100のレッスンポイント

077.コンクールの有効利用

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2011/06/03

この20年でさまざまなピアノコンクールが生まれ、日本中でとても盛んに行われています。

私が子供の頃は、コンクールはまだ数少なくて、敷居が高く、「特別の人が受けるもの」と認識していたように思います。

今ではさまざまに目的の異なる、タイプの違うコンクールがたくさんあります。どれを利用しても、当日に向かってその曲を仕上げようと、本人も先生も親も、努力しますから必ず上達します。受けなかった人と比べると、かなりの進歩があります。

いつもの練習と異なり、同じ曲を数ヶ月弾くわけですから、曲を深く追求します。「楽譜の読み取り方」「音を聴くこと」等も、より確認でき、コンクール終了後はずいぶん意識が違ってきます。

また、同じ曲をたくさんの人が弾くので、子供なりに比較をすることになり、刺激を受けます。「自分はこう弾いたけど、他の人は違った。」「あの人の音はきれいだった!」など。
良くも悪くも、同じ曲を一生懸命弾いているわけですから、興味深く聴いているようです。

コンクールに挑戦することで、努力して曲を仕上げ、大きなホールで弾き、人前での演奏経験できます。当日は、常より耳の刺激もあり、感動あり涙あり、思い出深い日となります。すばらしいことだらけです。

ただし「失敗」や「落ちる」という負の要素もあります。

一度の失敗経験で、ピアノをやめてしまうこともあるそうで、とても残念です。出るまでの努力に最も価値があり、結果にこだわらなくても良いと思います。ただ、思わぬ成績だったときは反省し、次のチャンスまでの目標や、課題をもらえる場だと考えれば良いと思います。

失敗は誰でも起こるかもしれないことです。が、防衛策はあるはずで、自分の弱点を練習で克服しておかなければなりません。やったことのない失敗はほとんどないらしいです。時間切れになって、未完成で出てしまったのであれば、次は、計画を立てて早めに仕上げられるようにしましょう。弾けないところが残っている場合は、部分練習の甘さを反省しましょう。反省が出来れば、とても価値が上がるはずです。

さて、充分用意して臨み、よく弾けたと思っても、結果に出ない場合もたまにあります。自分が目指したことが充分果たせたら、私は目標達成で良いと思うのですが、当人は、そうは行きません。でも、赤いバラが好きな人と、柔らかいピンク色のバラが好きな人とがいます。「どうしてそちらが好きなの?」と言われても「好きだから」なのです。審査員も人間です。それぞれのお考えをもたれています。それと反する場合も時にはあるのかもしれません。

それも、良い社会勉強です。この頃のコンクールでは、講評を一人一人に書いてくださる事が多いです。私が審査をする際のコメントでは、次の目標が少しでも伝えられればと願い、短い演奏時間の中でなるべく「こうしたら良かった」という点を書くようにしています。

 

でも、多くの人が良いと思う演奏が評価される事がほとんどだと思います。赤とピンクの差があっても、生き生き咲いている花と、枯れた花の区別が付くくらい、音楽はかなりはっきりとレベルがわかると思います。

当日の演奏は、感動が伝えられるほどでしたか?自分が思っている事が人に伝えられたでしょうか?音楽をしている以上、楽しい、心が安らぐ、という事が自分自身にあったでしょうか?自信を持って臨んだでしょうか?

コンクールで、ステキな演奏に出会ったときは、「頑張ったのだろうな!」と素直に賞賛し、自分に不足していた事を感じ取りましょう!そういうことに出会えることも、とてもすばらしいことで、心と演奏のための栄養を得られはずです。

たくさんコンクールがある中での選択の仕方ですが、毎年、自分の成長を見るためのコンクールとして同じものに出る、そして、少しレベルの高い課題曲のものにトライすることも、自分を高めるためには必要です。こだわって、ショパン、モーツアルト、バッハなどの作曲家別のコンクールも、その目的がはっきりしていますので、磨かれると思います。

一方、自由曲のコンクールもあります。自分が得意で、今トライしている曲を評価していただくためには有効だと思います。少しレベルの低い課題曲のコンクールは、基本的なことを確認する場になります。

ただ、一年中コンクールに追われてしまう事のないように、上手に選択しないと、基本的な事がおろそかになるかもしれません。

庭の紫陽花の色が濃くなってくる頃、ピティナ・ピアノ・コンペティションの予選が始まります。私の指導者としての成長をさせてもらったコンクールです。一年間の子供たちの日々の成果が出ます。

課題曲は、選考委員の先生がかなりの時間をかけ議論し、決定してくださっているため、とても信頼が置けます。その学年で弾ければよいという目安になります。4期にわたっていますので、歴史や作曲家の勉強も出来ます。

そして良い曲が多く、子供たちと演奏をする事が当日楽しめるよう、寸前まで、もっと良くならないか?もっと良い音で弾けないか?思案し続けます。

 

結果ではなくその過程に価値があり、この期間で、大きな成長をする子供たちを見る事ができ、とても楽しいです。母親のような気持ちになってしまい、たくさんの子供が弾くたびに一喜一憂。緊張し、祈り、たいへんですが。(笑)

そして、続けていると必ず上達するとともに、履歴という形で、勲章として残っていきます。その足跡を見て、本当に価値のあることを親子で頑張ってきたな!と思えるのがコンクールです。努力に見合った勲章が残っていくとよいですね。

「予選出るだけでは、履歴にならないよ!」とこの時期発破をかけます(笑) さまざまのコンクールを通して、人間的にも、音楽的にも成長して欲しいと心から願っています。コンクールの有効利用を是非お試しください。

★エピソード

2年前のことです。コンペ寸前、あまりに紫陽花がきれいで、皆にも、純粋にきれいなものにあこがれて欲しいのと、頑張ったご褒美のつもりで、たくさん抱えてレッスンに行きました。皆に渡したつもりが、忘れてしまった人、渡し損ねた人、最後に余ったのを全部もって帰った人!がいました。

不思議ですね!紫陽花をもらった人は全員予選通過。もらい損ねた人はだめでした。最後に抱えて帰った人は、最高点でした!恐ろしいけれど本当の話です。コンクールとは、運もつき物かも!

でも、怖いので、紫陽花を配るのはその年だけにしました。(笑)


池川 礼子(いけがわ れいこ)

武蔵野音楽大学ピアノ専攻科卒業。武田宏子氏・吉岡千賀子氏に師事。バスティン・ メッソードの講師として全国各地で講座を行う一方、地元鹿児島ではピアノ指導法研 究会を主宰。生徒育成においては、ジュニア・ジーナ・バックアゥワー国際コンクー ル第2位輩出のほか、長年にわたりピティナ・ピアノコンペティションにて高い指導 実績を全国にアピール。特に1999年度は、ピティナ全国決勝大会のソロ・デュオ・コ ンチェルト部門に計7組の生徒を進出させ、ソロF級で金賞、コンチェルト初級で優 秀賞などを受賞した。導入期から上級レベルの生徒までまんべんなく育て上げる指導 法は、全国のピアノ指導者の注目の的となっている。ピティナ正会員、コンペティシ ョン全国決勝大会審査員。ステーション育成委員会副委員長。

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