ルイのピアノ生活

第80回 写真 / ショパン:前奏曲Op.28-15「雨だれ」

2009/03/02
♪ 演奏
ショパン:前奏曲Op.28-15「雨だれ」 動画 動画:(6,16s)
 

写真にはまっています!

この冬休みはオランダ・アムステルダムとパリで過ごしました。オランダは実家のあるアムステルダム、日本に来るまでずっと住んでいた街ですし、パリでも特に観光地を訪ねたわけではありませんが、カメラのファインダーを通して見ると、いつも見慣れた風景も新鮮に違って見えて来るから不思議です。

実は高校生の頃、おばあちゃんから貰ったお金でニコンの一眼レフを買いました。まだデジタルの時代でしたからフィルムを入れて・・・ちょっと面倒ですがそのカメラは割と最近まで活躍していました。時代が変わり周りに習って数年前に買った小さなデジカメではなかなか満足できる写真が撮れず、写真の楽しさを段々忘れて行ってしまいました・・・。でも、1年前に購入した中古カメラで以前の気持ちに火がつきました!古くてボロボロなのですが、もともとはきっと上等だったこのカメラで撮る内に、自然と写真の楽しさが戻ってきました。今回の街歩きもこのカメラがお供でした。

自分にとって写真の魅力は何でしょうか。分析してみると、どうやら現実から一歩離れたところから人や物を見る事が楽しい。外側からみんなの世界を客観的に観察することが好きなようです。

日本に帰り、ちゃんと写真を趣味にできるように、少し研究してみようかなと思いました。インターネットでは、プロ・アマ様々な感覚技術を持つ人達の撮った写真を見られるサイトがあります。どの写真もそれぞれ味があって、これを見る事にすっかり夢中です。特に日常的なものをいつもとは違う角度から撮った写真が好きです。例えばよく通っている道、家の裏に止まっている自転車、公衆トイレでさえも写真を通して見ると違う顔をしている。

絶景の写真より、道に落ちている一枚の枯葉、乗り忘れられた自転車のさびついたベル、道端にしゃがんでタバコを吸っているおじいさんの顔に刻まれた皺・・・それぞれが色々な事を感じさせてくれます。日常では醜いと思われているものの中、古くて老化したものの中にある美や経験の深さのようなものを表現できるのが写真のすごいところだと思います。

写真と音楽は似ていると思います。作曲家たちも何かすごく極端な感情や物事というよりは、誰でも知っている日常的な・身近な感情や経験を音で表現しますが、写真で「さび」が美しく映るように、不協和音で表された悲しさや辛さや痛みを私達は「美しい」と感じとることができます。老朽化した建物を撮った一枚の写真。まるで生命に限りがあることを伝えているように感じます。窓を叩く雨音が、まるで運命(死神)がドアをノックしているように聞こえきて、音で死の恐怖や命の儚さ・美しさが描かれる。
写真も音楽も芸術。技術の良し悪しより、最終的には作品を通して表現し、それを見る人聴く人に何かを感じ取ってもらうことが最大の目的ではないでしょうか。

と今、ここまで書いた文章を読んで、まだ下手くそな写真しか取れない自分が急に恥ずかしくなりました(笑)! とりあえずは、今日新宿で新しく買ったPENTAXの一眼レフを持って街に出て、自分の目線で色々な写真を撮るのが楽しみです。

それでは、また。

ルイ・レーリンク


ルイ・レーリンク

オランダ出身。7歳からピアノを始め、15歳で音楽院入学。アムステルダム・スヴェーリンク音学院に於いてW・ブロンズ氏他に師事する。1996年音楽活動の為、日本に移住。「肩の凝らないクラシック」をモットーに各地で通常のコンサートから学校や施設のコンサート、香港等海外でも公演。九州交響楽団との共演、CD「ファイナルファンタジー・ピアノコレクションズ9」の演奏と楽譜監修を行うほか、CD「夢」をリリース。個人/公開レッスンや音楽講座を行い、ピアノ・音楽指導にも意欲的である。洗足学園音楽大学非常勤講師、洗足学園高等学校音楽科講師として、「演奏法」の授業 、演奏家を目指す生徒のための「特別演奏法」の授業、ピアノレッスンを受け持つ。

NHK/BSテレビ「ハローニッポン」、「出会い地球人」
TBSテレビ「ネイバリー」、TBSラジオ「大沢悠里のゆうゆうワイド」他出演。

ピアノ演奏法のページ : http://www.senzoku.pianonet.jp も作成中
演奏者のホームページ http://www.pianonet.jp

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