【実施レポ】音楽総合力UPワークショップ2016 第1回 多喜靖美先生

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2016/04/28
  • 第1回
  • 2016年4月20日(水)
  • 多喜 靖美先生
  • コンクール当日までじっくり付き合う「課題曲」
  • 坂かず先生

やわらかな春の日差しの中、2016年度の音楽総合力upワークショップが始まりました。第1回の講師はピアニストの多喜靖美先生です。チェロの西牧佳奈子先生もアンサンブルのためにいらしてくださいました。

コンクールに参加することで同時に4期の作品を学ぶことはたいへん有意義なこと。長く取り組む課題曲をより楽しく学ぶ方法をA2級からC級の曲を取り出しご紹介くださいました。多喜先生が「詩を読むとき品詞に分けて文法を理解しないと味わえませんか?それと同じで音楽もアナリーゼありきではなく、メロディーを心から感じることがとても大切。私のアナリーゼ特集の中での担当曲はこれまでの概念とは少し違うアプローチかもしれません」とおっしゃる通り、多喜先生のアンサンブルを取り入れたアイディアはとても新鮮に感じられました。こちらでは、その中のいくつかをピックアップしてご紹介したいと思います。

A2級「ハ長調のエコセーズ(バスティン)」はチェロとのアンサンブルを聴かせていただきました。チェロの深みのある音が入ることで曲が一瞬にして立体的になります。普段のレッスンではピアノの低い音域を使って合わせることができます。子供と合わせるときには一方通行ではなく、どちらがリードするかをその場のやり取りで見極め、その子に必要な要素を判断し色々試すこと。舞台の上でひとりごとを言っているような奏者にならないようこの時期から意識して育てます。
A1級「うた(メラルティン)」はチェロ、鍵ハモ、ピアノでのアンサンブルを聴かせていただきました。この曲はシンプルゆえに小さな子供にはテンポキープが難いが、メトロノームに合わせるのとは違い人と一緒に奏でることで「気持ちの良い波に乗る体験」をさせることが効果的だというお話でした。
B級からは「アリエッタ(ハイドン)」と「朝の祈り(チャイコフスキー)」。まさに弦楽四重奏で「ハモる」ことを勉強できる良い教材です。歌でも楽器でも誰かと一緒にハーモニーを作ることはとてもうれしいこと。だがピアノという楽器は簡単に和音が弾けるので鍵盤上で何気なく作っているたくさんのハーモニーに改めて感動することが少ない。このお話には会場の先生方も大きく頷きます。そして一度に多くの音を扱うとどうしても動いている方の音へ気持ちが傾きがちですが、むしろ長い音符を耳で追っていくこと。刻一刻と変わっていくメロディー同士の関係を聞きながら美しいバランスを求める感覚を大切に。
同じくB級「カプリッチェット(ギロック)」ではリズムからのアプローチ。曲に現れる4つのリズムパターンを身につけ、より生き生きとした音楽を作っていく。最後のパッセージについても興味深いお話がありました。楽譜の臨時記号を付け替えたり、もっと素敵な音を探したり、なぜギロックがそう作曲したのかを遊びながら考えるというアイディアは楽しいものでした。
C級「前奏曲Op31-1(グリエール)」は4人の先生が各パートを受け持ち演奏しました。1人で弾くとシンプルな曲なのにアンサンブルだと思い通りにいきません。合わせることで「その場のやり取りで作られるリズムの流れに乗ること」、「ハーモニーの響きを味わうこと」の楽しさを知ると同時に難しさも実感する良い経験となりました。

多喜先生は「今やっている曲」に別のメロディーをつければ、そのままアンサンブルを楽しむことができるというお考えから常に別のメロディが頭に浮かび、書き留めているそうです。アンサンブルをすることでソロに立ち返った時にソロの曲がより素敵に思える。「そういう音楽の遊び方となるアンサンブルをここにいらっしゃる先生方も今日から作って生徒さんとぜひ実践してみてください」という言葉でセミナーが終わりました。

受講者インタビュー
池上 三枝子先生(指導者会員)

今日はたくさんの先生方が舞台に上がられて実演してくださって、率直に音楽の楽しみを感じました。私達はパート譜というものを普段見ないので、パート譜を見せられて、初見で弾ける程度の簡単なものであるはずなのに、アンサンブルにすると音楽を作ることが難しくもあり楽しくもあるということを見せていただきました。
普段からアナリーゼを考えレッスンしておりますが、ブロックごとにリズムパターンとしての整理、長い音符を意識して弾くこと、和声を感じフレーズをまとめることなど、いつも感じていることが具体的によくわかった2時間でした。

髙橋 悦先生(正会員)

今年から音楽総合力upワークショップを受講します。以前よりこの講座が気になってはおりましたが忙しく参加は叶いませんでした。今年一年間、充実の講座内容を楽しみにしております。
今日の多喜先生のお話は、とても参考になりました。コンペティションなどでは曲を長い期間、内容深く指導しているうちにどうしても重箱の隅を突くようなレッスンになってしまうこともありがちですが、今日のお話のようにリズムやアンサンブルでアプローチすることにより、生徒へ楽しさが伝わり、理解も深まると感じました。さっそくお話にあった全てを試したい気持ちでワクワクしております。


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