読み物・連載

合宿で学ぶという方法~いつもと違う環境、いつもと違う先生から~

2014/11/14
合宿で学ぶという方法 ~いつもと違う環境、いつもと違う先生から~

インターネットを通じたeラーニングなどによって、高度な教育を安価に、しかも家に居ながらにして受けられる時代になりました。一方、多大な時間や経費をかけ、非日常の環境に身を置いて行う学びの形が、音楽に限らず、様々な分野で注目されています。いつもと違う環境の中で、いつもと違う先生から新鮮な視点をもらえることの効能は想像以上に大きいのでしょう。この特集ではピティナ会員が主催したり、関わったりしている「合宿」のあれこれをご紹介します。生徒さんの学び、指導者自身の学びの充実に、ご活用下さい。


さまざまな「合宿」紹介
  • Joy of  Music
  • 八ヶ岳室内楽セミナー
  • 軽井沢 作曲ワークショップ
  • ニューヨーク・サミット音楽祭
Joy of  Music 春の清里で8日間にわたって2002年から行われているセミナー。

2014年は東北から各地から関西までの各地から、小学生から大学院生という幅広い年齢層の参加者が12名、集まりました。
カリキュラムにはピアノレッスン、アンサンブル体験のほか、介護施設への訪問演奏やバーベキューといったイベントも盛り込まれています。自分のレッスンのみならず他の参加者とレッスンをシェアし合うことで、コンクールや試験などで「競い合う」ことからは離れて共に音楽と向き合うことができ、友情も育まれます。
企画・レッスンを一手に行ってきたのは演奏家として第一線を走り続ける田崎悦子先生。「ピアノの技術もさることながら、音楽家が、若いなりにも社会貢献する意識をもってもらいたいと、13年続けてきました。なにより、人として成長してほしいという願いをこめています」
「音楽」という共通項を持った子どもたちがじっくり交流できる貴重な場と言えるでしょう。
レッスン聴講も大歓迎です。学生やピアノ指導者の方も「温泉旅行に行く感覚で」まずはいらして頂きたいとのこと。
全面協力する会場「清里高原ハイランドホテル」のおもてなしも素晴らしく快適に過ごすことができます。

開催時期 例年3月下旬。次回は2015年3月22日(日)~29日(日)
参加資格 全日程に参加できる10歳前後から27歳前後までのピアニストを目指している男女。定員12名
受講料 148,000円(7泊8日 宿泊費込)。
聴講料 1,000円/1コマ、 15,000円/泊(宿泊費込 夕食・翌朝食付)
申込み/問合せ http://www.etsko.jp/jom.html

田崎悦子先生 演奏者プロフィール

八ヶ岳 室内楽セミナー 夏の八ヶ岳山麓、緑豊かな避暑地で行われる室内楽セミナー

ピアノ指導は土屋美寧子先生。レッスンで共演するヴァイオリニストは和波たかよし先生、田島高宏さん、チェロの林詩乃さん。第一線で活躍する演奏家との共演は、他では得難い経験になるはずです。レッスンでは温かくも厳しい言葉が飛び交います。それも講師陣の音楽への情熱ゆえ。
「今のレベルで演奏していて良いのか?実をいえば、それでも良いのだと思います。しかしこのセミナーに参加したからには、少なくとも『我々の考えるレベル』の一端を知ってもらいたい。我々が及びもつかない世界もあるのだから」とは和波先生のお言葉。
ある程度アンサンブル経験を重ねて、曲にも習熟した方の受講がお勧めですが、アマチュアで演奏活動をされている方も参加されており、レッスンの前後で格段の成長を遂げておられました。
ピアノ指導者のレッスン聴講も歓迎しています。

開催時期 次回は2015年8月18日~21日
受講参加資格 小学4年生以上のピアノ奏者(小学生は保護者同伴のこと)、高校生以上の弦楽器奏者
受講料 45,000円(宿泊費込)。
聴講料 35,000円(全期間 宿泊費込)
25000円(小学生に同伴する保護者)
申込み/問合せ 概要、申込み要項など
公式facebookページ

