海外の音楽教育ライブリポート/菅野恵理子

ジーナ・バックアゥワー国際コンクール(7)小林さん等が決勝進出!

2012/06/30
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ジーナ・バックアゥワー国際コンクールのヤングアーティスト部門二次予選を終え、ファイナル進出者6名が決定した。日本の小林愛実さんも通過!ファイナル進出者名と演奏曲目は下記の通り(演奏順・第1楽章のみ)。ファイナルは明日6月30日19時開演(日本時間7月1日午前10時より)。ライブ配信はこちらへ!

-Leonardo Colafelice (Italy, 16) Tchaikovsky No.3
-Aimi Kobayashi (Japan, 16) Chopin No.1
-Bolai Cao (China, 15) Tchaikovsky No.1
-Fantee Jones (USA, 18) Rachmaninov No.2
-Jung Eun Kim (Korea,18 ) Beethoven No.4
-Mackenzie Alan Melemed (USA, 17) Rachmaninov No.2

すでに結果は出たが、ここで二次予選2日目を振り返ってみたい。マッケンジー・アラン・メレメッドさん(Mackenzie Alan Melemed, 17)はじっくり音楽に取り組む姿勢が伝わる演奏が印象的だった。ラフマニノフ「楽興の時」(1・3・4番)はしっかりハーモニーを聴きながら朗々と歌い上げる。ベートーヴェンのソナタ12番も着実に構成を見据えた演奏。一次予選のバッハ同様、細かい部分まで考察の行き届いた音楽へのアプローチが垣間見えた。また残念ながらファイナル進出できなかったが、ジヨン・ムンさん(Ji-Yeong Mun, 16)のシューマン「幻想小曲集」は、1曲1曲への丁寧なアプローチと、作品全体を通しての統一感と目配りが行き届いた演奏だった。決して背伸びせず曲を確実に自分のものにし、他曲にも応用が効く勉強をしていることを伺わせた。

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今回は才能ある若手ピアニストが多く、接戦だったと思う。その中でやはり選曲は重要だと感じた。惜しくもファイナルに残らなかった参加者の中にも、質の良い勉強を積み重ねていると思われる人、応用力のある学び方をしている人、これからぐんと伸びそうな才能などが沢山いた。14歳から18歳はジュニアからシニアへの移行期に差し掛かるが、まだ未知数の部分も多い。潜在能力をどう伸ばしていくのか、様々な可能性を試行錯誤する時期でもある。たとえ結果に繋がらなくとも、海外の音楽仲間との出会いや勉強の方向性を省みる機会として捉え、ぜひ将来に繋げてほしいと思う。
ところでこのコンクール会場では、参加者同志が気軽に写真を撮ったり、お互いにエールを贈り合っている姿をよく見かける。良い演奏を聴いたら素直に褒めるという、心地よい空気が流れている。(写真:ダグラス・ハンフリーズ審査員長より参加者一人一人にCertificateが渡された)

さてここで、現在ドイツ在住ピアニストとして活躍中の福間洸太朗さんより、メッセージを頂いたのでご紹介したい。1997年ジュニア部門6位、2010年シニア部門5位と、両部門で入賞を果たしている。この経験から何を学び、その後につなげたのかをお伺いした。

                      * * * * *

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14歳(最年少)の時に初めて受けたこの国際コンクールは、私の人生において、大きなターニングポイントになったと言えます。
他の参加者が20分も掛かる大作を弾く中、5分ほどの小品ばかりを集めたプログラムで臨んで入賞できたことは、奇跡のようでした。発表後、一人の審査員から「あなたのピュアな音楽性に感動した。将来も 自由で喜びに溢れる演奏を続けてください。」と言われ、自分の中で「プロのピアニストを目指したい」という情熱がわき上がってきたことを、鮮明に覚えています。
そして、何より収穫だったことは、他の参加者の演奏を聴くことで、それまで知らなかった多くの素晴らしい曲に出会えたことと、審査員の先生方の演奏やマスタークラスを聴いて、「感動する音楽」は、演奏者の「人間性」「心持」に根ざしているということを学んだことでした。
近年ジュニアの水準が目ざましく発展してシビアな時代になりましたが、コンクールは自分を表現し客観的に見つめる最良の機会と考えて、結果を気にせず素晴らしい音楽体験をして次のステップに繋げてもらいたいなと思います。


菅野 恵理子(すがのえりこ)

音楽ジャーナリストとして各国を巡り、国際コンクール・音楽祭・海外音楽教育などの取材・調査研究を手がける。『海外の音楽教育ライブリポート』を長期連載中(ピティナHP)。著書に『ハーバードは「音楽」で人を育てる~21世紀の教養を創るアメリカのリベラル・アーツ教育』(アルテスパブリッシング・2015年)、インタビュー集『生徒を伸ばす! ピアノ教材大研究』(ヤマハミュージックメディア・2013年)がある。上智大学外国語学部卒業。在学中に英ランカスター大学へ交換留学し、社会学を学ぶ。一般社団法人全日本ピアノ指導者協会勤務を経て現職。2007年に渡仏し「子どもの可能性を広げるアート教育・フランス編」を1年間連載。ピアノを幼少・学生時代にグレッグ・マーティン、根津栄子両氏に師事。全日本ピアノ指導者協会研究会員、マレーシア・ショパン協会アソシエイトメンバー。 ホームページ:http://www.erikosugano.com/

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