2009浜コンレポート

浜コン:1次予選1日目レポート

2009/11/08
浜コンは、秋晴れの日曜日、1次予選の第1日目が開幕しました。前回は午前中から始まって夕方まででしたが、今回は、13時30分-21時30分(ただし5日目は10時開演)と、ほとんど午後以降の時間帯で開催されるプログラムとなりました。
開場前から長蛇の列
開場前から長蛇の列


ステージ上のピアノ1次予選1日目、ステージ上には3台のピアノが並びます。左からヤマハ、スタインウェイ、カワイ。これらが、事前のピアノ選びの申告に基づいて、ステージ上でスムーズに転換されていきます。初日のピアノ選択は以下の通り。

48 Aaron LIU(16) Kawai
47 Tami LIN(13) Yamaha
38 KIM Kang-Un(20) Steinway
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06 ASAKAWA Mai(25) Steinway
19 John FISHER(25) Yamaha
58 Alexia MOUZA(20) Steinway
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80 Nattapol TANTIKARN(22) Kawai
16 Francois DUMONT(24) Yamaha
81 Alessandro TAVERNA(26) Yamaha
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62 NOGI Nariya(20) Yamaha
11 CHO Sung-Soo(21) Yamaha
96 ZHU Hao(23) Yamaha
91 Ibragim YAZHI(24) Yamaha
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56 Mikhail MOROZOV(22) Yamaha
49 LIU Ji(19) Steinway
69 Ivan RUDIN(27) Yamaha
42 Julia KOCIUBAN(17) Steinway

Yamaha 10名、Steinway 5名、Kawai 2名

ただし、この「ピアノ選び」は、国際コンクールで必ず課されるというわけではありません。ベルギーのエリザベート王妃国際やフランスのロン・ティボー国際では、むしろ1台のピアノをコンテスタントたちが弾いていきます。一方、ワルシャワのショパン国際などではピアノ選びが行われています。(前回のショパンコンクールでは、ステージの下からピアノがせり上がってくる印象的な映像が配信されました)今回はベーゼンドルファーの用意はありませんが、ピアノ選びは、楽器の街ハママツならではのこだわりといえるでしょう。


既に、今日の演奏の全ては、公式サイトの「映像配信」にアーカイブされており、今からでも良質な音と映像で楽しむことができます。ホールに広がる音の「漂う」感じや音の「陰影」「ニュアンス」が拾いきれないのはやむをえないとして、それでもかなり現場に近い音が再生されています。また、現地でのCD販売も、ほとんどリアルタイムで「先ほど演奏を終えたあの人のCD」を購入することができるようになっています。お気に入りのピアニストを見つける、という国際コンクールの一番の楽しみに対する、浜コン事務局スタッフの並々ならぬ情熱を感じます。

さて、演奏はどうだったでしょうか。

まず注目は、最年少コンテスタント(13歳!)として2番目に登場したTami LIN(カナダ)。落ち着いた演奏態度と大まかな音楽の方向感を正確に捉えた音楽性で基礎能力の高さを見せ、ベートーヴェンのソナタなど大いに聞かせました。Alexia MOUZA(ギリシャ、20歳)は、ドラマティックで濃厚ながらアーティキュレーションやタッチの一つ一つに配慮の行き届いたハイドンが印象的。圧倒的だったのは、Francois DUMONT(フランス、24歳)。既にプロフェッショナルともいうべき内容で、バッハの冒頭から思わず息を飲む美しく淡い音で一気に引きつけ、タッチ・コントロールの精緻さは群を抜き、多くの聴衆がさっそくCDを買い求めていました。続く、Alessandro TAVERNA(イタリア、26歳)は、前回の浜松で惜しくもファイナル進出を逃したものの、聴衆から多くの支持を得た、浜松の人気者。今や各地のコンクールで上位入賞の常連です。DUMONTとは対照的な、輪郭のくっきりしたノーブルな音質で、各フレーズを深く歌い込み、TAVERNA節ともいえる濃い味付けで個性的な解釈を披露しました。聴衆も、最後の音が鳴り止まないうちから大喝采。人気の高さをうかがわせました。

夜の部では、ZHU Hao(中国、23歳)が、DUMONTと同じ平均律を、まったく別のやり方で説得力ある解釈の後、さらにハイドンで細部にまでクリアで確信的な表情を盛り込み、音楽性の高さを聴かせました。(クライスラー=ラフマニノフでやや音が割れ気味になるあたりが配信で捉え切れていませんが、音質と奏法から想像のつく方もいらっしゃることでしょう)同じ中国では、LIU Ji(19歳)の、ZHUとは対照的な貴族的な上品さも印象的。解釈や音楽の作り方に無理がなく、肩の力が抜けて隅々にまであたたかい目が行き届いた演奏。シューマンのトッカータの精度をもうワンランク上げたかったところです。

明日は、1次予選2日目。トップバッターから、地元静岡県出身の佐藤元洋さんが登場します。明日も多くの熱演が期待されます。


ピティナ編集部
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