海外の音楽教育ライブリポート/菅野恵理子

アメリカの大学で行われる国際交流演奏

2012/05/02




アメリカの大学で行われる
国際交流演奏

グローバル化が進む中、音楽がコミュニケーションツールとしての役割を果たしているのはどの国も変わらない。米国の大学でも国際音楽交流コンサートが盛んに行われている。今回はボストンにある2大学をご紹介したい。

マサチューセッツ工科大学(MIT・全世界大学ランキング3位)では、今年3月に『アラブの春』というテーマでフォーラム&コンサートが行われた。同大音楽学部フレデリック・ハリス教授によれば、2010年から続くアラブの民主化運動についての知見を得たいという個人的な要望からこのイベントを企画し、作曲家ジャムシード・シャリフィ氏(Jamshied Sharifi)に曲を委嘱したそうだ。アラブ独特の響きを取り入れた曲が完成し、今年3月MIT Wind Ensembleによって初演が行われた。社会問題を強く意識したテーマ設定であるが、音楽が未知の世界の扉を開き、人と人を繋げる役割を果たしていた。まさにソフト・パワーである。

またバークリー音楽大学では、第4回目となる中東音楽フェスティバルが行われた。地中海~アンダルシアの音楽を中心に、現地出身の演奏家・歌手・フラメンコダンサー等が、学生とともに華麗な演奏を繰り広げていた。独特のリズムやハーモニーに身を委ねているうちに、次第に彼らの日常風景が自分の目の前にも浮かんでくるようだ。

音楽があれば、歩み寄れる。歩み寄れば、視点が変わる。こうした体験一つ一つが、ゆっくりと着実に、個人個人の内なる世界観を形成していくことになるだろう。

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菅野 恵理子(すがのえりこ)

音楽ジャーナリストとして各国を巡り、国際コンクール・音楽祭・海外音楽教育などの取材・調査研究を手がける。『海外の音楽教育ライブリポート』を長期連載中(ピティナHP)。著書に『ハーバードは「音楽」で人を育てる~21世紀の教養を創るアメリカのリベラル・アーツ教育』(アルテスパブリッシング・2015年)、インタビュー集『生徒を伸ばす! ピアノ教材大研究』(ヤマハミュージックメディア・2013年)がある。上智大学外国語学部卒業。在学中に英ランカスター大学へ交換留学し、社会学を学ぶ。一般社団法人全日本ピアノ指導者協会勤務を経て現職。2007年に渡仏し「子どもの可能性を広げるアート教育・フランス編」を1年間連載。ピアノを幼少・学生時代にグレッグ・マーティン、根津栄子両氏に師事。全日本ピアノ指導者協会研究会員、マレーシア・ショパン協会アソシエイトメンバー。 ホームページ:http://www.erikosugano.com/

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