ピアノとコーチング

第23回 それは「しなければいけない事?」それとも「したい事?」

2008/12/15
第23回

今日は、あゆみ先生の3回目のセッションの日。 「発表会のリハーサルもあるし、コンクールの予選も迫っています。年明けには指導者検定の試験と生徒のグレードも入試もあるし・・・・何から手をつけたらいいんでしょう。指導力を付けたいと思って通い始めたセミナーと公開レッスンも申し込んじゃったし・・・リエ先生がよくおっしゃる優先順位が、付けられない感じなんです。私は、何からやったらいいのでしょうか?」

あゆみ先生の焦りが受話器を通じて伝わってきます。
これまでも、あゆみ先生は、たびたび迷いを口にしていました。
「どうすればいいんでしょう。やらなくっちゃ、やらなくっちゃと思うんですが、前に進みません。気がつくとぼ?っとしていたり、だらだら過ごす自分に嫌気がさすんです。こんなんじゃダメって声が聞こえてきて・・。もっと、考えなくっちゃいけないんですよね。でも、そう言えば、子どものころから考えるのが苦手でした。どれからスタートしたらいいと思われますか?」
私は、あゆみ先生が、どうしたらいいかがわからず、度々口にする「どうしたらいいんでしょう」「しなくっちゃ」という言葉が気になっていました。
「私には、答えられない。それは、あゆみ先生が考えて決める事だから」
「そうですよね。わかっているんですけど?」
「決めたい?」
「ハイッ!それが出来たら、どんなにスッキリするでしょう!」 「それじゃあ、約束してほしいの。次のセッションまで、<やらなくっちゃ>と思った時に、立ち止まって考えてほしいの。それは<やらなくちゃいけないことなの?それともやりたいことなの?>って自問自答するの」
あゆみ先生は、元気に答えました。
「はい!やらなくちゃいけないことがはっきりしました!」
またまた、使ってしまった<やらなくちゃ>。
思わず苦笑いするあゆみ先生です。

第23回

翌週のあゆみ先生は、とても落ち着きを取り戻していました。
「やりたい事とやらなくちゃいけない事を区別するって、本当に大事なことなんですね。やらなくちゃと思っていたことの中にやりたいことを見つけて、嬉しくなりました」
「そう!それは、良かった。そして、何をやったの?」
「はい!この時期にセミナーや公開レッスンを入れた事自体が甘かったんです。
キャンセルしようかと思ったんですけど、替わりに大学生の生徒さんに行ってきて報告してもらう事にしたんです。彼女の勉強にもなるし、すごくいいアイデアでしょう!」
弾むようなあゆみ先生の声。
たった一つの思考を変えただけで、するするとうまくいくことがあります。
それを人に委ねないで、自分で見つけた時の喜び!
まるで宝を掘り当てたように嬉しいものです。

<しなくっちゃと>いう限定的な考えは、行動を制限しマイナスの影響力を持ちます。
でも、そのことに気づきさえすれば、それをもっと可能性のある考えに視点をずらす事ができます。
私の仕事は、意志薄弱なクライアントさんを励ます事ではなく、一番輝く可能性に満ち溢れたクライアントさんを引き出すこと!
そして、一つ一つの成功体験を積み上げて行き、どんな時でも自分を信じて答えを出せるような人になっていただくことです。

第23回

その後のあゆみ先生は、次々に<やりたい事>を見つけて行き、それを中心に行動計画を立てられるようになっていきました。
今では、前向きに考えられるような思考の習慣もついています。

しかも、それをレッスンの時、生徒さんたちにも広めているそうです。
「<しなくっちゃ>ってまた言ってるわよ。それは、<したい事>なの?それとも<しなくちゃいけない事>なの?先生は教えないわよ。自分で決めてね!」と・・・
おかげで、今までは、些細な事でも決められなかった生徒さんに自己責任力が増してきました。また、不思議とお母様方からのご相談の時間も減り、なんだかとってもいい感じ!
お教室全体がピシッと引き締まりはじめたそうです。


【GoogleAdsense】