ショパン生誕200周年レセプションで、ピティナ及びピティナ会員が表彰

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2010/12/14
ショパン生誕200周年レセプション  ショパン生誕200周年レセプションで、ピティナ及びピティナ会員が表彰 ~200年の歴史を踏まえて、また新たな一歩


12月2日東京都内にて、「ショパン生誕200周年記念グランド・レセプション」が、ポーランド大使館主催により盛大に催された。2010年度ショパン国際コンクール優勝者ユリアンナ・アヴデーエワを始め、今年度コンクール審査員を務めたマルタ・アルゲリッチ、小山実稚恵さん、歴代のショパンコンクール日本人入賞者・参加者など、関係者が多く集まった。

レセプションでは、「ショパン・パスポート」「ショパン年2010記念レリーフ」「文化功労勲章」などの表彰が行われた。ピティナは、ショパン国際コンクール入賞者・参加者を数多く輩出した実績を高く評価され、「ショパン年2010記念レリーフ」を授与された。2005年度第4位入賞を果たした関本昌平さんの指導者・二宮裕子先生(ピティナ副会長)が代表して登壇し、レリーフを受け取った。

また '芸術市民としての称号'である「ショパン・パスポート」は、ピアニストの横山幸雄氏(ピティナ正会員)や、若手ピアニストの代表として小林愛実さん(ピティナ学生会員)らが受賞した。現在15歳の愛実さんは今年EMI Classicsよりショパン他のCDをリリース、来年は第2弾CDに続き、NYカーネギーホールを含む演奏ツアーが予定されている。なおこのパスポートのVISA欄にはショパンの生い立ちが記されているが、専用の紫外線を当てて文字を浮かび上がらせるというユニークな仕掛けになっている。


受賞者は以下の通り(敬称略)。

ショパン・パスポート 横山幸雄、小林愛実、エヴァ・ポブウォッカ、小曽根真、井上道義、観世銕之丞(能楽師)
ショパン胸像 遠藤郁子
ショパン年2010
記念レリーフ
全日本ピアノ指導者協会、東京藝術大学音楽学部、月刊ショパン、一色まこと(『ピアノの森』著者)
グロリア・アルティス
文化功労勲章
中村紘子、内藤克洋、日本ショパン協会、田村進、小林仁

表彰式に続いて、2010年度コンクール優勝者のアヴデーエワがステージに登場し、ノクターンop.27-2英雄ポロネーズを力強く演奏した。万雷の拍手に包まれた後、月刊ショパン編集長・内藤氏より乾杯の音頭が取られ、歓談の時間となった。グランド・レセプションは、ショパンを心から愛する人々が一同に会し、ショパン生誕200周年を記念するのにふさわしい熱気溢れるパーティとなった。


ピティナとショパンの関わり。ショパンが引き出す「上を目指す力」

ショパン生誕200周年レセプション

ショパン生誕200周年レセプション

関本昌平さん(2005・4位入賞)、佐藤美香さん(2000・6位入賞)、根津理恵子さん(2005・決勝進出)、大崎結真さん(2005・決勝進出)・・・。今回の「ショパン記念レリーフ」表彰は、ピティナが多くのショパン国際コンクール入賞者・参加者を輩出してきた証である。では、なぜこれほど多くの若者がショパンを目指すのだろうか?

ピティナが毎年開催しているピティナ・ピアノコンペティションは、D級(中2以下)よりロマン派課題曲としてショパン・エチュードが選択できる。これは「ショパンが弾きたい」という一心で、上の級を目指す小さい子供たちが多いことの表れである。一方、ピアノ曲事典の「ショパン」ページは毎月7万pvのアクセスを集め、全作曲家の中でも圧倒的な人気を誇る。また「ショパン物語」(林倫恵子著)は連載170回を超え、その人気は未だ衰えない。ショパンは年齢を問わず、永遠の憧れなのである。

多くのショパン愛好者の中から、選りすぐりの若手ピアニストが、5年に一度ショパン国際コンクールに挑戦してきた。今年も全参加者78名中日本人は17名、そして日本から多くの聴衆がワルシャワへ詰め掛けた。「なぜ日本人はそんなにショパンが好きなのですか?」とワルシャワ市民も関心するほど、日本人はショパンを愛している。

ヴァルデマル・ドンブロフスキ氏(国立ショパン・インスティチュート所長、元文化・国家遺産大臣)は、「ショパンはフランス人でもドイツ人でも、ポーランド人ですらない。彼はラファエロやゲーテやモーツァルトらが住む、詩人の世界の住人なのです」とハインリヒ・ハイネの言葉を引用した。ショパンの音楽は、高みを目指す力を引き出してくれる。そして日本人は心の中に、憧れに向かって真っすぐ進んでいく力を秘めている。


様々な解釈が生まれたショパンコンクール。「審査というより、『発見』」とアルゲリッチ

グランド・レセプションに先立ち、別室にて「ショパン国際コンクール記者会見」が行われた。会場は座りきれないほどの多くの報道陣が詰め掛け、熱気に包まれた。拍手とともに優勝者ユリアンナ・アヴデーエワを始め、ポーランド共和国臨時代理大使、国立ショパン・インスティチュート所長、副所長、NHK交響楽団常務理事などが登場した。そして来日中であった審査員マルタ・アルゲリッチとダン・タイ・ソンも途中から出席し、会見に華を添えた。

