ルイのピアノ生活

第08回 ブラボー/曲:ベートーヴェン「ピアノソナタ作品109」 

2005/10/11
♪ 演奏
ベートーヴェン「ピアノソナタ作品109」
動画 第1楽章 (4m48s)動画 第2楽章 (2m50s)動画 第3楽章 (10m27s)
 

ブラボー!
この言葉は時々コンサートで聞きますね。演奏家のエネルギーや音の緊張感で、音楽が段々盛り上がりますと、ホールの中で聴いているお客さんが段々興奮します。大きな山が噴火する前のように音楽に段々迫力がでてきて、演奏家がもっと速く、さらにもっと強く弾きますと最後は爆発ような音で山が噴火します・・・ブラボー!

私も肺の底からブラボーを叫んだ事あります。ホロヴィッツが僕の故郷アムステルダムに来た時でした。私はまだ高校生でした。私は彼のコンサートにとても行きたかったので、前の日からホールの外で並びました。そして私は、彼の魔法の演奏を聴いて、とても興奮しました。彼は英雄ポロネーズを弾いた後に、興奮で震えながらブラボーを叫んだ。最高でした!

演奏が悪くても良くても必ずブラボーを叫んでいる人はいますが、私はあれからほとんどあの言葉を口から出せなかった・・・
今日まで・・・・

洗足学園高等学校のミュージカル
「天使にラブソングを」

私は半年前から音楽高校で少し教える事になりました。
私は毎週金曜日に「洗足学園高等学校」でピアノ個人レッスンと、1年生達にピアノ演奏法を教えています。夢をたくさん持っている子供達に囲まれますと、私はとても幸せ気分になります。私は皆、大好きです。彼女達がこれからの人生、すごく幸せになって、素晴らしい人生を送って欲しいです。

今日は学校の文化祭がありました。洗足学園高等学校音楽科の生徒は 毎年ミュージカルをやります。今日これを見て、私はあの懐かしい興奮の気持ちを思い出しました。 彼女達の感動的なパフォーマンスを見て、私はウルウルしてきて、最後に久しぶりに「ブラボー」を言いたかった。 しかし勇気がなくて、心を込めた自分の中の小さなブラボーになりました。本当に皆の素晴らしい演技、ダンス、歌や音楽を見て聴いて、圧倒されました!ホールに集まった2000人の皆さんも感激しました。舞台の上に立って、お客さんにこんな感動や幸せや喜びを与える事ができるというのは素晴らしい事です。彼女達にとって素晴らしい経験になりました。一生忘れられない経験でしょう。一昨年この学校を卒業して、今は大スターになった歌手の平原綾香さんも見に来てくださいました。彼女も在学中に、このミュージカルに主演しました。もしかして彼女も洗足のミュージカルで音楽の喜びを経験して、歌手になったかしら?

ミュージカルは「天使にラブソングを」でした。色々な音楽が出てくるミュージカルです。そしてベートーヴェンの第九からの「喜びの歌」(今風なアレンジ)も歌われた。なぜこのメロディは人間にこんな幸せを与えてくれるでしょうか?たった5つの音(ドレミファソ)でできている旋律です。そして歌詞は:"Alle menschen werden Bruder・・"「すべての人々は兄弟となる、汝の柔らかな翼がとどまる所で」。神様の下で皆は平等、我々人間は一緒です。世界の皆は兄弟のようにつながっています。

実は、ベートーヴェンはこの曲を作曲した時、もうほとんど耳が聞こえなくなっていました。この単純なメロディを口にすると、周りの人たちは笑って言いました。「耳だけじゃなくて、ベートーヴェンは頭まで狂ってしまった!」前からベートーヴェンは周りから変人として見られていました。お行儀がとても悪くて、社交が苦手なベートーヴェンは外見から言うと、とても荒っぽく見えます。伝記を読みますと、こんなような話はとても多いです。例えば、ベートーヴェンは喫茶店で隣に座っている人が気に入らず、その人につばを吐きました。ベートーヴェンの家を訪ねる人は腐った食べ物を出されました。ベートーヴェンが使っている楽器を見たお友達によりますと、ベートーヴェンの荒い演奏のせいで、たくさんの弦が切れていました。このような話を読みますと、ベートーヴェンはとても気が荒くて、激しい、周りを一切気にしない人間に見えます。しかし彼の音楽を聴きますと、違う人間が見えてきます。とてもやさしくて、繊細な人間。そしてなによりも理想家です。世界平和を求めて、人間に幸せになって欲しいと心から願っている作曲家です。

私はベートーヴェンの第九を聴きますと「生きてよかった!」と思います。聴いている内に、椅子に立って世界のみんなに「これを聴いて!」と言いたくなります。

ベートーヴェンは第九とほぼ同じ時期にピアノソナタ作品109を作曲しました。人生の終わりが近づいて来ているをわかっていたのでしょうか、この頃、彼はさらに敬虔なキリスト教の信者になりましたが、同時に作品には「永遠」の雰囲気が漂いはじめます。人生の中で色々な事を経験したベートーヴェンは、ある場所に立っています。後を見ますと過去の幸せや不幸が見えます。足元を見ますと耳で聞こえなくなっ現在の辛い自分が見えます。でも前を見ますと彼を待っている神様、そして「永遠」が見えてきました。最終的には、ベートーヴェンは作品の中で不幸を乗り越えて「人生の喜び」をメッセージにしました。このメッセージが伝わってくると、私は「ブラボー」を言いたくなります。

ベートーヴェンブラボー・・音楽ブラボー・・洗足の生徒たちもブラボーブラボー!

それでは、また!

ルイ・レーリンク





ルイ・レーリンク

オランダ出身。7歳からピアノを始め、15歳で音楽院入学。アムステルダム・スヴェーリンク音学院に於いてW・ブロンズ氏他に師事する。1996年音楽活動の為、日本に移住。「肩の凝らないクラシック」をモットーに各地で通常のコンサートから学校や施設のコンサート、香港等海外でも公演。九州交響楽団との共演、CD「ファイナルファンタジー・ピアノコレクションズ9」の演奏と楽譜監修を行うほか、CD「夢」をリリース。個人/公開レッスンや音楽講座を行い、ピアノ・音楽指導にも意欲的である。洗足学園音楽大学非常勤講師、洗足学園高等学校音楽科講師として、「演奏法」の授業 、演奏家を目指す生徒のための「特別演奏法」の授業、ピアノレッスンを受け持つ。

NHK/BSテレビ「ハローニッポン」、「出会い地球人」
TBSテレビ「ネイバリー」、TBSラジオ「大沢悠里のゆうゆうワイド」他出演。

ピアノ演奏法のページ : http://www.senzoku.pianonet.jp も作成中
演奏者のホームページ http://www.pianonet.jp

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