ピアノステージ

Vol.10-4 ピアノのある生活(5) 2008年度グランミューズ部門入賞者にきく

2009/06/12
2008年度グランミューズ部門入賞者にきく
ピアノのある生活(5)
それぞれの仕事を抱えながら切磋琢磨を続けるピアノ愛好者―グランミューズ。
大学生、一般の社会人、母親、ピアノ教師とその種類はさまざまですが、共通しているのは「時間がない」こと。限られた練習時間での上達にはどんなコツがあるのか?コンペティションへの参加はどのように影響しているのか?グランミューズ部門入賞者記念コンサートにご出演の方々にインタビューしました。
コンクールは"通過点"
― コンペティションをどのような機会として捉えていますか?

古本─ 10年前、現在指導いただいている濱本先生との出会いがきっかけで、コンクールやコンサートに参加するようになりました。コンクールは芸術するためのひとつの通過点で、ピアノを通じてさまざまな世界が広がったと思いますね。私にとって生涯研修にふさわしい旅路の楽器ともいえるでしょうか。

篠木─ 特別な緊張感の中で演奏すると、曲中で今まで見えなかったものが見えたり、新しい自分(新しい表現)に出会えたりするので、自分自身を成長させてくれる、大切な機会です。

西谷─ 仕事の関係で、毎日1時間の練習が精一杯です。出張で1週間くらい全くピアノに触れることができないこともありますが、コンペという目標があると、短時間でも集中して練習ができます。会場で現代曲を聴いたことがきっかけで、記念コンサートでは自身でも現代曲を演奏し、その楽しさを実感することができました。

― 時には失敗することもあると思います。次につなげるにはどうしたらよいのでしょう?

滝田─ 過去に予選落ちをした時、演奏というのは自己満足ではいけないと痛感しました。レッスンで客観的なアドバイスをしてもらう事により大きな進歩となりました。また、参加する事で、20代の頃からの連弾の仲間や恩師との再会を果たし、多くの方とのつながりを実感しました。

安藤・醍醐─ 本番の回数を重ねる毎に曲に対して自信・安心感が生まれ、自分の精神状態をある程度コントロールする事ができるようになっていったのではないかと思います。 さらに、ホール全体の響きを感じたり、演奏を楽しむ余裕も出来たように感じます。響きの綺麗なホールで演奏している時は本当に幸せを感じますね。また弾きたいな~という気持ちが芽生え、その想いがピアノを続けさせます。

― A1カテゴリーで第1位を修めるのは並大抵のことではなかったと想像します。

大橋─ グランミューズ部門は初めての参加でした。全国まで残るのは相当難しいと聞いていたので、まさか自分がその舞台に立てるとは思ってもいませんでした。ちょうどコンペの頃は北京オリンピックで盛り上がっていましたよね。「金メダル」と「銀メダル」では全然違うんだなと何となく思っていました。今まで2位しか獲れたことがなかったので、やっぱり獲れるものなら1位を獲ってみたいと思っていましたね。今、心に残っているのは結果ではなく、あの日何の不安もなく舞台へ出て行けた、その強い精神力だった気がします。自分の想いを乗せて演奏するということは、こんなにも楽しいことなのかと改めて気づくことのできた昨夏は、私にとって忘れられないものとなりました。

自編曲で参加するチャンス
― 入賞者記念コンサートではカスタネットを使われていましたね!

滝田・田丸─ 鈴木亨さん(滝田さんの旦那様)が4手連弾用に編曲した曲『火の鳥~カスチェイの踊り、フィナーレ』をみなさんに披露したいと思っていました。グランミューズ部門では自編曲での参加が認められているので、大きなチャンスだったんです。もともとオーケストラの曲なので音も多く華やかですし、何よりも誰も弾いていない!というのがいいでしょう?(笑)

― 演奏曲はどのようにして選ぶのですか?

直江─ コンペに挑戦し始めた頃は単純に好きな曲や思い入れの深い曲、もしくは手元にあった曲を選んでいましたが、自分の持ち味が出せて、なおかつそれが審査員の先生方にアピールできるような曲を選曲するよう心がけるようになりました。以前はコンスタントにレッスンを受けていましたが、この数年は1年に数えるくらいです。

沼田─ コンペではデュティユーのピアノソナタ第3楽章を演奏しました。小学生の時からずっと憧れていた曲で、一度譜読みの段階で挫折しましたが、大学一年の時から気合で読んで弾き始めました。二人の先生にレッスンを受け、全部で大体5,6回見ていただきました。頻度は1~2週間に一回ずつでした。

村元─ 演奏したい作曲家から決めて、その中で音源を聴いたり弾いたりして決めています。コンペでは予選の曲と、本選・決勝で演奏する曲は違う雰囲気にしたかったので、それぞれ違う作曲家の曲を準備しました。レッスンは現在定期的には通っていませんが、本番何ヶ月か前から見てもらっています。

客観性が身につくデュオ
― デュオだからこそ得られるもの、というのはありますか?

