と同じ土俵で評価される時代が始まったと言えましょう。



次回は三善晃《ピアノ・ソナタ》を中心に、今回とはまた異なる50年代の流れご紹介したいと思います。お楽しみに!


須藤 英子(すどうえいこ)

東京芸術大学楽理科、大学院応用音楽科修了。在学中よりピアニストとして同年代作曲家の作品初演を行う一方で、美学や民族学、マネージメント等について広く学ぶ。04年、第9回JILA音楽コンクール現代音楽特別賞受賞、第6回現代音楽演奏コンクール「競楽VI」優勝、第14回朝日現代音楽賞受賞。08年、第8回オルレアン国際ピアノコンクール(フランス)にて、深見麻悠子氏への委嘱・初演作品が、日本人として初めてAndreChevillion-YvonneBonnaud作曲賞を受賞。同年、野村国際文化財団、AsianCulturalCouncilの助成を受け、ボストン・ニューヨークへ留学。09年、YouTubeSymphonyOrchestraカーネギーホール公演にゲスト出演。現在、現代音楽を中心に、幅広い活動を展開。和洋女子大学・洗足学園高校音楽科非常勤講師。
ホームページ http://eikosudoh.webcrow.jp/

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