会員・会友レポート

ピアノデュオ デュエットゥの「カリブ海の島・キューバ音楽旅行記」

2008/02/27
ピアノデュオ デュエットゥの「カリブ海の島・キューバ音楽旅行記」
今回訪れた街 カリブ海に浮かぶ島国「キューバ」。コロンブスが最初の航海で到達した地の一つです。キューバ大使館の後援のもと、首都「ハバナ」で現地の音楽教育を見て、生徒達とふれ合い、そして高名な「アマデオ・ロルダン劇場」でコンサートをさせて頂きました。そんなデュエットゥのハバナ滞在1週間の滞在記です。

[レポート ◎ ピアノデュオ デュエットゥ]

芸術学校の生徒達と


ハバナの美しい街並み
ハバナの美しい街並み
街のいたるところにサルサバンドが
街のいたるところにサルサバンドが

カナダ航空の便が天候不良で機体が成田に到着していない!・・ということで予定より一日遅れての出発となりました。最初からハプニングあり!この旅は普通の旅にはならないぞ・・・という予感のもと次の日の朝に成田から出発。キューバへはトロント経由(1泊)でようやく到着!

キューバは首都ラ・ハバナを中心とした日本の本州の約半分くらいの面積を持つ島。世界に残る数少ない社会主義共和国です。どんなところか想像もつかず入国したのですがハバナ入りをした最初の印象は、人なつっこい人たち、そして太陽の光が心地良いとっても気持ちのよい所だな、という感じ。
街に出れば至るところからサルサバンドなどの生演奏がきこえてきます。そして広場などではその音楽に合わせて踊る人たちを発見!なんだか楽しそうな旅になりそうな予感に初日からつつまれていました。

アレハンドロ・ガルシア・カトゥール コンセルヴァトワールで
アレハンドロ・ガルシア・カトゥール コンセルヴァトワールで
学校の子供達と交流
学校の子供達と交流

1月14日(ハバナ2日目)に訪れた学校は「アレハンドロ・ガルシア・カトゥール コンセルヴァトワール」。ここは生徒が259名で、日本でいう小・中学校が一緒になっているような学校です。みんな通常の学習授業も受けながら、音楽を専門的に学んでいます。ここでは生徒達がピアノ、ヴァイオリン、フルート、打楽器などみんなひととおりの楽器を練習してから自分がどの楽器をやりたいかを選ぶのだそうです。まずは私たちを歓迎してくれての演奏ということで学校の生徒たちが演奏を聴かせてくれました。小学5年生くらいの女の子がキューバの作曲家セルヴァンテスの「さらばキューバよ」という作品を弾いてくれました。この作品は36曲から成るキューバ舞曲集の1曲です。セルヴァンテスはレクオーナに続いてキューバを代表する1847年生まれの作曲家兼ピアニスト。さすがは自国の作曲家の作品だけあって、のびのびと、そして鮮明な音でゆったりと弾ききって聴かせてくれました。そしてこの学校で一番上手だという男の子がカバレフスキーのピアノ協奏曲を全楽章聴かせてくれました。リズムの取り方が面白く、最初カバレフスキーにはきこえなかったんです!このロシアの作曲家の作品に対して私たちがいだくイメージとはちがい、この男の子のピアノはリズムも裏打ちではいってきます。面白い!
 私たちはキューバの音楽教育はリズムを中心とした授業やサルサなどの曲を勉強するのかと思っていたのですが、全く違いクラシック音楽を基礎から勉強するのだそうです。日本と同じように校内からはバッハのインヴェンション、モーツァルトソナタ、ベートーヴェンなどがきこえてきます。ただ、生徒達の弾き方はやはり生まれた時からサルサやソンなどを聴いているためかバッハのインヴェンションのリズミックな感じが独特。そして全員指のタッチがとてもしっかりしているのが特徴でした。