土屋美寧子先生 演奏者プロフィール

軽井沢 作曲ワークショップ

毎年進化し続ける「作曲ワークショップ」。2泊3日の講座には小学生も、80代のピアノの先生も参加します。各回の参加者は7~8人。 一日目朝はウォームアップにはじまり、数小節のメロディー作り体験などを経て、その日のうちに短い作品を発表までに至ります。二日目からはいよいよ音楽漬け。最終日の発表に向けて作品作りに取り組みます。
リピーターが多いのも特徴で、ある程度慣れている中学生以上の参加者が、初心者の小学生と組んでグループワークを行う、といったケースもあります。音楽のみならず、「教える」ことの大変さや団体生活の作法といった人間関係の学びも大きいようです。
「自分のことだけやっていても合宿の意味がない。コミュニケーションをとりながら学ぶことが大勢で学ぶ醍醐味」とは講師の佐々木邦雄先生。

開催時期 2015年は従来の8月に加えて、3月開催を企画中。3月25日(水)~27日(金)予定。
受講料 40,000円(宿泊。食費込)
申込み/問合せ ウェブ:http://ksmusic.net/charge.html
電話:047-473-6522(KSミュージック)
ニューヨーク サミット音楽祭

「ニューヨークに一目ぼれ」して移住を決意。26年を当地で過ごしてきた辰巳享子先生。その辰巳先生が講師を務めるサミット音楽祭は4半世紀続いてきた老舗音楽祭です。ニューヨーク郊外の緑豊かなキャンパスで7月末から8月にかけての二週間、一流音楽家、指導者によるマスタークラスや演奏会が開催されます。

内容はピアノと弦楽器に関わる音楽が中心です。
開催中に行われるコンペティションやガラ・コンサートへの出演(規定を満たす必要あり)など、参加者には様々な学びのチャンスが用意されています。また、別料金のオプションで、室内楽のレッスンも受けられます。この室内楽レッスンはレベルによって曲が事前に指定され、現地で組み合わせが決まります。これは国際交流のチャンスでもあります。
辰巳先生のクラスでは指導法を含めた講座・ワークショップ(日本語)が開かれ、ソロレッスンと教授法講座の両方を受けられます。(別料金なし)
レッスン聴講も大歓迎です。

参加資格 ・14歳以上、年齢上限なし(18歳までは保護者同伴が必要)
・アマチュアとして活動されている方の参加も歓迎(音源審査あり)
参加費(2014年度) $1350(レッスン代、講座代、全ての音楽会・公開レッスンの聴講代を含む)
宿泊滞在費(2014年度) $1100 (2週間の宿泊代、1日3食の食費を含む)
申込み/問合せ 公式サイト(英語)http://www.summitmusicfestival.org/
メール(日本語)muse_ny@hotmail.com(辰巳)

辰巳享子先生 演奏者プロフィール

※ニューヨーク観光が非常に便利であることも、サミット音楽祭の利点です。
メトロポリタン美術館、ブロードウェイミュージカル、ジャズなど、クラシック音楽以外の芸術・芸能分野を、その本場で体験することができます。オプショナルツアーの実施も検討中とのこと(2014年11月現在)


★コラム1「レッスン聴講」で学べること
受講料を支払って参加するのみならず、「聴講」という関わり方があります。数多くのレッスンを聴講されている寺北香苗先生に、その効能についてお話頂きました。

合宿には「聴講」という参加方法もあります。周辺環境も素晴らしい合宿。そこで音楽にどっぷり浸かる時間を持つだけも良い気分転換になりそうです。
楽しい「聴講」旅行に出かけるとして、メインイベントとなる「レッスンの聴講」には、どのように効能があるでしょうか。
年間4~5回は海外の先生らの「公開レッスン」へ通うという寺北香苗先生(ピティナ正会員)にお話をうかがいました。

