ピアノステージ

Vol.06-2 ピアノ学習Q&A(1)藤崎雄三氏(リンクアンド・モチベーション)

2008/03/31
テーマ「ピアノを学ぶ意欲を高め、維持させるには?」
 最近、ビジネスやスポーツ、教育の分野で、「モチベーション」という言葉をよく耳にするようになりました。「モチベーション」とは、動機や意欲を与えること。ピアノ学習において、どのようにしてご自身の、あるいはお子さんのモチベーションを高めることができるのか、モチベーションの専門家として活躍中の藤崎雄三さんにアドバイスをいただきました。
(ふじさき ゆうぞう)1961年生まれ。ブラジルのサンパウロ出身。上智大学外国語学部卒業。旧日本興業銀行を経て2001年株式会社リンクアンドモチベーションに入社。現在、研修ナビゲーターの第一人者として、経営幹部から若手社員までのコミュニケーション研修や、職場活性化研修などにおいて活躍中。著書に『絶妙な「叱り方」の技術』(明日香出版社)、共著に『モチベーションカンパニー』(小笹芳央著、日本能率協会マネジメントセンター)がある。幼稚園時代にヤマハのオルガン教室に通うが挫折。子どもの通う小学校ではPTA会長、週末は小学生にサッカーを教える、6児のパパでもある。
Q 家でのピアノの練習に、なかなか身が入らない様子。子どものやる気を出すのに効果的な言葉がけはありますか?
A 性格によってモチベーションの上げ方は異なります。

 何によってモチベーションが上がるかは、性格によっても変わります。たとえば、判断行動の基準になる「欲求」を大きく4つのタイプに分けて考えていく方法があります。
 他人の敷いたレールをいくのはイヤという自力本願のタイプは、「ドライブ欲求」が強い。その対抗軸にある「ボランティア欲求」は、人と人との関係を大事にする、人から感謝されて自分も喜ぶタイプ。もう1つの軸は、「アナライズ欲求」で、物事を研究し専門性を突き詰めるタイプ。その対抗軸の「クリエイト欲求」は、発想や感性を大事にするタイプです。4つともみんなもっている欲求です。ただ、どこに特性が強く出ているか、今どこに軸足を置いているかで、感性が違ってくるわけです。
 モチベーションを上げるのに効果的な声のかけ方も違ってきます。「ドライブ欲求」の強いタイプは何を基準に判断するかというと、「敵・味方」や「勝ち負け」。競争心をあおるのが一番モチベーションを上げられます。「コンクールに出て絶対1位をとろう!」と言われるとすごく頑張ります。「ボランテイア欲求」の強いタイプは、「善悪」「愛憎」で判断する。マジック・ワードは「ありがとう」。家でも「あなたのピアノを聞いたおかげでお母さんは元気になれた。ありがとう」と言ってもらえると、自分もうれしくなるタイプです。「アナライズ欲求」の強いタイプは、「真偽」「因果」――自分にとって納得できるかどうか――で判断します。物事を彫り下げたいタイプなので、「好きなようにやっていいよ」と言われると前に進めない。全部説明して、「この部分をやってみて」と枠を作って指示してあげると、はかどります。レッスンでも「とにかく、こう弾けばいいの!」と先生から自分の弾き方を押しつけられると、「なぜ?」という気持ちになり、怒られたとしか思わないでしょう。「クリエイティブ欲求」の強いタイプは、「醜美」「好き嫌い」が判断基準。こう弾いたらもっと楽しそうとか、楽譜に書いていないことまで即興で弾いてしまうタイプ。自分の独創性に自信があるから、「人と同じだね」と言われるとモチベーションが下がり、「その着想はすごいね」と言われると俄然、力を発揮します。
 これらの欲求タイプは、成長や環境で変わっていくので、決めつけることは怖いですが、考え方の1つの軸になるのではないかと思います。

