ピアノステージ

Vol.10-2 Stage+人(11) 小原孝さん

2009/06/19
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「指1本からはじめる!」というキャッチフレーズで、新しいピアノレッスンが始まった。 NHK教育テレビ「趣味悠々」で6月より放送されている「楽しいクラシックピアノ」には、 初心者にも「名曲」をと願う小原孝さんの思いがこめられている。
Obara Takashi Making of...
撮影前や合間には、入念にスタッフと番組進行を確認。この日の収録は第3回目、パッヘルベルの「カノン」が取り上げられた。
撮影前や合間には、入念にスタッフと番組進行を確認。この日の収録は第3回目、パッヘルベルの「カノン」が取り上げられた。
レッスン中の小原孝さんと、生徒役の西村雅彦さん。この日のテーマは「指くぐり」。さまざまな指番号で、いくつもパターンを増やしていく。
モニターには手のアップと、レッスン風景全体が映し出されている。「指くぐり」の映像がはっきりと伝えられる。
モニターには手のアップと、レッスン風景全体が映し出されている。「指くぐり」の映像がはっきりと伝えられる。
収録スケジュール表。撮影の段取りがしっかりと組まれている。
収録スケジュール表。撮影の段取りがしっかりと組まれている。
撮影場所の「音楽迎賓館」は、撮影中はレッスン室とスタジオに早変わり。さまざまな設備とスタッフの姿が並ぶ。
撮影場所の「音楽迎賓館」は、撮影中はレッスン室とスタジオに早変わり。さまざまな設備とスタッフの姿が並ぶ。
着替えや名句時間を除くとほぼノンストップで撮影が行われる。
着替えや名句時間を除くとほぼノンストップで撮影が行われる。
撮影現場から
撮影現場

 木目の豊かな室内に、爽やかなグリーンが揺れる。まるで避暑地のような空気の中で、この日のレッスンが開始した。6月からNHK教育テレビで放送されている「趣味悠々」の撮影現場だ。世田谷区の閑静な地にある「音楽迎賓館」が、撮影中は小原孝さんのレッスン室となる。生徒役の西村雅彦さんとの和やかな掛け合いの中、かの名曲パッヘルベルの「カノン」が響き渡る。
「ドレミで歌いながら、まずは指1本で弾いてみましょう」
「お好きな指番号でいいですよ。どれがやりやすかったですか?」
 ゆったりとした進行でありながら、一つ一つ着実に進度を上げていく。さまざまなヒントやお手本を示しながらも、生徒さん側の視点も取り上げていく。「趣味悠々」といういわば初心者向けのレッスン番組の中で、今回小原さんが取り組まれているテーマ、そして視聴者に伝えたいメッセージは何なのか、撮影スケジュールの合間を縫ってお話を伺った。

クラシックの名曲を取り上げるということ
~小原流「練習曲」

「よく知っている曲であれば、初心者でも自分で弾きながら歌ったり、間違えると自分で気づいたりすることが出来ます。どなたにもピアノの楽しさを実感していただきたいので、ためらわずに皆さん憧れの名曲を弾いてもらうことにしました。」
 番組のシリーズは全13回。楽譜の読めない初心者が1本の指を使うところからスタートし、最終的には「別れの曲」や「乙女の祈り」、「ラ・カンパネラ」といった王道とも言えるピアノ名曲が弾けるようになるという。秘密は、小原さん自身が今回のために書き起こしたアレンジ楽譜。テキストに掲載されている名曲はどれも、ハ長調にやさしくアレンジされている。とは言っても、早いうちから大譜表が登場し、両手が使われる。左手のパートにも工夫があり、伴奏に徹しているわけでない。
「よくある初心者向けテキストは、右手偏重なことが多いです。左手がいつも和音だけではつまらないですよね。できなくてもいいから左手もたくさん動かして、鍵盤を幅広く使えるように、名曲をアレンジしてあります。」
 練習曲をやってから、弾きたい曲に進むという手順なのではなく、弾きたい曲があるから、それを練習曲に使ってしまうという発想!これぞ小原流だ。
「ピアノ指導者は、たくさんの引き出しを準備してあげることが大切ですね。指番号も一つに絞ることはないんです。いろいろやってみて、その人の『オリジナルを作っていく』のです。弾き方は千差万別。ピアノは教え込んだり教え込まれたりするものではなく、一緒に作ったり考えたりして、楽しみながら学んで行くもの。その大切さを番組テーマとして伝えたいと思っています。」

番組ディレクターの佐々木洋子さん。「誰もが憧れのピアノ作品に、この番組を通じて触れていただきたいと思います」
番組ディレクターの佐々木洋子さん。「誰もが憧れのピアノ作品に、この番組を通じて触れていただきたいと思います」
ピアノへの扉を開けるために

 ディレクターの佐々木洋子さんに番組制作のコンセプトを伺うと、番組には「趣味悠々」の視聴者層である中高年の初心者のほか、ピアノをもう一度やりなおしたい方、そしてピアノ指導者の方が見ても、参考になる工夫が様々用意されているとのこと。小原さんのミニコーナー「ピアノと仲良くなるコツ」も見所で、「どんな方も名曲へのアプローチをあきらめず、ピアノへの扉を開くきっかけとなれば」と語った。

取材・文 飯田有沙


小原孝
小原 孝 Takashi Obara(ピアノ/Piano)
番組内の曲以外にも、小原さんのアレンジ作品やコラムが多数掲載。楽典の解説も丁寧に書かれおり、ボリュームある一冊となっている(日本放送協会、1155円)。

1960年神奈川県川崎市に生まれる。クラシック・ギタリストの父の影響で6歳からピアノを始める。国立音楽大学付属中学・高校および大学を経て、1986年同大学院を首席で修了。クロイツァー賞受賞、初めてのリサイタルを開催する。ピアノ・伴奏法を菅野洋子、古代公子、ヨン・ブリック、畑中更予、小林道夫、塚田佳男、ルドルフ・ヤンセン各氏に師事。1990年CDデビュー以来「ねこふんじゃったSPECIAL」「ピアノよ歌えシリーズ」など30枚以上のアルバムをリリース。最新作「小原孝のピアノ詩集〜また逢う日まで〜」では阿久悠氏の作詞曲をアレンジ。CD「ウイリアム・ギロックを弾く」3枚を発売。ギロック作品の普及に努めている。また、全国コンサートツアーやサントリーホールのリサイタルを含め、ステージ数は700回を超えている。1999年よりNHK-FM「弾き語りフォーユー」のパーソナリティーを担当、11年目に突入。現在、尚美学園大学客員教授。国立音楽大学講師。(社)全日本ピアノ指導者協会(PTNA)評議員。日本著作権協会正会員。日本演奏連盟会員。日本ギロック協会名誉会員。

【今後のコンサート予定】
7/24(金)18:30開演 前橋市民文化会館小ホール「小原孝のピアノ詩集コンサート」~また逢う日まで」
7/31(金)18:30開演 シアタークリエ「土居裕子&小原孝ジョイントコンサート」

詳細はホームページをご参照ください。  小原孝のピアノサロンジル君のミュージックショップ


ピティナ編集部
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