ピアノとコーチング

第15回 保護者の方とより良好な関係~読者からのご相談への回答~

2008/04/17

ロンドンにも明るい春がやってきました。
サマータイムに切り替わって、街全体が春色いっぱいです。

いつもピアノとコーチングをお読みいただきありがとうございます。
読者の皆さまからご相談をいただきましたので、お答えさせていただきますね。

先日も「先生。うちの子もコンクールに出したほうがいいのでしょうか」とご質問をいただきました。「本人の意思は?」と聞いたところ「●ちゃんと一緒にがんばりたいと言っています」と言うので、コンクールを受けることに決めました。ところが今度は「うちの子、何を弾いたらいいんでしょう」と曲決めにまで口を挟んできます。その後、「落ちたらどうしたらいいんでしょう」「本番のドレスはどちらがいいですか?」などいちいち煩くて、レッスンに集中できません。最近は、気が重くてたまりません。

ご相談、ありがとうございます。私の考えを書かせていただきますね。
みんながやっているからうちの子にもやらせよう。流行に乗り遅れたらチャンスを逃してしまいそう・・・そんな考え方の人が増えているようです。このお母さんも、自発的なチャレンジではなく、受ける目的も明確でないため、どうもコンクールのイメージが浮かばないようです。そこが、自分の意思で決められず、先生に決めてもらおうする原因のひとつかもしれませんね。しかし、今後も先生が相談に乗り続けることは、お母さんの依存心を深めることにもつながりそうです。だからといって、いきなり「ご自分で決めてください」と突き放したらお母さんも不安で一杯になってしまいます。

では、このようなアプローチはいかがでしょう。

「どんな曲を選べばよいのか、心配ですよね。わかります。(と受け止めてから)お母さんご自身で、曲を決めたいのですか?そのように聞こえましたが、どうしますか?(優しいトーンで気づきを促す)」

「去年のコンクールの服装をDVDで見るのもヒントになりますよ(提案する)弾きやすくって、お子さんに似合うドレスをお母さんが決めてくださいね」

「ドレスのことで、誰か相談にのってくれそうな先輩お母さんはいませんか?」

「落ちることを心配しているように聞こえます。むしろ、コンクールにチャレンジする中で、演奏、精神ともに成長できたらすばらしいですね。(視点を動かす)
昨年、コンクールに参加された他の生徒さんを思い浮かべてみてください。合否にかかわらず、成長されたなあ?と感じることはありませんか?例えば、それはどのようなところでしょう。(モデルを探す・視点を広げる)」

上記のアプローチでは、先生は答えを出していません。「こうですよ」と言いたいところをぐっとこらえて、お母さんの答えを待っています。
暖かく見守ってはいますが、助け船は出していません。
実は、コンクールを受ける目的がクリアになると1番良いのですが、急に問われて自分の考えをきちんと言える人は少ないですね。また、自分で考える習慣のない人に、そこを深堀してしまいますと、前に進めなくなってしまう可能性があります。
今はあえてふれずに、さらりと話を進めるのもひとつのやり方です。

このように、自己責任で決められるようにするためには、手を取って一歩一歩むような丁寧な導きが必要です。

● ヒントを出す
● いくつかの中から選択させる
● 本人の考えが先生の考えと違っていたとしても受け入れる。自らの考えで行動した成果を実感してもらう

さらに、「やっぱり親が1番子供のことを良く知っているんですね?」と先生が感心したり、「なるほど!私も同じ意見です」と一緒に共感を積み重ねることは、自信をつけます。

このようなアプローチは、人に頼りがちな子供にも効果があります。
普段の会話をちょっと意識して、効果的な会話に変えてみましょう。
少しずつ自立へと導いていけると良いですね。


◆お薦め本

・ コーチングピアノレッスン Vo.1 コーチングスキル編
・ うまくいっている人の考え方


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