欲求特性の4タイプ
欲求特性の4タイプ
欲求特性の4タイプ
いつもやる気に満ちている人をみるとうらやましく思います。長時間モチベーションを維持するためにどうしたらいいですか?
どれだけ長時間維持できるかではなく、「自分の力で、何回上げられるか」がポイントです。
 モチベーションの下がらない人はいません。縦軸をモチベーションの高さで横軸を時間だとすると(下図)、普通の人は、モチベーションが下がったとき、次のモチベーションを上げるまでしばらく間が開くんですよ。ところが、いつもモチベーションが高いといわれる人は、モチベーションが下がっても、またすぐに上げられるんですね。下がってもすぐに持ち上がれる。それを、遠くから見ているとモチベーションが上がったままに見えるんです。ですから、どれだけ長くモチベーションを保てるかではなく、「何回上げられるか」が問題なのです。しかもそれを「自分の力で」。ここが非常に大きいポイントです。
 モチベーションをすぐに持ち上げるには、「変えられるもの」にエネルギーを注いでください。人間の活動でいうと、思考・行動は変えられますが、感情・生理反応はそう簡単には変えられない。時間なら「過去と未来」、人でいえば「他人と自分」。過去や他人は変えられませんが、未来と自分は変えられる。たとえば、子どもとぶつかって悩んでいるときや、自分が落ち込んだときは一回立ち止まって、「変えられるか?変えられないか?」という軸で考えるといいと思います。また、子どもから学校のことを相談されたら、子どもの横に座って一緒に考え、どうがんばっても変えられないものだったら「忘れたら?」とか「しばらく横に置いておいたら?」という答え方もいいのではないかと思います。『北風と太陽』の話と同じです。北風でコートを無理やり脱がせたとしても、寒くてまた旅人はコートを着てしまう。結局その繰り返しです。しかし旅人が暖かいからコートはいらないと思えば、もう着ることはない。モチベーションというのは、最終的には内発的に自家発電できるかどうか、ということなのです。――悩んだら「変えられるもの」に注力せよ――子どもにもそういう発想を植えつけていくことを意識してほしいですね。
モチベーションコントロール
いつもやる気に満ちている人をみるとうらやましく思います。長時間モチベーションを維持するためにどうしたらいいですか?
どれだけ長時間維持できるかではなく、「自分の力で、何回上げられるか」がポイントです。
 モチベーションの下がらない人はいません。縦軸をモチベーションの高さで横軸を時間だとすると(下図)、普通の人は、モチベーションが下がったとき、次のモチベーションを上げるまでしばらく間が開くんですよ。ところが、いつもモチベーションが高いといわれる人は、モチベーションが下がっても、またすぐに上げられるんですね。下がってもすぐに持ち上がれる。それを、遠くから見ているとモチベーションが上がったままに見えるんです。ですから、どれだけ長くモチベーションを保てるかではなく、「何回上げられるか」が問題なのです。しかもそれを「自分の力で」。ここが非常に大きいポイントです。
 モチベーションをすぐに持ち上げるには、「変えられるもの」にエネルギーを注いでください。人間の活動でいうと、思考・行動は変えられますが、感情・生理反応はそう簡単には変えられない。 時間なら「過去と未来」、ピアノ学習Q&A(1)人でいえば「他人と自分」。過去や他人は変えられませんが、未来と自分は変えられる。たとえば、子どもとぶつかって悩んでいるときや、自分が落ち込んだときは一回立ち止まって、「変えられるか?変えられないか?」という軸で考えるといいと思います。また、子どもから学校のことを相談されたら、子どもの横に座って一緒に考え、どうがんばっても変えられないものだったら「忘れたら?」とか「しばらく横に置いておいたら?」という答え方もいいのではないかと思います。『北風と太陽』の話と同じです。北風でコートを無理やり脱がせたとしても、寒くてまた旅人はコートを着てしまう。結局その繰り返しです。しかし旅人が暖かいからコートはいらないと思えば、もう着ることはない。モチベーションというのは、最終的には内発的に自家発電できるかどうか、ということなのです。――悩んだら「変えられるもの」に注力せよ――子どもにもそういう発想を植えつけていくことを意識してほしいですね。

Vol.6 INDEX


2008年3月31日発行
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