アルゲリッチは、「今回は審査というより、『発見』をしに来たという感じです。今の若いピアニストたちが、これだけの熱意と献身的な気持ちを持ってショパンの音楽に取り組んでいることに感銘を受けました」と述べ、人生における特別なひと時になったと語った。またダン・タイ・ソンは、今年はアジア勢が残らなかったのは残念だが、大変レベルが高く、特にロシア・東欧勢の躍進が目立ったと講評した。

またコンクールの意義について、スタニスラフ・レチシェンスキ氏(国立ショパン・インスティチュート副所長)は「今年のコンクールは様々な解釈が登場し、競争の要素を超えて、音楽を楽しむことができたと思います」。ドンブロフスキ氏は「歴代のショパンコンクール入賞者は、ピアノ演奏の新しい可能性を拓いてきた」と述べ、ショパンコンクールの意義をあらためて示した。
なお、入賞者を含む14名の演奏が収録したCDセットがリリースされる予定である。


コンクール後は、どう成長していく?

コンクール後はどう成長していけばいいのか?ショパンコンクール優勝者も同じ思いを抱える。
45年ぶりの女性優勝者となったアヴデーエワから、大先輩のアルゲリッチに「どのようにしたら、音楽的にも人間的にも成長していけるでしょうか?」と質問。それに対して「ショパンコンクールで優勝したことには、プレッシャーは感じませんでした。でもコンサートでプレッシャーを感じることはあります。それとどう向き合うか、どうやってバランス良く生きていけばよいのか、私も常に模索しています。それが人生です」とアルゲリッチ。大先輩の一言に、アヴデーエワも深く感じ入っていた。


世界で広がったショパンの輪

ショパンを語る時、誰もが「ショパンは世界市民である」という。その言葉を象徴するように、今年はショパンイヤー実行委員会が世界各国で立ち上げられ、音楽家のみならず、画家、文学者、政治家なども委員に加わった。ポーランドでは「Chopin2010」というホームページを開設し、全世界で行われるショパン関連イベントをデータベース化した。その数はリサイタルだけでなく、ポピュラー、ジャズアレンジのコンサート、舞台やバレエも含め、1年間で実に4000!

日本でも『ラ・フォル・ジュルネ・オ・ジャポン~ショパンと宇宙』が5月に開催され、有楽町国際フォーラムや丸の内エリアが優雅なショパンの音色で満たされた。エリアコンサートにはピティナ関係者も多く出演したが、ピアニストたちの熱い情熱に、街を歩く人々は足をとめ、じっと聴き入っていた。

また日本とポーランドがコラボレートした新作能『調律師 ─ ショパンの能』も企画された。発起人となった在日ポーランド特命全権大使ヤドヴィカ・ロドヴィッチ・チェホフスカ女史は、かねてから日本人の繊細な感受性と芸術への造詣の深さに感銘を受けており、天皇皇后両陛下や小泉純一郎元首相がポーランドへ来訪した際、ワジェンキ公園のショパン像や聖十字架教会へ積極的に足を運ばれたことが印象に残ったそうだ。その想いは、日本とポーランドを結ぶ新しい芸術として昇華した。公演は来年2月にポーランドと日本で行われる。

そして今年開催された公演の中で最大規模を誇るのは、8月にワルシャワで開催された「ショパンとショパンのヨーロッパ音楽祭」である。アルゲリッチやピリス、フー・ツォン、海老彰子など著名アーティストが集まり、1ヶ月間に渡って盛大に開催された(2009年には小林愛実さんも出演)。ショパンが愛した作曲家、ショパンを愛した作曲家・・ショパンを取り巻く様々な音楽が演奏され、夏のワルシャワは大変な活気を見せた。そして、10月のショパン国際ピアノコンクールの熱狂へと繋がっていった。

インスピレーションに満ち溢れるショパンの存在は、200年経った今も、人と人、国と国をつなげ、その絆を深くしてくれる。アヴデーエワは「お互い誰か知らなくても、ショパンという共通項で結ばれていると強く感じます」とポーランド滞在中に話していた。そして今回日本では、「たとえ言葉が違っていても、私たちは『音楽が好き、ショパンが好き』という共通点で結ばれています」と力強く語ってくれた。もちろん、私たち日本人も同じ思いである。ショパンはこれからも、世界共通の希望であり続けるだろう。

【お知らせ】来年1月、優勝者ユリアンナ・アヴデーエワを含む入賞者が出演するガラ・コンサートが開催されます(東京ほか5都市)。出演者はルーカス・ゲニューシャス(2位)、インゴルフ・ヴンダー(2位)、ダニール・トリフォニフ(3位)、フランソワ・デュモン(5位)。なお4位のエフゲニ・ボジャノフは、来年1月佐渡裕氏とベートーヴェン協奏曲3番を共演する予定(兵庫ほか)。


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