会員・会友レポート

フランス・リール「ピアノ新世紀」音楽祭リポート/恒川洋子さん

2007/02/01

LES PIANOS DU NOUVEAU SIECLE A LILLE
リール「ピアノ新世紀」音楽祭

リポート◎恒川洋子(ベルギー在住)
協賛/RTBF ベルギー国営ラジオ局 クラシック専門プログラム Musiq 3


子供たちの笑い声が聞こえてきそうな、エンターテイメント性あふれるリール市内。
 パリから列車で1時間、ベルギー国境付近に位置するリール市。ここでは毎冬、ピアノ音楽祭が行われている。元は仏ピアニストのロベール・カサドシュに敬意を表して始まったが、2004年にリール市が欧州文化首都に指定されたことにより、「リール・ピアノ新世紀音楽祭」として再出発した。
 3日間で50のコンサートが聴けるという大規模なもので、出演する約30名のピアニストはいずれも当代一流のアーティスト。リール市のみならず、フランス国内外から3万人もの人が足を運ぶという。
 今回はその様子を、ベルギー在住ジャーナリスト恒川洋子さんにリポートして頂いた。

3日間で50コンサート!大人も子供も楽しめるプログラム。 ~バッハからメシアン、ケージまで


シプリアン・カツァリスはモーツァルト・ファミリーの曲を披露。


気さくにサインに応じるカツァリス氏。聴衆との距離が近いのも、フェスティバルの魅力の一つ。

去る12月8~10日の三日間、ベルギー国境に近いフランス北部のリール市にてピアノ音楽祭が開催された。 世界各地から集まった30名以上の第一線で活躍中のピアニストによる50ものコンサートが、このリール市中心にあるホールNOUVEAU SIECLE「新世紀」で行われた。
シューマン没後150周年記念を中心に、バッハ、モーツァルト、ベートーヴェン、シューベルト、リスト、ショパン、グリーグ、ブラームス、プロコフィエフ、ショスタコーヴィチ、ラヴェル、ドビュッシー、メシアン、ガーシュイン、マック・ミラン、ヴィラ・ロボス、ブリテン、ケージ等の大変幅広いプログラムの中からそれぞれの趣向にあったものを選んで聴くことができる。

 例えばシプリアン・カツァリス(Cyrprien Katsaris)のプログラムでは、モーツァルト・ファミリー( 父レオポルド・モーツァルト「ピアノ・ソナタ第3番ハ長調」、息子フランツ・クサヴァー・モーツァルト「歌劇"ドン・ジョヴァンニ"のメヌエットによる7つの変奏曲」)の曲を披露したり、フンメル編曲によるモーツァルトの交響曲第四十番を解説しながら演奏した。

 休憩時間は複雑に入り組んだ廊下を早足で行き来しながらコメントする者や、ホールからホールへとハシゴする者も多い。今年は音楽専攻の学生や子供を対象としたイベントも開催されたため、年少の子供の姿もここ数年で一番多いようであった。ちなみにチケットは一般席9ユーロ、会員7ユーロ、学生、無職5ユーロ等、大変良心的な価格。
普段レコードで聴くことがあってもなかなか生演奏に接する機会のないアーティスト達の演奏にもここでは触れるチャンスがある!ジャン・エフラム・バブゼ氏がプロコフィエフの左手のための協奏曲第四番を弾いている時、前列に座っていた子供たちは右手が使われていないことを心配そうに見守っていた。


幅広い世代のピアニストが総出演、伝説の名演も生まれる
~語り継がれる2004年ピレスのオープニングコンサート、そして・・・


ジャン・エフラム・バヴゼ氏による、プロコフィエフの左手の為の協奏曲。客席の子供たちが、使われない右手を心配そうに見守っていたという可愛いエピソードも。


日本でもお馴染みのアレクサンダー・コブリン氏と。アーティスト同士の交流も盛んだ。


コンサート終了後ピアニスト達を迎えてレセプション。雰 囲気は和気藹々しており、音楽に限らず話題もさまざま。(クレール.マリ・ルゲ、ニコライ・ルガンスキー)
リール市のシンボル、時計台を見上げて。冬の済みきった青空は、音楽祭をさらに活気付けてくれる。

 そもそもこの音楽祭は、フランスのピアニスト、ロベール・カサドシュに敬意を称して1996年にロベール・カサドシュ国際ピアノ祭(RENCONTRES INTERNATIONALES DE PIANO ROBERT CASADESUS)というネーミングで始まった。新人ピアニストや国際ピアノ・コンクールの受賞者を紹介することが第一の目的であった。
2004年、リール市がヨーロッパ文化首都に選ばれたことをきっかけにこの音楽祭も名を改め、音楽祭の規模が大きくなって大物ピアニストが多く集まるようになった。その2004年のマリア・ジョアン・ピレス女史によるオープニング・コンサートは、この音楽祭の常連の聴衆やピアニスト達の心に残る名演奏であった。
 今回この音楽祭の一週間前まで日本に滞在し、東京や浜松国際ピアノ・コンクールで演奏活動をしていたアレキサンダー・コブリンも、この音楽祭に参加してその演奏を披露していた。(モーツァルト「ピアノ協奏曲第20番」/ モーツァルト「ソナタニ長調」/ベートーヴェン「ソナタ第31番」/ブラームス「4つのピアノ小品OP119」)

 パウル・バドゥラ・スコダ(PAUL BADURA SKODA)氏 といった巨匠をはじめとして、幅広い世代を代表する素晴しい顔ぶれだ。
CYPRIEN KATSARIS, PIERRE AMOYEL, EUGEN INDIJIC, PASCAL ROGE, JEAN-EFFLAM BAVOUZET, STEPHEN KOVACEVICH, MICHEL DALBERTO, FRANCOIS-RENE DUCHABLE, NIKOLAI LUGANSKY、CLAIRE-MARIE LE GUAY、FRANCESCO TRISTANO SCHLIME, KATIA SKANAVI, ANTTI SIIRALA, SHANI DILUKA, JONATHAN GILAD, NICOLAS STAVY, PASCAL AMOYEL, FREDERIC VAYSSE-KNITTER, FRANCK BRALEY, CEDRIC TIBERGHIEN, ZHU XIAO MEI, WAYNE MARSHALL ・・・
さらにJEAN-CLAUDE CASADESUS, JAMES JUDD, JEAN-BERNARD POMMIERが指揮する国立リール管弦楽団とブルターニュ管弦楽団。


 パリから列車で約一時間。三日間好きなピアニストの演奏にどっぷりとひたり、さらに時間が許せばホールの隣の旧市街でこの地方独特のレンガ造りの建物のシックなショッピング街やレストラン街を楽しみ、特にこのホールの向かいにあるシーフード専門店で旬の生ガキやシャンパン蒸しのカキを満喫すれば完璧なハーモニーかも?


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LES PIANOS DU NOUVEAU SIECLE A LILLE(仏)
+33-3-20-12-82-40


ピティナ編集部
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