会員・会友レポート

第4回タイショパン 国際ピアノコンクールの 審査に携わって~レポート2

2018/09/11
第4回タイショパン
国際ピアノコンクールの
審査に携わってレポート2

執筆:土師さおり

レポートその1で書いたように、私は2017年11月に第4回タイショパンコンクールの審査員として招待を受けました。審査と同時に、マスタークラスと演奏会も開催しました。子供たちはとても素直で先生の指示を一生懸命に聞きます。レッスンの共通語が英語なので、先生と生徒がお互いに母国語ではない不自由さはありましたが、熱意のある子供たちばかりで、レッスンはとても有意義な時間となりました。大学生は、高度なテクニックや深い音楽性を持った学生が多く、しっかりとした将来のビジョンも持っていて、非常に頼もしいと感じました。

バンコク滞在中の僅かな時間をぬって、私は、ご自宅に大きなホールを持っていらっしゃるナット ヨンタララク先生のお宅を訪ねました。ナット先生はタイでは有名なピアノ教師でありピアニストです。その邸宅は、バンコク郊外の高級住宅地にありました。個人の邸宅とは思えない大きな敷地。お手伝いさんに案内されて、立派なエントランスを貫け中庭へ通して頂きました。そこには噴水や回廊があり、リゾートホテルの様です。

少し待っているとナット先生の娘さんがいらっしゃいました。お名前はログタン パラネー ヨンタララクさん。彼女はこのSala Sudasiri Sobha ホールのマネージャーをされています。笑顔がとても素敵なルグタンさん。私達はメールでやり取りをしていたので、すぐに打ち解けて楽しいお喋りができました。ナット先生が帰宅すると、先生のお部屋にお招き頂きました。部屋には、スタインウェイピアノが2台設置されてあり、私はそこで、ナット先生の好きなショパンの作品を演奏しました。少々緊張していた私ですが、気さくなお人柄と、スタインウェイピアノの心地良い音色に包まれて、徐々にリラックスすることができました。

そして、いよいよホールへ案内して頂くことになりました。まず控え室を見学しました。そこには演奏者が宿泊できる設備が整っており、練習ピアノとして、スタインウェイのフルコンが設置されていました。非常に素晴らしい環境です。そして、いよいよホールへ。約200席のホールにはヨーロッパ調のバルコニー席と装飾が施され、もちろんフルコンのスタインウェイが設置されていました。響きの良いホールと、輝きと円やかさを持ったピアノが絶妙にマッチしていて、大変贅沢な空間です。このホールで演奏したアーティストが皆、満足されるのも頷けます。私が訪ねた2日前には、イタリア音楽祭が開催されたそうです。世界各国の音楽家がこのホールで演奏していますが、特に、Sala Sudasiri Sobha ホールでは、才能あるタイ人の音楽家をサポートしたいということで、彼らに無償でホールを提供しています。

ナット先生やログタンさんとのお話の中で印象的だったのは、日本の才能ある若いピアニストに、このホールで演奏してもらいたいと語っていたことです。是非それが実現できるよう、私も協力することができたらと思いました。

微笑みの国タイは、日本から飛行機で5時間程。あっという間に赤道直下の国に到着するのですが、同じアジアでも、その気質や文化は全く異なります。しかし、音楽を愛する心は世界共通で、若い音楽家を育てたいという熱い思いも変わりません。私は今後も、ピアニストとして、東南アジアで演奏活動したいという強い思いがあります。また、ピアノ指導者として、日本と東南アジアを繋ぎ国際交流のお役に立てる日が来ることを期待しながら、邸宅を後にしました。

ホテルに戻るタクシーは、冷房が効いていてとても心地良く、太陽が照りつける外とは別世界です。Sala Sudasiri Sobha ホールと豪華な邸宅を思い出しながら、窓の外を眺めると、活気に満ちたバンコクの街が見えます。屋台もあれば、あまり整備されていない雑多な道路もあります。タイの多面的な魅力とエネルギーを存分に感じることのできる滞在となりました。

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ピティナ編集部
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