寄付してきたおもちゃピアノです。2台を手荷物で持ち込みました
寄付してきたおもちゃピアノです。2台を手荷物で持ち込みました

みんなが演奏してくれたお返しに私たちもピアソラ作曲の「リベルタンゴ」を演奏。キューバでもピアソラの曲は人気があり、そして迫力ある編曲がめずらしかったのか大拍手をもらいました。今回の旅には大きな目的があります。それはカワイ楽器から販売されている「トイピアノ(おもちゃピアノ)」をキューバに寄付して帰る、という任務です。ですから、訪れた先では必ずおもちゃピアノを演奏しました。超絶技巧で演奏するおもちゃピアノを見た子供たちは初めてのことにビックリ!大いに盛り上がりました。


アマデオ・ロルダン コンセルヴァトワールにて演奏交流
アマデオ・ロルダン コンセルヴァトワールにて演奏交流

次の日は「アマデオ・ロルダン コンセルヴァトワール」。
ここは日本でいう高等学校くらいの年齢の学生の通う学校です。
この学校ではキューバ人の女の子の演奏するバッハ、ラフマニノフを聴かせてもらいました。女の子に「ピアノを演奏する時は何を考えながらどういう気持ちで演奏しているの?」と質問したら「私はハートに感じた音楽をそのまま表現するわ!リズムもメロディーもハーモニーも全てハートで感じているのよ」という答え。これには驚きました。理論、楽典、そして理屈など存在しない、そんなクラシック音楽を心から楽しく演奏しているかのようでした。ここには日本とキューバでは音楽を学ぶという条件が明らかに違うことが反映していると思うんです。なぜなら、キューバでは楽譜がなかなか手に入りません。街には楽譜屋さんなんてもちろん存在しませんし、楽譜を自分で持っている子供たちはいないのです。
じゃあどうやって勉強しているのかというと・・・。
学生たちは図書館で楽譜を読んで練習しているのです。この図書館は貸し出しも行っておらず、コピーもとることができません。まず普通はコピーをとろうにもコピーがとれる場所はないのだそうです。図書館で楽譜を見て、頭に入れて覚えて練習しているんだそうです!図書館のみで見た楽譜を覚えて練習??!!
これは衝撃的でした。
あまり弾いたこともない楽譜が山積みになっている我が家を思い出しあまりに恵まれている環境に反省・・・楽器もみんな自分の楽器を持っているわけではなく学校からの貸し出しだそうです。ピアノを自宅に持っている子供たちはもちろんいません。その状況の中でもみんな一生懸命に音楽を学び音楽を愛しがんばっている、そして何より楽しんでいるということに心を打たれました。

アマデオ・ロルダン劇場でのコンサート
アマデオ・ロルダン劇場でのコンサート

最後はISAという音楽大学で生徒、先生と交流をしました。この日はキューバ人の男の子と女の子の2人が連弾をしていました。曲はモーツァルトのソナタK330 D dur。演奏をきいて意見を交換していたのですが、一緒に演奏したほうが言葉で語り合うよりもきっとわかりあえるはず!と、お互いにパートナーをチェンジして演奏しました。彼らは連弾を専門としているわけではなかったので、こうアドヴァイスしました。「連弾を深く勉強して、いろいろな曲を演奏していくと、きっとわかってくることだけど、連弾は4つの手のバランスがとても大切。そしてお互いのタイミングを計りながら演奏するときっとうまく弾けるよ!」。
そのことを言葉だけでなく実際の演奏を通じて伝えると、とっても感動してくれました。この時に演奏していた男の子が、私たちがコンサートでレクオーナ(1896年キューバ、グアナバコア生まれの作曲家)作曲の「ラ・コンパルサ」を演奏するといったらレッスンをしてくれました。そのリズム感の良さといったら!モーツァルトを弾いていた時とは人が違うかのような躍動感あふれるリズムでした。(笑)やはり歩き始めたときからサルサを踊っているキューバ人はすごい!そしてダイナミックのつけかたも私たちが演奏しているのより、 10倍ぐらいで表現してくるんです!自分では表現しているつもりだったのにまだまだ足りない音楽性と表現力に反省・・恐るべしキューバ人!