素晴らしい先生方のレッスンで、特に感銘を受けるのは「言葉」です。自分にはなかったボキャブラリーで、美しい表現をなさっているのを聞くことができます。海外の先生方のレッスンの場合、生徒さん自身も既に素晴らしいピアニストであることが多いですから、演奏されるのは難易度の高い大曲が多いです。でもそういうレッスンで使われていた表現でも、普段の小さな子どもたちへのレッスンでも使うことができるのです。
思わず足を運ぶのは「意欲」がわいてくるからです。素晴らしい先生は強いエネルギーをお持ちですから、近くにいるだけで元気になるくらいです。聴講するととても高揚しますが、その高揚感は数日続くこともあって、レッスンや演奏にとても良い影響があります。

参加者の声
Joy of  Music
初日に清里に着いた日は、まだ皆、現実世界で使っていた何層もの皮で身を覆っていた様な気がします。その皮は日を重ねる毎に消えてゆくのがわかりました。...中略...その(皮の剥かれた)状態で互いに触れ合って知り合って、その状態で学び、音楽を作りました。だからこそ、私たちが最後に辿り着いたのが、あのファイナルコンサートでの皆の素晴らしい演奏と泣き顔。(中2)
まず驚いたのは受講生のみんなや先生がとてもフレンドリーで温かいこと。もっと堅苦しいと思っていたのです。田崎先生のレッスンは本当に衝撃的でした。みんな、魔法にかかったようにどんどん変わっていくのです。そして、先生のレッスンを受けたり聴いたりしていくうちに、不思議とどんどん音楽が大好きになったんです。音楽の楽しさ、おもしろさを初めて知ることが出来ました。同時に「ピアノを習ってきた十二年間、一体私は音楽の何を見てきたのだろう」と考えずにはいられませんでした。(高1)
八ヶ岳室内楽セミナー
いままで「なんとなく」室内楽の演奏をしてきましたが「できていないことがあるに違いない」という不安があり、参加させてきました。問題の数々をご指摘いただきましたので、まずはこれを整理して一つずつ取り組んでいきたいです。実は問題は室内楽のことに限らないのだと思います。音大生時代に「すりぬけてきた」ことがあると自覚してきましたが、いよいよ、自分の現状に向き合うきっかけを頂きました。厳しくも温かいご指摘に心から感謝します。(初参加・ピアノ教室勤務)
途中ブランクがありましたが、二年連続、4回目の参加です。「共演の先生がどのように演奏するのか」を想像しながらピアノを弾くことができるようになってきました。それは「普段の練習方法」を教えて頂いたからだと思います。たとえば、ヴァイオリンのパートをピアノで練習しておきます。実際に合わせてみると予想通りのこともあるし、予想と違うこともあります。いずれにしてもより深く音楽を知ることへとつながります。(ピアノ指導者)
軽井沢 作曲ワークショップ
★コラム2藤原亜津子先生より

この作曲合宿は常連です。生徒を6~7人引き連れて、自分自身も参加しています。何度参加しても毎回違う切り口で教えて下さるので、飽きません。参加する生徒たちにとっては「音楽の魅力を掴むための突破口」になる三日間だと思います。生徒たちはみな親から離れて参加するのですが、団体生活で必要な気遣いや秩序を重んじる気持ちも育つようです。今まで参加してきた子供たちは全員、たとえピアノを習うのは止めたとしても、音楽は続けています。作曲家である佐々木邦雄先生は音楽の「展望」を持っていらっしゃる。子どもたちにも「展望」を身に付けて欲しいと思っています。

ニューヨーク・サミット音楽祭
日頃とは違った国際的な環境の中で、日を追うごとに、開放的で伸びやかな感性が生まれて来ます。それにつれて、演奏の表現の幅がぐっと広がることを実感しました。(複数の参加者・保護者より)

ピティナ編集部
【GoogleAdsense】
ホーム > 読み物・連載 > > 合宿で学ぶという方法...