100のレッスンポイント

060.楽譜の全てを見よう!

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2011/01/28

読譜のポイント15項目のまとめ

ともかく、作曲者からの唯一の手がかりである、楽譜を隅から隅まで読み取る事が大切だと思います。書いてあることの現実的な、音の高さや長さ、強さから始まり、速度記号、表情記号など、全ての書かれてあることを見逃さずに読み取らなければなりません。

そして、それらを使ってどんな事を言いたかったのか、あるいはどんな事を感じ取って欲しかったのかという内面を想像し、それを音に変換して人に伝えるという事が、ピアノを弾くということです。

スタッカートが付いているのに、勝手につなげるわけにはいきません。表情が違ってきます。「表現のポイント」でも述べましたが、スラーの線で区切られているフレーズ(まとまり)も、変えて弾くわけにはいきません。違った言葉やニュアンスになってしまいます。

基本的なこれらの事を考えずにただ弾いているという事が、意外に多くないでしょうか?

まずは、楽譜上に作曲家の残したものを理解したら(楽語など知らないで平気で無視するような事なく)それを音にすることを意識して欲しいです。本当に書いてある表現を再現できているか?それに興味を持ち、聴き、より楽譜に近づける事が大切です。

でも、書いてある事を全て読み取ったら、皆が上手なすばらしいピアノを弾けるのでしょうか?そんな事はありません。正しく読み取ったものをどう表現するかは、ここからです。

どんな音が合うか?
pと書かれていれば小さく弾きますが、同じpでも、大きさも感じも何種類も考えられます。また一つのフレーズに何も書かれていないとき、同じ強さで弾きますか?自然な抑揚というものは書かれていなくても付けないと、「棒弾き」に聴こえます。

もし、1音1音「こういう感じの音で」とか「前の音より強く」といった事を指示してあると間違いのない良い演奏になるかもしれませんが、きっと、皆画一的でちっとも面白くないはずです。

作曲者の意図を楽譜から読み取り「こういう感じを出したかったのかな?」と想像し、よりその楽譜が生きる演奏になるように、自分の気持ちと考えをプラスします。そして実際、音が出たら、「わーステキ!」とか「もっと、こうしよう」などと感じ取りながら、(満足と、反省を繰り返しながら)次に更に良い音楽を生み出しいていくように、弾いている間じゅう、自分の音楽を楽しんでいて欲しいと思います。

ピアノを習い始めた時は、楽譜を読み取れる力をつけるのが、最も大切な指導者の仕事です。そこでは、是非、読譜のポイントの初め(46)で述べたように、「読譜嫌いを作らない」「読譜は簡単!」で、楽譜を音にする楽しみを身につけて欲しいです。 その基礎が付いたら、それを使ってどう弾いているのか?どう弾いたらもっとすばらしくなるのかという指導に進展したいものです。

ところが、基礎で学んだはずの、あたり前の書いてあることも無視、書かれている音名やリズムまで違う。その指摘だけでレッスンが終わってしまう。これでは弾いている本人も指導者も、ともに嫌なマイナスの時間を過ごすことになります。

私は音楽を教えたい!○×の指摘をすることに時間を費やしたくない!といつも思っています。
「もっとこうしたら、ここがステキになるよ!」という事を伝えようとしているのに「うるさいな!弾けているのだからほっといてよ」という態度の人がいませんか?そんな時「もっと美しくなるためのアドバイスを聞く気がないならもうあなたに教える事は終わりました!来る必要はないですね!」と言うことにしています。

読譜の仕方から始まり、楽譜に書かれていない意図や、センスを考えその曲がよくなるため共に試行錯誤する時間が、レッスンであるように導きたいものです。そして、その時間が楽しいものになるようにと、毎日を送っています。


池川 礼子(いけがわ れいこ)

武蔵野音楽大学ピアノ専攻科卒業。武田宏子氏・吉岡千賀子氏に師事。バスティン・ メッソードの講師として全国各地で講座を行う一方、地元鹿児島ではピアノ指導法研 究会を主宰。生徒育成においては、ジュニア・ジーナ・バックアゥワー国際コンクー ル第2位輩出のほか、長年にわたりピティナ・ピアノコンペティションにて高い指導 実績を全国にアピール。特に1999年度は、ピティナ全国決勝大会のソロ・デュオ・コ ンチェルト部門に計7組の生徒を進出させ、ソロF級で金賞、コンチェルト初級で優 秀賞などを受賞した。導入期から上級レベルの生徒までまんべんなく育て上げる指導 法は、全国のピアノ指導者の注目の的となっている。ピティナ正会員、コンペティシ ョン全国決勝大会審査員。ステーション育成委員会副委員長。

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