海外の音楽教育ライブリポート/菅野恵理子

リーズ国際コンクール(18)入賞者インタビュー

2012/09/16
一部ですが、入賞者インタビューをお届けします。
※9月16日14時(日本時間22時)よりガラコンサート中継あり。詳しくはBBCラジオ3へ!

●ルイ・シュヴィーツゲベルさん(Louis Schwizgebel・第2位)

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―この度は第2位入賞、誠におめでとうございます。まずはコンクール全体のご感想をお願いします。

このコンクールは世界で最も有名で難関なコンクールの一つなので、入賞できて大変嬉しいです。

―第一次予選から素晴らしい演奏でした。特に楽譜のディテールへの視点と全体を俯瞰する視点があると感じました。2年前のショパン国際コンクールでも演奏を聴かせて頂いたのですが、ユニークな音楽の捉え方が印象に残っています。今回に向けて、選曲なども含めどのように準備したか教えて頂けますか。

今回は自分がよく弾いている曲から選び、興味深いプログラムになるように組み合わせました。今は主に演奏活動をしていますが、リサイタルのプログラムを考える時は、いつも同じ方向性ではなく、例えば一つのまとまりを考えたり、関連する作曲家を繋げたり、コントラストをつけたりと様々です。プログラムは何度かトライして経験を積むことが大事だと思います。
(曲に取り組む時は)スコアをまずよく見て、その音楽が何を言いたいのかを理解するように努めます。まずはアナリーゼをして、自分の中にしっかり音楽を入れてから弾き始めます。その時は直感も頼りにしているかもしれませんが、いきなり弾き始めるのはよくないと自分では思います。

―常に楽譜に対して客観的でありたいということですね。

はい。特にクラシック音楽はそうだと思います。

―特に一次予選のモーツァルトのソナタでは、オペラの様々な登場人物の声が聴こえてくるようでした。オペラはよくご覧になりますか?

はい。弾く時はオペラを頭の中に描いていますので、そのように言って頂けて嬉しいです。中でもモーツァルトのオペラは最高で、特に『ドン・ジョバンニ』が好きです。

―ホリガーやシュルホフ等、あまり弾かれない曲も上手に組み入れていましたね。

シュルホフはCD録音しています(Aparté制作・Harmonia Mundiより発売)。ホリガーはスイス出身の作曲家で、この曲(Elis)も何度かステージで弾いたことがあります。現代曲は好きですね。

―スイスで長年勉強され、現在はニューヨークにお住まいとのことですが、環境の変化によって考え方等がリフレッシュされた感覚はありますか?また今後のご予定を教えて下さい。

そうですね。ニューヨークは様々なチャンスや出会いも多いですし、音楽家も沢山います。現在エマニュエル・アックス先生とロバート・マクドナルド先生に習っています(ジュリアード音楽院)。今後はCD録音の予定があります。曲目はまだ最終決定していませんが、ソロとオーケストラです。

―楽しみですね!今後ますますのご活躍を心からお祈りしています。


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●ジアイェン・サンさん(Jiayan Sun・第3位)

いつも微笑をたたえ、悠然とピアノへ向かうサンさん。その多彩なテクニックは、ドビュッシーやラフマニノフ、ショパンの前奏曲など小品を並べるという個性的なプログラムで発揮されていた。現在22歳、これからどの方向へ進むのか楽しみだ。

「入賞を嬉しく思います。ソロリサイタルでは小品が多くなりましたが、これは偶然なんですよ(笑)。最後の協奏曲が一番大規模でした」



●アンドリュー・タイソンさん(Andrew Tyson・第5位)

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―おめでとうございます!まずは入賞のご感想と、リーズ国際コンクールへの思いを教えて頂けますか。

自分にとってコンクールは結果やキャリアのためではなく、音楽を真剣に学ぶ機会と捉えています。ですからファイナルのステージに立つことができて光栄でした。自分の音楽を進歩させるために何が必要なのかを学ぶ機会でもあり、また数週間集中して何かに没頭するという経験にもなりました。

―特に第一次予選のベートーヴェンのソナタ「告別」、そしてショパン前奏曲Op.28も非常によく練られた、想像力に富む素晴らしい演奏でした。選曲はどのようにされましたか。

プログラムは自分が好きな曲と、例えばラフマニノフ(協奏曲第3番)のように自分の音楽性を進歩させてくれるもの、等を組み合わせました。現時点では身の丈以上に思えますが、これから先何年も弾き続けていきたいと思います。ショパンの前奏曲op.28はショパンコンクール以来弾きたかったのですが、そろそろ機が熟してきたので今回入れました。この作品は日々印象が変わり、毎日のように向き合えたことを嬉しく感じます。

―想像力の源泉はどこにあるとご自分では思われますか?日々どんなことを心がけていらっしゃいますか。

これは音楽への取り組みの中でも、内面を掘り下げていくものだと思います。皆さんも同じだと思いますが、内なる自分に目を向け、日々の一瞬一瞬に心を留めること。たとえその曲を練習していなくとも、鍵盤から離れたところで、集中してその音楽を考えることも大事だと思います。

―音楽との対話だけでなく、内なる自分との対話ができていた印象がありました。これからがますます楽しみですね!更なるご成長とご活躍をお祈りしています。


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●ショーン・チェンさん(Sean Chen、セミファイナリスト)

セミファイナリストも何名かリーズに残り、ファイナルをしっかり聴いていた。その一人ショーン・チェンさんは、特に第一次予選で独創的なプログラムと演奏でインパクトを与えてくれた。

「現在ニューヨーク(ジュリアード音楽院)で勉強しています。来季からイェール大学で勉強します。また勉強を重ねて国際コンクールに挑戦すると思います」


菅野 恵理子(すがのえりこ)

音楽ジャーナリストとして各国を巡り、国際コンクール・音楽祭・海外音楽教育などの取材・調査研究を手がける。『海外の音楽教育ライブリポート』を長期連載中(ピティナHP)。著書に『ハーバードは「音楽」で人を育てる~21世紀の教養を創るアメリカのリベラル・アーツ教育』(アルテスパブリッシング・2015年)、インタビュー集『生徒を伸ばす! ピアノ教材大研究』(ヤマハミュージックメディア・2013年)がある。上智大学外国語学部卒業。在学中に英ランカスター大学へ交換留学し、社会学を学ぶ。一般社団法人全日本ピアノ指導者協会勤務を経て現職。2007年に渡仏し「子どもの可能性を広げるアート教育・フランス編」を1年間連載。ピアノを幼少・学生時代にグレッグ・マーティン、根津栄子両氏に師事。全日本ピアノ指導者協会研究会員、マレーシア・ショパン協会アソシエイトメンバー。 ホームページ:http://www.erikosugano.com/

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