滝田・田丸─ このペアで長年連弾を続けているので、音楽的にも精神的にもお互い励まし合って成長できたと思います。

安藤・醍醐─ ソロで躓いてしまった時、デュオがあったからピアノが嫌にならずに楽しく感じられました。それだけでなく、自分を客観視できるようになり、弱点も発見できます。意見を出し合い、お互いが理想とするカタチで曲を仕上げられた時の達成感、それを表現できたときの一体感は決して1人では味わうことのできないものだと思います!! それがデュオを続けていく原動力となっています。

あくなき執念を持ち続けること!
― ピアノを続けるコツや、上達の秘訣ってなんでしょう?

安藤・醍醐─ あったら教えて頂きたいです!

滝田─ この曲を弾けるようになりたい!理解したい!自分なりの表現をしたい!というあくなき執念(?)を常に持ち続けることですかね。演奏を録画・録音して自分達にダメ出ししたり、ステップなどの舞台経験を積んだりしています。
田丸 小学生の二人の子供に毎日振り回されています。学校のPTA活動、習い事の送り迎えでせわしなく日々が過ぎていきます。そんな中での上達の秘訣は・・・こういったコンペなどに出ることでしょうか(笑)。何か目標があるとそれに向かって頑張ろうと思えますよね。

直江─ ひたすら上手くなりたいと思う情熱が失せないことが結果につながると感じています。その時の自分が理想とする音色を追求するために、ピアニストの奏法や演奏スタイルを研究したりもします。自分に「足りないもの」は何かをいつも客観視し、その補填に努めています。

ピアノの前だけを「練習」としない
― 練習以外で心がけていることはありますか?

篠木─ 中学校3年生の担任、音楽の授業、吹奏楽部の顧問をしているので、平日は全く練習できません。土日の部活動指導の後に集中して練習しています。実際に音を出さずに曲の仕組みをとらえたり、楽譜を眺めてレッスンの復習をする時間も大切にしていますね。心身ともに疲れているときがほとんどなので、自分が共感できる(共感しやすい)曲、入りこめる曲を選ぶことが多いです。

大橋─ 音大を卒業して数年経過した今は、上達を目指すよりも「現状維持」を目標にしています。学生時代に比べて技術的には敵いませんが、経験だけは増えているはずですので、曲へのアプローチの深さや舞台経験の多さなどで音楽を語っていく他ないと思っています。とにかく「目標」を定め、一つでも多くのステージを踏むことが私にとっての勉強です。好きなことを勉強し続け、それを仕事にもできた自分はとても幸せで、それを「忙しい」と感じることはそれほどありませんね。昔からオーケストラの演奏が大好きでよく足を運びます。他にも美術館に行ったり、きれいな景色を見たり、とピアノの前だけを「練習」としないよう心がけています。

村元─ (ピアノ教室を主宰しているので)ピアノが大好き、上手になりたい!という生徒をもっと伸ばしてあげたいという想いが、自分の音楽性を高めるという気持ちに繋がっています。学生時代は一生懸命に弾くことで満足していましたが、楽曲に入り込んで勉強する姿勢は今思えば足りていなかったですね。常にピアノがある生活を送っていますが、もちろん好きなだけ弾けるというわけではありません。曲を仕上げるためには練習時間を取る事が必要不可欠ですが、楽曲に対する理解を深めながら自分はどのような音を出したいのか、音楽をどう構成して行くのかを考える時間も大切にしています。

― 具体的にどんな練習をするのですか?

沼田─ 何よりもまず、「ピアノが好き!」という気持ちがあれば、ピアノは続けられると思います。まだ学生ですが、社会人になってからも必ずや弾き続けていきたいです。上達は・・・小さい時からずっと続けてきたからです(笑)。コンペなど、一定期間の目標になるものを作って、コツコツと練習を重ねてきたと思います。特に今回は一番良いモチベーションで本番に望めるための方法を試行錯誤しました。――本番1週間前になったら譜面台を外して練習し、本番で弾いている時に弦やハンマーの羅列が視界に入ってきても動揺しないようにするんです(笑)。

確固たる趣味は自分の強みになる
― ピアノを続ける喜びとはなんでしょうか?

沼田─ 音楽は素晴らしいのだということを体現できることでしょうか。音楽は非生産的なものだから必要ないし、理解できないと言う人もいるでしょうが、やはり日常には必要だと思います。「よく分からないけれど、何だかすごく良い!」と感じられるのが音楽や芸術だとすれば、奏でることで自分自身も理解することができるし、人に伝えることも可能だと思います。趣味や特技の確固たるものとして挙げることができるので、自分の強みにもなりますしね。何より弾きたい曲がパッと弾けることがとても幸せです。

篠木─ 私にとっては、自分の感情を音に込めて表現できることです。ピアノを弾いているときは、日頃のストレスから解放されます。また、「(演奏に)感動した」と言われたとき、とても嬉しく思います。

