レッスン室拝見

第05回 堤佳子ピアノ教室

2002/11/01

当協会フェスティバル実行委員、ステップ実行委員を務める堤佳子先生。脳の活性化について独自に研究され、リズミカルに進行するレッスンは導入期の子供達、大人の生徒からも絶大なる信頼が寄せられている。一方で、音楽の道へ進みたいという夢を持った生徒たちを希望の進路へ導けるよう、基礎作りに力を注ぎ、音大の先生方への橋渡しをしている。近年では、東京音楽大学ピアノ演奏家コース(高校)へ2年連続合格、またピティナ・ピアノコンペティション全国決勝大会銅賞、埼玉コンクール金賞をはじめ、多数の入賞者を輩出している。

《INDEX》
1.5指は外に出ている第2の脳です2.まずはピアノから離れて基礎作り3.聴く人の心を癒せるような演奏ができるように・・4.受験生~実年までの生徒から


1.5指は外に出ている「第2の脳」です

はじめに、堤先生のレッスンの根底にある「脳」を活性化させるということについて、その科学的背景から、レッスンの中にどのように取り入れているかを伺う。 かつてご実父が数年に渡り脳神経外科に入院されていたことも、堤先生が脳の活性化について研究されている一因だという。


─ 先程、レッスンを見学させていただきましたが、生徒さん達が生き生きと、実に楽しそうに取り組んでいらっしゃいましたね。

:「5指は外に出ている第2の脳である」との如く、5指を使った頭の体操をしています。音楽や芸術は、創造性、感性、絶対音感などが源だと考えて、それらの能力には「右脳」が重要な役割を果たしているわけですが、右脳優位で生きている幼児期の大切な段階で、今やったようなトレーニングを行うと右脳活発に効果的と考えています。もともと音楽的に優れた才能を持って生まれたというタイプでなくても、根っこの部分を訓練に働きかけることによって、音楽的に成長を促せると感じています。


─ とても楽しそうにレッスンが行われていましたが、「楽しい」のは大前提で、それぞれに科学的な意味があるのですね。

:そうですね。ピアノは、左右の手が全く別の音型を、同時に正確に弾くことを要求される楽器なので、右脳、左脳のバランスに良い発達を促すのに適していると思います。
せっかく幼児期から預かることの出来たお子さんには、右脳に働きかける、左手を多く使う練習を「焦らず、休まず、こつこつと」をモットーに取り組んでいます。
気を付けているのは、一度ついた困った癖は直すのに3倍時間がかかると言われているので、お箸の持ち方同様、ヘンな癖がつかないように、最初が肝心、導入期の腕、指づくり、座り方から足の位置、体重のかけ方なども細部に渡って、手取り足取り、定着するまで、時間をかけています。その際、子供たちが嫌がらないように、遊び感覚で身につくように、ボール投げ、縄跳びなど遊びの要素を入れて進めています。


─ 堤先生のレッスンは、幼稚園、小学校低学年の方は30分と伺いましたが、非常にテンポが良く、限られた時間の中でもこんなに!というくらい凝縮されていますね。

:1回1回のレッスンは、楽しくスピーディーに進めて行きたいと思っています。スピード感があるほど、右脳が働いて、子供たちが飽きずに集中するんです。3歳であずかった子は、さっきのカードあそびのようなものをたくさんやります。まずは鍵盤から離れたところで、基礎的な指づくり、その後鍵盤上での演奏へと移行させています。とにかく、年頃の子供の持てる集中力は、20分といわれていますので、大人は長時間の方が良いとお思いでしょうが、楽しい時間は早く感じられるように、「あら?!もう終わり?もっとやりたかった!」と感じさせると、続きをお家で練習してくれますし、次回のレッスンを楽しみに休みなく来てくれます。いかに子供に飽きや疲れの色が見えないうちに、豊富な内容を盛り込めるかが決めてであり、こちらの裁量かといつもドキドキしているんです。


─ 他にも、観劇や音楽会に皆さんで出かけられたり、コンクール等へも積極的に参加されていますね。

:皆で楽しく、ツアーのように出かけています(笑)生の演奏を間近で感じることによって、五感を鍛え、一緒に「音楽は楽しい」ということを体感させてあげたいのです。また道中一緒にお食事などをして、家族ぐるみのお付き合いもできることも嬉しく思います。想い出になりますよね。コンクールやステップへの参加は、狭いレッスン室だけでなく、広い会場で自分の音がどのように響くかというのを実感して欲しいのと、他の教室の方の演奏を是非聴かせたいという想いがあるからです。あとは、ある程度の年齢になったら、音楽的知識、またそれに関連する知識を広げさせるため、「図書館へ行って調べてきなさい!」と言ってみたり、絵画や文献を見せたりして、広い範囲からのアプローチをしています。




2.まずはピアノから離れて基礎作り

様々なグッズを使って、指、腕作りも大切にしている堤先生。自ら「合わせ味噌」と呼ぶ基礎固めは、ご自身の経験に基づく脳の活性化の研究、様々な講座から得たアイデアを取り入れ、後々、テクニック面で生徒が苦労せぬよう、楽しく学べるように工夫されている。


-瞬間記憶-

「目をよーく開けて、カメラを撮るように」

「ぱっ!何がいましたか?」

「ヘリコプター、ライオン、アイロン、あとピストル!」

(1)腕の使い方をボールを使って表現。ひくい鍵盤からたかい鍵盤へ!