コンサート終了後私たちの楽譜にサインを入れてプレゼントしました
コンサート終了後私たちの楽譜にサインを入れてプレゼントしました

地元のピアニストとの交流会やリハーサルなどを経て、いよいよコンサート当日。(1月18日 18:00開演)
アマデオ・ロルダン劇場カトゥルラホールは「2人で1つのピアノを演奏するという日本人女性二人組」の演奏に興味津々なのかほぼ満席状態。今回のプログラムはビゼーの「カルメンメドレー」。レクオーナの「マラゲーニャ」、グルダ「プレイ・ピアノ・プレイ」など。そして日本の曲として山田耕筰の「赤とんぼ」やデュエットゥオリジナル曲の「雨上がりの街角で」などを演奏するという1時間半くらいのプログラムで構成しました。ほぼ全曲デュエットゥの編曲だったのですが、キューバではピアノ曲においては編曲ということがまだ浸透していません。そのため、きっと初めて見るであろうハポネサ(日本人)女性2人組の連弾の演奏の迫力か、珍しさか、はたまたキューバ人のもとから持っている心から湧き上がる熱さなのか、熱気に包まれて、スタンディングオベーションが3回もでました。アンコール曲がなくなってしまったくらい!今までに体験したことがないくらいの絶賛を受け、感激!コンサートが終了し、表に出ると「最高の演奏だったよ!こんなの初めてきいた!」「サインして下さい!」「おもちゃピアノを私に是非寄付してください」「楽譜を譲って下さい」などなどたくさんの声をみんなにかけられました。

二台のおもちゃピアノのうち一台は最初に訪れた学校に寄付し、もう一台はICM(現地でいろいろなプログラムをアレンジして下さったハバナの音楽協会)のほうで寄付先を決めることになりました。

あっという間に過ぎていった一週間でした。キューバでも最初の教育はクラシック音楽を基礎から学んでいるということ、音楽の基礎はやはりクラシック音楽にあるのだということがわかり、とても新鮮に思うとともに、改めてクラシック音楽の偉大さを感じました。この国にはまだ日本で紹介されていないキューバ人の素晴らしい作品がたくさんあります。今回日本にはまだ入ってきていないキューバの楽譜やCDをICMの協力により集めて帰ってきました。連弾にアレンジすると面白そうな曲もたくさんあったので、また皆さんにぜひご紹介させて下さいね。


キューバの首都ハバナは、現在、旧市街と呼ばれている場所が発祥の地です。
ここは街自体がユネスコの世界遺産として登録されています。砂浜、小さな島々、海はもちろんのこと街並みも素晴らしいですがなんといってもキューバの魅力はきさくで暖かい人たちだと思います。カメラをむけると必ずニコッとほほえんでポーズをとってくれるキューバの人たち。街を歩けば必ず聴こえてくるソン、ボレロ、チャチャチャ、サルサの音楽。この街に行けば皆さん必ず魅了されることと思います。
この魅力あふれる街・ハバナをとっても離れがたい思いでホセ・マルティ空港を後にしました。

ところが!
最後にまた飛行機が・・・トロントまで半分くらいのところまできていたのに機体の不備という理由でハバナに引き返し、結局その日は飛行機は出発せずにハバナにまた1泊。次の日の朝3時に集合してようやく7時の便でトロントへ。
予定より丸一日遅い帰国となりました!朝3時に集合じゃなかったらもう一晩ハバナを満喫できたんだけど、さすがにそうもいかず・・・。
日本に到着した時はさすがにホッとしましたが、もう今すぐにでもハバナに行きたい気分でいっぱいです!
行き帰りは波瀾万丈でしたが、本当に充実していた音楽旅行inキューバ!皆さんもぜひ一度訪れてくださいね!



デュエットゥ
かなえ&ゆかり
(デュオピアニスト、作・編曲家)
木内佳苗、大嶋有加里による、連弾と2台ピアノを専門とするピアノデュオ。
英国王立音楽院卒。日本フィルハーモニー、スーク室内オーケストラなどと共演。作・編曲もてがけ、ピアノデュオの新しい可能性を切り開いている。CD「いいことがありそう!」「ボレロ!!」「バッハ連弾パーティー」など今までに5枚のCDをリリース。趣向をこらしたデュオのコンサートを全国各地で行っている。現在ムジカノーヴァに「デュエットゥのおいしそらしどレシピ」連載中
オフィシャルHP http://www.duetwo.com/



ピティナ編集部
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