海外の音楽教育ライブリポート/菅野恵理子

若手ピアニストのための英語ワークショップ (1)福田靖子賞対象・全4回

2014/02/20
英語ワークショップ

昨年12月から4回にわたり、福田靖子賞入賞・入選者3名に英語ワークショップを行いました。若手ピアニストたちは入賞・入選後、国際コンクールや海外マスタークラス・演奏会など様々な場を経験することになります。英語はコミュニケーションツールとしてますます重要になるでしょう。

そこで今回のワークショップは2時間×4回でプログラムを組みました。参加したのは大学2年生トリオの佐藤元洋君、本山麻優子さん、中川真耶加さん(皆さん学年末試験準備の最中に頑張ってくれました)。すでに基礎的な文法を身につけていることを前提として、「新しい単語・語句の習得」→「聴き取りトレーニング」→「発話のトレーニング」の3つの要素を取り入れました。教材は、リスニング力を鍛えるとともにスピーキングの参考になるようにと、音楽家のインタビュー映像を使用しました。ここに第1回~4回までのリポートをお送りします。皆さんもぜひお試しくださいね。

●第1回目(2013/12/19) 【配布資料】
(1)
この日はまず音楽関連用語とフレーズの習得から(「楽譜編」44語)。1単語ずつ書き取りながら全員で読み上げました。
(2)
第1回目の聴き取りテーマは「記譜」について。教材はTED映像より、指揮者マイケル・ティルソン=トーマス氏のスピーチを使用しました。
  • i)

    まずは「古代ギリシアから現代までの記譜法の変化」について3分間リスニング(5:15-8:15)。


  • ii)

    さらに精密なリスニングができるように、一部抜粋して語句の聞き取りを行いました(6:00-6:45)。記譜法の継承について述べているパラグラフです。

  • Now your 21st century ears are quite happy with this last (       ), even though a while back (       ) you or sent some of you running from the room. And the reason you like it is because you have inherited, whether you knew it or not, centuries-worth of changes in (       ). And in classical music we can follow these changes very accurately because of the music's powerful silent partner, the way (       ): (       ). Now the impulse to (       ), or, more exactly I should say, (       ) music has been with us for a very long time.

  • iii)

    最後にシャドウイングを行い(8:15-9:00)、キーワードとなる語句を聴き取ってもらいました。記譜法の確立によって何が変わったか?について述べている部分です。

  • Classical music became a dialogue between the two powerful size of our nature, (       ) and (       ).

(3)
最後はスピーキングの練習!第1回目のテーマは「今練習している曲について語る」こと。まずは1曲を選び、その曲の性格(キャラクター)を表す形容詞を3つ挙げてもらいました。1単語で曲のコンセプト(概念や思想)を表現するトレーニングもしておくといいでしょう。詳しくは第2・3回へ。
ポイント
1

単なるリスニングだけではなく、耳⇔口、耳⇔手を連動させると、インプット⇔アウトプットがスムーズになり、英語のスピードにも早く馴れていきます。シャドウイングは耳に聞こえてきた英文をそのまま影のように口で発音するトレーニングで、英語のスピード・リズム・ボキャブラリー・フレージング・イントネーション・アーティキュレーションなどがリアルに体感できます。文字を見ず、耳に意識を集中させて下さい。筋トレのようなもので、1日5分~10分で1か月もすれば明らかに変化が表れてくるでしょう。

ポイント
2

リスニング力をスピーキングへ繋げていくために。英文を「聴いて一緒に発音する」(シャドウイング)→「聴いて暗誦する(レシテーション)」→「聴いて書き取る」(ディクテーション)→「聴いて大意をつかむ」(サマリー)→「聴いて意見を述べる」(ディスカッション)と段階的に難易度を上げていくとよいでしょう。


菅野 恵理子(すがのえりこ)

音楽ジャーナリストとして各国を巡り、国際コンクール・音楽祭・海外音楽教育などの取材・調査研究を手がける。『海外の音楽教育ライブリポート』を長期連載中(ピティナHP)。著書に『ハーバードは「音楽」で人を育てる~21世紀の教養を創るアメリカのリベラル・アーツ教育』(アルテスパブリッシング・2015年)、インタビュー集『生徒を伸ばす! ピアノ教材大研究』(ヤマハミュージックメディア・2013年)がある。上智大学外国語学部卒業。在学中に英ランカスター大学へ交換留学し、社会学を学ぶ。一般社団法人全日本ピアノ指導者協会勤務を経て現職。2007年に渡仏し「子どもの可能性を広げるアート教育・フランス編」を1年間連載。ピアノを幼少・学生時代にグレッグ・マーティン、根津栄子両氏に師事。全日本ピアノ指導者協会研究会員、マレーシア・ショパン協会アソシエイトメンバー。 ホームページ:http://www.erikosugano.com/

【GoogleAdsense】