「肩のハンガーはずれないようにね」

(2)指揮をしながら足踏みをして、更に早口言葉を言えるかな?

(3)50g、100gの粘土で作ったおもりを、手作りのボードの上で指を使ってまっすぐ飛ばそう!
(4)手の形を確認!
「指の神様はどこにいるの?」

「第一関節!」

「神様をつぶしてはいけませんよー。」
(1)~(4)で姿勢と指づくり

ぐー、ちょき、ぱーを左右交互に。できるようになったら、自分のお名前を言いながら、意識しないで動かすよ。
バッハのインヴェンション。音符に色がついた楽譜で、テーマを探そう。
バロックダンスを絵でみてみよう。どんなドレスを着ているかな?


3.音楽を通して人の心を癒す人間になるように・・

レッスン見学の後、お集まりいただいた生徒さんのご父兄に、堤先生との出会い、先生のお人柄等についてお話をいただいた。


─ 堤先生との出会いを教えてください。まずは、清水麻衣ちゃんはどこで先生と?

清水:今年の5月に堤先生のところに来ました。それまでは私が教えていました。先生に出会うまでは、いろいろな先生を見学して・・・。最終的には楽器店の方に紹介してもらいました。堤先生が7人目の先生だったんです。


─ 決め手となったことは?

清水:それまでに何人かの先生にお会いし、体験レッスンなどに伺いましたが、それまでは帰ってから、子供に「どう?」って聞いても、ううう・・・と考えるので、この子がこの先生につきたいと言うような先生にお願いしたいなと思っていました。堤先生のところに伺った時は、子供が「堤先生に習いたい!」と言ったので、それが決め手になりました。


:それまではお母様が家で教えて下さっていまして、本当に真っ白な状態でした。悪いところは無くて。そうですね、カレーの材料が揃っていて、まだ切ってない状態。無農薬栽培(笑)。そしてお料理をちょっとしたらすごく良い香りがする。それでちょっと入れるといろんな味が変わって。彼女は非常に色っぽい演奏をするんですよ。小学2年生にして。最初は蓋をした状態だったけど、開けたらふぁーっと出てきました。


─ これから先生と一緒に味付け作業に入るわけですね。

:そうですね、テクニックはやっぱりまだね。指の角度とかボードとかも見ていて分かるのですが、日が浅いので。でも、ちょっというぱっと直ります。


?尾崎優衣ちゃんは?

尾崎:はじめ自宅の近くでやさしい吉野先生という先生に楽しく教えていただいていたんですけれども、先生のご紹介で素晴らしい先生がいらっしゃるということで、連れて来ていただきました。はじめて先生のところに来てピアノの音を聞いたときに、心に響いて、それで是非教えていただきたいということになりました。今も吉野先生にも教えていただいています。
昔はただ弾くだけの感じでしたが、それが技術面も向上しましたし、ピアノも勿論、音楽自体が大好きになって、興味を持つようになって感謝しております。

:こちらこそ努力家で、驚いちゃう。紹介してくださった吉野先生のお蔭と感謝しております。吉野先生とお知り合いになったのも、コンクールやステップに私の生徒を出していたからなんです。生徒の演奏を聴いて、ちょっと良いかな?と思ってくださったというか。吉野先生とは同級生でもなく、ご近所でもなく最初は何のつながりもなかったんです。


─ コンクールで堤先生のお弟子さんの演奏を聴かれて、是非先生にお願いしたいということだったわけですね。

:そうなんです。今も吉野先生にも教えていただいたりもしていて、優衣ちゃんは今回コンペティションでよい結果が出たので、表彰式にはご招待してくださいと言いました。ご縁を結んでくれた吉野先生のお蔭ですから・・・・。

他にも今日来てくださった川田優太郎君は、中学時代からの知り合いの接骨院の先生からの紹介で、後藤大樹君はお母様と私が小・中学時代の同級生。本当に色々な出会いがあります。皆さんいろいろなご縁で大切なお子さんのレッスンさせていただくことになり、不思議です。本当に私を支えてくれているのは、皆さんのお蔭であり、生徒さん達の笑顔だと最近実感しています。

川田:今年の4月に初めてピアノを触るという状態で、堤先生にお願いすることになりましたが、まだ3ヶ月たらずで、ピアノをやっていることでこんなに頭の回転が良くなるんだということを実感しています。コンペティションにも出していただき、惜しくも次点でしたが、なかなか直らなかった姿勢が短期間で直すことが出来ました。

:コンペティション等も、競争のように使うのは悲しく、辛いと想うので、自分を成長させる機会としたいです。自己満足のためではく、優しい気持ちでいるからこそだせる、美しい音色で、聴く人の心を癒すような演奏ができるよう手伝えたらと願います。
例えば、大樹くんが野球選手になってピアノを弾きたいように、みんないろいろ夢があるので、大切な人格形成の時期に、ピアノ一本ではなく、音楽を通して、いろいろなことを学んでもらいたいと思います。更には、ピアノが趣味ではなく特技になり、心の支えや、拠り所のような役割になってもらえたら最高です。1つでも良いことを皆さんに伝えられるように、もっと勉強しようと思います。




