ルイのピアノ生活

第69回 信頼/F.メンデルスゾーン:「信頼」

2008/08/15
♪ 演奏
F.メンデルスゾーン:「信頼」  動画 動画:(3,12s)
 

この前にある生徒が今回のメンデルソーンの「信頼」をレッスンに持ってきました。無言歌集の中でもどちらかと言えばあまり目立たない存在で、素通りしてしまいそうな小曲です。とても久しぶりに聴く「信頼」でしたが、「こんなに良い曲だったっけ!?」というのが正直な感想でした。道端に咲く小さな花が空を見上げて祈っているような美しい曲ではないでしょうか。実際この曲は大昔に弾いた事があると思いますが、当時は・・・自分で弾いたかどうか覚えていないくらいですから、たいして感動もしなかったはずです。みなさんはこんな経験はありませんか?

久しぶりに人と合った時、似た感じを味わった事があります。
こんなことがありました。2年前に10年ぶりに学生時代の知り合いとほとんど偶然な状況で再会ました。短時間でしたが、学生当時の話など楽しく言葉を交わしました。その人の活躍の様子がうれしくて、またその人も僕の活動を応援してくれて、これからもお互いにがんばろうね、と握手をして別れましたが、とても気持ちが通じ合うのを感じました。「こんなにいいやつだったっけ!?」と、「信頼」を聴いた時と同じ気持ちでした。

親友のように長年に渡って気の合う人もいるが、ある時期気が合わなくても、時間を経て気持ちが解り合えるようになる人もいると思います。
人の場合は相手が変わったか、自分が変わったか、その両方なのか分からないですが、音楽の場合は曲は同じですから、自分の中の何かが変化したということになるでしょう。

ずっと前から「近く」に感じる作曲家がいます。私の場合には特にバッハやシューマンかな・・・?子供の頃に彼らの音楽を初めて聴いた時、以前から知っていたように違和感無くすっと入ることができました。まるで初対面なのに「初めて」会った気がしない人のように。その作曲家と自分の考え方、感じ方が似ていたのか?理由はわかりませんが、何か心に通じ合う部分があるのでしょう。人によって作曲家は様々でしょうが、音楽をやっている多くの人達には理解してもらえると思います。こんな作曲家は「心の親友」のような存在ですね。

でも、特に「今の自分」と気が合う作曲家や曲もあると思います。人生を通してずっと付き合うかどうかは分からないですが、今だけ通じ合える曲。本質は違ってもその 作曲家がその曲を書いた時と、自分の現在の心理状態がリンクしているのでしょうか?もしかして僕にとって今回の「信頼」はそんな曲かも知れません。

ピアノの最大の楽しみのひとつは、ピアノの前に座って音楽を書いた作曲家と「お友達」になることだといつも感じます。
作曲家(や曲)と自分の「つながり」はとても大事です。楽譜を見ながら、音を弾きながら、「この和音はシューマンが驚いたのかな、家族に囲まれて平和を感じているのかな、でもここでは絶望してしたに違いない・・」等々、近づこうとする事が大切だと思うのです。第三者=ピアノの先生や親、自分以外の誰も入り込めない「つながり」を持とうとする事は、作曲家(曲)と自分の間の信頼感を育ててくれます。この「信頼」を感じれば、音楽は一生の親友になります!

それでは。

ルイ・レーリンク


ルイ・レーリンク

オランダ出身。7歳からピアノを始め、15歳で音楽院入学。アムステルダム・スヴェーリンク音学院に於いてW・ブロンズ氏他に師事する。1996年音楽活動の為、日本に移住。「肩の凝らないクラシック」をモットーに各地で通常のコンサートから学校や施設のコンサート、香港等海外でも公演。九州交響楽団との共演、CD「ファイナルファンタジー・ピアノコレクションズ9」の演奏と楽譜監修を行うほか、CD「夢」をリリース。個人/公開レッスンや音楽講座を行い、ピアノ・音楽指導にも意欲的である。洗足学園音楽大学非常勤講師、洗足学園高等学校音楽科講師として、「演奏法」の授業 、演奏家を目指す生徒のための「特別演奏法」の授業、ピアノレッスンを受け持つ。

NHK/BSテレビ「ハローニッポン」、「出会い地球人」
TBSテレビ「ネイバリー」、TBSラジオ「大沢悠里のゆうゆうワイド」他出演。

ピアノ演奏法のページ : http://www.senzoku.pianonet.jp も作成中
演奏者のホームページ http://www.pianonet.jp

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