村元─ 私の演奏を聴いて演奏家になりたい、ピアノの先生になりたいと言ってくれた生徒さんがいた時、本当にピアノを弾き続けていてよかったなと思いました。音楽で気持ちを伝えられることに心から喜びを感じます。

田丸─ (結婚して子供もいるので)妻、母以外としての自分の時間を持てたことに感謝しています。

― 演奏者にはさまざまな出会いがあるとお聞きしますね。

直江─ 人前で演奏すると自己啓発や自身の表現の場が得られます。ステップやコンペ等に参加することで、全国の様々な年代層の方々や職業の方々とお会いできます。そして何よりも、習得した技術は自分の一生の財産になります。

大橋─ 私も10年前にグリーグのピアノ協奏曲で競演したオーケストラの方が、私のことを覚えていてくださった、ということがありました。ピアノを通してたくさんの方々と出会い、共に成長し続けていくことが、音楽を続けられる原動力です。

― ありがとうございました。次回のご出演をお待ちしております!
取材・文 毛涯達哉

直江慶子(A2カテゴリー第1位)
名古屋芸術大学大学院修了。第4、5回大阪国際音楽コンクールピアノアマチュア部門金賞。第28回ピティナ・ピアノコンペティショングランミューズ部門B2カテゴリー第1位。第2回横浜国際音楽コンクールピアノ一般部門ロシア音楽賞。中沖玲子、ファルバイ・シャンドール各氏に師事。
村元絵美(A1カテゴリー入選)
桐朋学園大学短期大学部芸術科音楽専攻ピアノコース卒業。斉藤香苗、荻野千里、遠藤江里子各氏に師事。札幌市民芸術祭新人音楽会等に出演。現在、村元絵美ピアノ教室主宰。
大橋緑(A1カテゴリー第1位)
東京音楽大学ピアノ演奏家コース卒業。第9回ちば音楽コンクール大学・一般の部、第1回Miyoshi Netピアノコンクール第2位。演奏活動を続けながら、後進の指導にもあたる。鷲見加寿子、佐々木恵子の各氏に師事。ピティナ指導者検定全級取得。指導会員。
篠木彩友美(B1カテゴリー入選)
5歳よりピアノをはじめる。お茶の水女子大学卒業。田畑享英、米田ゆりの両氏に師事。これまで、鎌倉市学生音楽コンクール、アルモニーユース音楽コンクールで最高位受賞。かながわ音楽コンクールで最優秀賞受賞。現在、公立中学校教員。
古本健二(B2カテゴリー第1位)
広島大学歯学部卒業。日本アマチュアピアノコンクールB部門上位入賞。2007年、国際アマチュアピアノコンクールシニア部門審査員特別賞受賞。広島西音楽家協会会員。石川正司、柴田美穂、濱本恵康の各氏に師事。現在、広島市にて歯科開業。
西谷孝子(B2カテゴリー第2位)
九州大学薬学部卒業後、京都大学工学博士取得。6歳からピアノを始め、約6年間先生に師事。数十年間のブランクを経て、2006年にレッスンを再開し、渡辺綾美先生に師事。2007年、PTNAピアノコンペティショングランミューズB2カテゴリー地区本選奨励賞。
沼田理美(Yカテゴリー第1位)
明治大学文学部3年在籍。ピティナ・ピアノコンペティションB級・C級金賞、E級ベスト賞受賞。かながわ音楽コンクールにて神奈川新聞社賞受賞、神奈川県高文連ソロ・コンテストにて教育長賞(1位)受賞。これまでに江崎光世、伊藤恵、多喜靖美の各氏に師事。
滝田晃子&田丸淳子(Dカテゴリー2位)
後藤幸子氏に師事。(滝田)大阪芸術大学卒業。同大学専攻科修了。第7回摂津音楽祭入賞、併せて市民審査賞受賞。第3回吹田音楽コンクール入賞。(田丸)大阪芸術大学卒業。第7回摂津音楽祭入賞(大阪21世紀協会賞)、併せて市民審査賞受賞。第3回吹田音楽コンクール入賞。
安藤笑美子&醍醐麻里奈(Dカテゴリー1位)
小高明子に師事。東京音楽大学4年在学中。(安藤)連弾部門の設けられている各コンクールで入賞。ボランティア演奏を定期的に行い、ピアノ連弾以外にも伴奏や室内楽などで活動中。(醍醐)第8回北関東ピアノコンクール連弾大学生の部第1位、第31回ピティナ・ピアノコンペティション連弾上級東日本デュオ?地区本選優秀賞受賞。
2009年度 ピティナ・ピアノコンペティション
グランミューズ部門全国決勝大会

<Y・Dカテゴリー>
8月21日(金)浜離宮朝日ホール
<A・Bカテゴリー>
8月22日(土)王子ホール

◆2009年度 ピティナ ピティナ・ピアノコンペティション グランミューズ部門入賞者記念コンサート
会場:Hakuju Hall(東京・代々木)
日程:2010年2月20日(土)


ピティナ編集部
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