4.受験生~実年までの生徒から

3歳児からの導入期の指導もさることながら、音高、音大受験、大人の生徒も幅広く指導されている。一人一人を大切に想う気持ちが、生徒さんの言葉からも伝わってきた。
レッスンにおいて、「無限大の可能性を秘めている子供に、限界を置かずにやること」といつも語る堤先生。自身が受けていたピアノ教育の中で、特に受験期に基礎からやり直したという苦い経験から、指導者の立場となった今、情熱を一心に注いで日々レッスンに励んでいる。また、実年の生徒さんには、「人生の先輩」と敬意の念を示す。レッスンを待っている間には紅茶を入れ、それぞれ持ち寄った手作りのお菓子をいただきながらお互いの演奏を聴き合い、仕事も家事も忘れたひとときを過ごすという。ピアノという楽器を通して心の交流を大切にしている堤先生の教室から、5名の生徒さんにお話を伺った。


保屋野美和さん(高3)

先生のご指導は情熱とパワーがあり、いつも圧倒されてしまいます。音楽は「歌」というのが一番大切だということ、テクニックや身体の使い方のこと、ソルフェージュなども1から教えていただきました。堤先生は、音楽のことになると熱くなられ、音楽に対する姿勢、身体から湧き出てくるものがすばらしいので、その魅力に憧れ、本格的にやってみようかと思うようになったのです。
ピアノだけではなく、演劇や古典舞踊、ピアノのコンサートなどにもお誘いいただき、どんどん視野が広がっていきました。いつもはお話が面白く、楽しいのですが、受験期には週3回くらいレッスンを取っていただき、厳しいレッスンが続きました。ピアノのことはもちろん、社会に出た時のマナーなども教えてくださり、今役立っています。
私はスタートが遅く、小学校5年生の時から本格的にピアノを始めましたが、先生に引っ張られながら念願の音楽高校に進むことができましたが、そこでも播本三恵子先生という偉大な先生を紹介してくださり、今夏にはイギリスへ短期留学しました。他にも堤先生の人脈のお蔭でいろいろな人間関係が広がっています。今の私があるのは、堤先生がいらしたからだと思いますし、今もピアノに関わらず、様々な相談をしています。これからもずっと関わって行きたいと思っています。


井波智恵さん(高2)

堤先生との出会いは、両親がたまたま北本文化センターの図書館を訪れたとき、併設されているホールで、偶然にも堤先生の発表会を聴いて、是非堤先生に習わせたいと思ったことがきっかけです。
幼稚園の年中から通っていましたが、小2で山梨に引っ越してからも、毎週母の車で片道3時間かけて通いました。曲にお話を作ったり、一緒に歌ったり、イメージしながらのレッスン、またテクニック面、身体、手、指の使い方を様々なトレーニング方法で教えてくださいました。演奏会や講座に誘ってくださる時も、横に座って解説や感想を聞かせてくださるので、とても勉強になります。先生が東京音大演奏家コースに通っていた頃のお話を聞くうちに、同じ学校に進みたいと思うようになりました。
受験の際、精神面で自信をなくしそうになった時、落ち込んだ時には真剣に相談してくださいました。そのような心のつながりがあり、音高に通う今も、たくさんのアドバイスをしていただいています。


名古屋典子さん(実年)

一言で堤先生を表すなら「魔法のおもちゃ箱」ではないでしょうか。関心するほど次々に出てくる面白レッスン語録。
例えば、「ポップコーンがおなべの中でぽんぽんはじけるように」、「大きな犬が突然、ふせをしたように」「あらあら、それでは暑くて伸びたゴムのようですねぇ」等・・
このような表現がレッスン中、妖精の粉がシャワーのごとく生徒たちに絶えず降りかかります。3歳の子には3歳用のおもちゃ箱から、私のような40代には実年用の箱から、色とりどりのスカーフを取り出すように現れます。しかも、これらの言葉はとてもわかりやすく、ピアノとの距離をどんどん縮めていってくれますし、先生のくるくる動く大きな目や、パントマイムのような身振りに、強くひきつけられます。それは、堤先生が一人一人のレッスンを心から大切にし、愛情を注ぎ込んでいることの現れだと思います。出会った全ての人に、ピアノの魅力や楽譜の奥にある世界を伝えようとする熱い想いが、皮膚感覚として伝わってきます。


古関文以さん(実年)

レッスンを始めたきっかけは、お友達の結婚式でとなりの席になり、お話をしたのがきっかけです。レッスンを始めて10年近くになるのですが、先生がお手本にさりげなく弾いてくださるピアノにいつも感動しています。「今日もレッスンに来られて幸せ!」って感じます。いつでも表現豊かに感じを込めて指導してくださいます。これからも、ずっと夢と感動を与えてくださる、温かな大人のレッスンを続けて行っていただきたいと願っております。



ピティナ編集部
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