100のレッスンポイント

090.音楽性を引き出す言葉かけ

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2011/09/02

前回の「理想の指導者」に「わかりやすく伝えるという」という意味の事を書きました。たとえ話などで、伝えたい事を相手がわかる言葉に置き換えることは、とても大切だと思います。

ある箇所を、その部分にふさわしく音楽的に弾かせたい時、楽器の音色のことや、お話に例えて、「男の人や女の子の感じ」などという例えで、簡単に音楽が変わる事がよくあります。

そこで、音楽性を引き出す、言葉を挙げて見たいと思います。

◆ 楽しい表現をしたいとき
わくわくしない?
ウキウキ、ルンルン弾きたいね
飛び跳ねるくらい元気に
踊るように
天にのぼるくらい喜びを持って
100点を取った時の嬉しさのように
犬がクルクル舞いしているような気分で
心が弾んでる?
◆ のびのびとした表現をしたいとき
広い野原の真ん中で、背伸びしているように
海の向こうまで広がっている気分(レッスン室から海が見えます)
この部屋だけで聴こえるのでなく(遠くに見えている)海のところまで飛んでいく音で
◆ 堂々とした太い音
ドイツのビール腹のおじさんの音
太い気の根っこのしっかりしているような音
◆ 華奢な繊細な音
色白な細い人のような感じ
透明な澄んだかき氷のような感じ
細いガラス細工のような音
◆ はっきりした音
キラキラした音
宝石のような音、ダイヤモンドのような音
輝いた音
冷たい水が一滴肌に当たったような音
クリスタルブルーな音
星の光のような音
◆ ドルチェの音
チョコレートが溶けるような音(今井顕先生から聞いた言葉)
とろけるような甘さ
やさしく犬をなでてあげるような気持ち(びっくりさせると噛み付く)
柔らかい絹のスカーフのような音(あなたのは木綿のハンカチ)
ねばねば納豆が指先についているような感じ
◆ 悲しい表現をしたいとき
涙がでそう?
しっとりと
歩けないほどの悲しさで
足が上がらないほどの絶望感で
悲しみの深さが地の底くらい
命の絶えるような悲しみで

まだまだたくさんありますが、自分の弾いている時も「ここはこんな感じかな?」と想像して音を出してみると、それなりに変化してくるはずです。

指導者も、表現が足りないと思う時、抽象的なことを伝えたい場合でも、他のこと、日常のちょっとしたわかりやすい言葉で置き換えてあげると、生徒の音が変わると思います!


★エピソード

先日、ヤシンスキー先生のお話を聴きました。感動感涙!!
モーツアルトとショパンについてのお話でしたが、二人は共通して「うたうこと」に興味があったと言われていました。モーツアルトを、たくさんの解説してくださり、「わっはっは!」とオペラの笑い声のようにとか「天国のようなものを感じる」といったお話しをしながら、その言葉どおりの音で弾かれました。イマジネーションを膨らませて弾く事が大切だとおっしゃいました。

「作品を理解する時、音楽家としてではなく、その前に、ふつうの人間として理解しようとします。オーケストラの色々な楽器が出て来ていると思う時、それは、庭に色々な鳥が来ているような感じにも思います。」

2時間のセミナーの間じゅう、とてもお元気で、幸せそうに喜びをもって弾かれていました。「ピアノってこんなに楽しいよ!」という気持ちがあふれ、まるで、おしゃべりしているようなピアノで、幸せも伝わってきました。


池川 礼子(いけがわ れいこ)

武蔵野音楽大学ピアノ専攻科卒業。武田宏子氏・吉岡千賀子氏に師事。バスティン・ メッソードの講師として全国各地で講座を行う一方、地元鹿児島ではピアノ指導法研 究会を主宰。生徒育成においては、ジュニア・ジーナ・バックアゥワー国際コンクー ル第2位輩出のほか、長年にわたりピティナ・ピアノコンペティションにて高い指導 実績を全国にアピール。特に1999年度は、ピティナ全国決勝大会のソロ・デュオ・コ ンチェルト部門に計7組の生徒を進出させ、ソロF級で金賞、コンチェルト初級で優 秀賞などを受賞した。導入期から上級レベルの生徒までまんべんなく育て上げる指導 法は、全国のピアノ指導者の注目の的となっている。ピティナ正会員、コンペティシ ョン全国決勝大会審査員。ステーション育成委員会副委員長。

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