ロン・ティボー国際コンクール レポート

田村響さんインタビュー

2007/10/25

日本人唯一のファイナリスト、2002特級グランプリの田村響さんにインタビューしました。「ビデオはちょっと、恥ずかしいので勘弁してください」と真っ赤になって断られてしまいましたが、音楽への熱い思いを語ってくれました。
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--ファイナル進出本当におめでとうございます。今日は演奏前・演奏中のコンディションはどうだったんですか?

T:ありがとうございます。信じられないです。
今日は、演奏前の緊張は普段と同じくらいだったと思いますが、演奏中は、なかなか集中できなかったですね。
ピアノは基本的に重めなんですが、1次ともまた違うコンディションだったので、ドビュッシーから、何となく音楽に入り込めない自分を感じながら、必死に集中しようとしていたという感じです。ブラームスでも、どんなふうに客席に聴こえているかまったく想像できずに、とにかく音楽に集中しようと努力していました。自分では、精一杯やりましたが、もっとできたかなという思いはあります。

--どんな気持ちで今回のコンクールに臨んだんですか?

T:今回は特に、「音楽」をしよう、と強く心に決めてこのコンクールに入ってきました。コンクールなので、ついそれを忘れがちになり、スポーツのようになったりもするんですが、自分は人から人へ何かを伝える「音楽」をしているんだ、それを絶対に忘れないようにしよう、ということです。
コンクールであっても、審査員の先生方も人間。だから、音楽をすれば絶対に伝わるという強い気持ちをもって演奏するように心がけています。

--発表の場には姿がありませんでしたが?

T:本番が終わって、全て力が抜け、結果発表の場にはいたくありませんでした。演奏終わって、もうだめだろうなという気持ちが強くて…。今回は他の方の演奏もほとんど聞いていませんので、様子も分かりませんでしたし。
ホストファミリーの方が「選ばれてるよ」と連絡を下さったんです。信じられませんでした。
ホストファミリーの方は、「通過したら、シャンパンを開けようね」と言ってくださっていたんです。早速明日からオケとの合わせがあるようなので、今日は帰って少しラフマニノフをさらって、それからシャンパンをいただきたいと思います。

--ファイナルのプログラムは?

T:コンチェルトはラフマニノフ2番です。ソロはモーツァルト(ソナタK.310)、フォーレの「主題と変奏」、現代課題、そして、シュトラウス=ゴドフスキーです。曲数は少なめですが、フォーレなど一曲一曲がわりと長いので、大変です。フォーレは初めてのレパートリーになります。

--今はどちらで勉強されているのですか?

T:ザルツブルクに2年ほどいます。日本との往復なので、住んでいるのは実質1年くらいです。こちらでついているリースケ先生は、地味な感じもしますが、正統派で、自分の音楽にとても合っているのを感じます。音楽を大きく捉え、少し緩んでいたピントを合わせてくれるんです。音楽の大きな見方、そこに自分をどう入れていくか、頭が整理されていくのが分かりますね。
もうしばらくは、ヨーロッパ、特にドイツやフランスに住んで、作品が生まれたその場の空気を感じてみたいと思っています。まず、その空気に触れることに、自分ではとても興味がありますね

--最後にファイナルへの抱負を。

T:ファイナルまで2日間あきますが、とにかく自分の音楽を集中して出しきれるように、必死に練習します。練習を万全にした後は、あとは神様に託して、とにかく音楽を伝えるという、それだけを考えて、一人ひとりの心に語り掛けたいと思います。

--ありがとうございました。ファイナルの演奏も楽しみにしています。

※とにかく「僕がやっているのは【音楽】」、そう繰り返す姿がとても印象的でした。ファイナルでも素晴らしい演奏が期待されます。

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今回、会場に日本を代表するピアニストだった故・園田高弘先生の義理のお嬢様がずっと足を運んでいらっしゃいます。田村君は、2002年、第18回園田高弘賞ピアノコンクールの第1位。この回で園田賞コンクールは幕を閉じましたから、最後のグランプリです。

「生前、園田は、自分の最晩年に田村君と出会えたことを、本当に嬉しそうに話していました。それで安心したのか、その後1年半くらいで亡くなったんです。ですから、私は園田の代わりに、田村君の演奏を見届けたいと思って、足を運ぶようにしています。この結果を、園田も喜んでくれていると思います。」
「当時は高校生で愛知に住んでいたということもあり、なかなかゆっくりお話を伺うこともできなくて、今思うととても残念です。でも、天国で見守ってくださっているはずなので、先生にも届くように、自分の音楽をしたいと思います」(田村君)


ピティナ編集部
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