会員・会友レポート

国連コンサートレポート/根津理恵子さん

2009/07/17
パリの会場を外から撮影
パリの会場を外から撮影

[レポート◎根津理恵子]




左から国連文化活動担当ディレクター、根津、
在ジュネーブ・ポーランド大使、ショパン研究者
Bozena Adamczyk-Schmid女史

 来年は皆様ご存じの通り、ショパン生誕200周年を迎えます。そのプレ・イヤーで没後160周年に当たる今年は、ポーランドにおける共産主義が崩壊して20年、更には日本とポーランドの国交が開かれて90年という、たくさんの記念が集中した節目の年。
 先月24日、上記を記念した式典が、国際連合欧州本部(ジュネーブ)にて行われ、その席でソロ・リサイタルをさせて頂きました。プログラムは、ポーランドへ祝福を込めて、マズルカとポロネーズをメインに、ノクターン遺作嬰ハ短調(珍しい手法を用いた自筆譜*による解釈)、そしてパデレフスキの作品数曲を用意いたしました。

国連のコンサートポスター
"国連のコンサートポスター
パデレフスキがかつて住んでいたモルジュの景色
パデレフスキがかつて住んでいたモルジュの景色
パデレフスキがリサイタルを行ったホールの外観
パデレフスキがリサイタルを行ったホールの外観



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以前ヴェルヴィエ音楽祭でこのピアノを弾かれた アーティストのサイン、アルゲリッチ、フレイレ、キーシン等。
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 パデレフスキはかつて、ジュネーブ近郊の町・モルジュに一時期居を構えていたこともあり、スイス国内では彼に対する関心は高く、また、日ポが国交を結んだ90年前の1919年、ポーランド初代首相を務めていたのがパデレフスキだったという史実により、今回のリサイタルは、国連本部内「パデレフスキホール」での開催となりました。

 舞台上にはアリー・シェフェール作「ショパンの肖像画」、舞台下手側にはパデレフスキの銅像が佇み、会場には各国の政治家や音楽関係者が続々と詰めかけ、国際機関ならではの独特の雰囲気。さらに演奏前に行われた厳かなスピーチに耳を傾けていると、改めてポーランドが歩んできた歴史の重みや、この舞台を任されたことへの責任感で身も心も引き締められましたが、この日のために用意して頂いたピアノ(写真*)の、深くてとろけるような響きのおかげで緊張感はすぐにほぐされました。
 この度、光栄な舞台へ、両国を繋ぐアーティストとして日本人の私を選抜して頂いたことに心から感謝すると共に、今後更に意識を高く持ってポーランドとその音楽に取り組んでいこうとの思いも新たにしています。演奏後のレセプションでは、あるポーランド人の方から「あなたの中にあるショパンやポーランド音楽に対する魂に共感した。ずっと大切にしてほしい。」とのお言葉も頂き、これからの人生への大変な励みになりました。

この式典の数日前には、パリのブローニュの森・バガテル公園で開かれた「ショパン・フェスティバル」では、「24の前奏曲」を演奏してまいりました。この日はフランス全土が音楽でいっぱいになる「Fete de la Musique(音楽の日)」だったこともあり、会場のお客様の盛り上がりが絶好調で、熱い雰囲気に後押しされるように、私もエキサイトして演奏させて頂きました! パリ滞在中は、現地在住のジャーナリストさんでピティナ海外プロジェクト社外担当の菅野恵理子さんに、いろいろとお世話になりました。実は恵理子さんは、母の元門下生でもあり、私は幼い頃から「優しいお姉さん」として慕ってきましたが、年々尊敬の念は深まり、今回もたくさん興味深いお話しやアドバイスを頂き、思わず時間を忘れて話し込んでしまいました。恵理子さんのブログでも、このフェスティバル関連を取り上げて頂いたので、ご紹介いたします。

"http://www.cafeblo.com/eris/archive-20090702.html"

来年は、ショパン生誕200年と同時に、パデレフスキの生誕150年でもあり、二人の作品を演奏する機会が増えてくることと思いますので、知られざる自筆譜や名曲発掘を含め、毎回何かしらの新鮮な情報や感動をご提供できるよう、更なる研究と演奏を続けてまいります。2010年がますます楽しみです!

(*ノクターンは、マヨルカ島のヴァルデモサ修道院「ショパン&サンド博物館」に所蔵されている、自筆譜をもとに演奏しました。一昨年、ヴァルデモサの由緒ある「ショパン・フェスティバル」で演奏させて頂いた際、ほとんど知られていない、ポリメトリックを用いたこの自筆譜に出会いすっかり魅了されたのですが、満を持して今回のプログラムに取り入れることを決めました。ショパン自筆譜研究の第一人者であるBozena Adamczyk-Schmid女史いわく、この譜による解釈の公開演奏は、ヴァルデモサ以外では初演とのこと。自筆譜研究は奥が深く終わりのない旅ですが、私も研究を重ね、日本でも演奏していきたいと思っています。)

根津理恵子


ピティナ編集部
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