2015ショパンコンクールレポート

ショパン国際コンクール(24)学びは深まっているー審査員ポヴウォッカ先生

2015/10/20
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審査員のエヴァ・ポヴウォッカ先生(ポーランド)に、ショパンの学び方が10年前と変化しているのか、マズルカとの向き合い方などについてお伺いしました。


―今回、どのような心境でご審査されていらっしゃいますか?

審査員を務めるのは2005年以来ですが、若いいピアニストの素晴らしい音楽を聴かせて頂き、そのうち何人かは強いパーソナリティを見せてくれました。仕事として審査席に座っているのではなく、若い仲間たちを聴かせて頂いているという心境です。

―この10年でショパン作品の学び方は発展したと思われますか?ショパンの精神は演奏に反映されていますか?

2005年コンクールよりもさらにショパンの精神が表現されていると思います。特にこの10年間、ピリオド楽器で演奏したショパン作品の録音機会が増えたこともあり、ショパン当時の楽器特有の音色を聴いたり感じ取ることができます。現代ピアノとは奏法も異なりますし、そこからインスピレーションを得ることができますね。(※ショパン・インスティチュートでは、1849年製エラールと1848年製プレイエルで、ショパン全作品を録音するプロジェクトを行った。"The Complete Works of Fryderyk Chopin on historical instruments"

またコンクールはプログラムを自由に選べるので、そのピアニストがどんな価値観やパーソナリティを持っているかを知ることができます。

―解釈についてはいかがでしょう。以前よりも自由な解釈は増えているでしょうか。またご自身でもインスピレーションを得られる演奏はありましたか?

いつでも何人かは自由な解釈がありますね。先生や両親の影響であったり、彼ら自身の考えに基づくものもあります。私自身がインスピレーションを得た演奏もありました。

―ファイナリスト10名が決まりました。1次・2次予選の評価も加味しましたか?

ええ。ずっとそのピアニストをフォローして聴いているので、記憶を閉じることはできませんね。

―ポヴウォッカ先生のマズルカの演奏が印象に残っています。マズルカが難しいという人も多いですが、この作品に向き合う時には一番大事なのは何だと思われますか?

愛、ですね。マズルカへの愛とは誠実さ。まず楽譜を誠実に読み、アーティキュレーションを考え、その上で、自分自身がどう感じるかは自由です。


菅野 恵理子(すがのえりこ)

音楽ジャーナリストとして各国を巡り、国際コンクール・音楽祭・海外音楽教育などの取材・調査研究を手がける。『海外の音楽教育ライブリポート』を長期連載中(ピティナHP)。著書に『ハーバードは「音楽」で人を育てる~21世紀の教養を創るアメリカのリベラル・アーツ教育』(アルテスパブリッシング・2015年)、インタビュー集『生徒を伸ばす! ピアノ教材大研究』(ヤマハミュージックメディア・2013年)がある。上智大学外国語学部卒業。在学中に英ランカスター大学へ交換留学し、社会学を学ぶ。一般社団法人全日本ピアノ指導者協会勤務を経て現職。2007年に渡仏し「子どもの可能性を広げるアート教育・フランス編」を1年間連載。ピアノを幼少・学生時代にグレッグ・マーティン、根津栄子両氏に師事。全日本ピアノ指導者協会研究会員、マレーシア・ショパン協会アソシエイトメンバー。 ホームページ:http://www.erikosugano.com/

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