100のレッスンポイント

069.楽しいことには興味を持ち、身に付く力も倍増する

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2011/04/08

遊んでいる=(実は)学んでいる感覚で、導入期の子供たちがピアノを楽しく学んでいることを前回お話しましたが、それは導入期に限ったことではありません。

子供も大人も、楽しいことには興味を持ち、身に付く力も倍増するものです。
ピアノを弾くこともレッスンを受けることも「楽しいこと」になればよいですね。

「ピアノを弾くこと」=「音楽をすること」は本来、当たり前に「楽しいこと」です。皆さん「ピアノが弾けたらいいな!」と思って習いにきます。最初は、本人ではなく親の願いから始まることもありますが、習うのは本人ですから、本当に「嫌なもの」は習えないはずです。

そして、初めは弾けなくとも、1年もしない間に楽譜が読めるようになり、指が動き、知らず知らずに弾けて来くる。
弾けなかったことが弾けるようになる。紙に書いてある音符が、音として生まれてくる。そんな体験は、どんなに簡単な曲の場合でもすばらしいことです。これはとても楽しいことのはずなのですが...

もし「弾きたくない」時があるとしたら、その原因は、たいてい「練習がめんどうくさい」とか「弾けない」からです。近頃、元気なはずの小学生の子が「面倒だからしたくない」とか「疲れる!」などと言うことが多くなっています。

将来が非常に心配です。
たくさんの習い事や学校行事で時間がないのは確かです。でも「弾きたい」なら、時間を作るはずです。是非「楽しくてたくさんの曲に出会いたい」という気持ちになって欲しいものです。

そのための工夫として、まず、面倒な練習はなるべくしないでよいように(実は上達するには面倒な練習も必要ですが)してあげます。
「弾けない」原因を明らかにして、弾きやすい方法を教え、楽しく簡単に続けられるよう導きたいと思っています。

原因が読譜力にあるなら読譜力を高める練習を(読譜のポイントを参照してください)、テクニック力にあるならそれを高める練習を(テクニックのポイント参照)、楽しいものにしていくのが良いと思います。

子供には、やはり楽しく数をこなしていくことが必要です。
ちょっとしたご褒美も有効かもしれません。

習得するために、ある部分を繰り返し練習する場合、目標を持つとよいです。
「3回弾こう」「1分弾こう」など。

「3回弾こう」の場合は、ミスした時点でカウントしないようにします。
ですから、3回で終わる場合もあれば実質的に20回くらい練習する場合もあります。

それでも目標があるので、生徒たちは必死でやります。
間違えては、「ぎゃ!」などといって楽しんでいるようです。

面倒な部分練習を楽しいことに変えることで、集中させることができます。目標達成した時には必ず、上達しています。

数をこなすには「400マス」も有効です。
1回弾くと、一マスを塗りつぶしていきます。
400マスのシート全部が埋まると、先生から景品がもらえます。
早くそのシートを終わらせたくて、随分練習時間アップにつながります。
ある時期にはこういうものを使って、楽しみながら達成感を味わうことも必要だと思います。

楽しい曲に数多く出会って欲しいので、弾いた曲数をカウントすることもしています。
100曲がワンシートになっています。
レッスンに来た時に弾いて「合格」になった曲をカウントし、自分でスタンプを押して帰ります。「今日は20曲だった!」「5曲しかなかった」というように、1週間の練習成果も計れるわけです。そして、500曲達成ごとにぬいぐるみがもらえます。

毎日練習して、「弾ける!」ということ自体がとても楽しいことですが、すばらしいことをしているという実感が持てる人は、残念ながら少ないようです。自我が目覚める頃に、ようやく自覚が出来るようです。

その時期までは、家族や周りの方が、ピアノを弾き家に音楽の楽しさがある事を、ステキなことだと伝え続けて欲しいです。どんな子供向けの曲でも、ステキに弾けば心に響きます。それが出来る可能性を高くするために、レッスンに通い学ばせる環境と、共に楽しむ姿勢を持ってくだされば、と思います。

もう一つ。

曲には変化がたくさんあります。その変化に気づき(読譜力)それを演奏に結びつける楽しさを早い時期に知ると、音や音楽に対する興味が膨らみます。そして、その曲の好きなところを見つけさせると、その部分をステキに演奏しようとします。曲に興味を持たせ、その事を楽しいことだと感じるように導くことができれば、練習は「やらされている」から「必然」になり、毎日が楽しくなると思います。


池川 礼子(いけがわ れいこ)

武蔵野音楽大学ピアノ専攻科卒業。武田宏子氏・吉岡千賀子氏に師事。バスティン・ メッソードの講師として全国各地で講座を行う一方、地元鹿児島ではピアノ指導法研 究会を主宰。生徒育成においては、ジュニア・ジーナ・バックアゥワー国際コンクー ル第2位輩出のほか、長年にわたりピティナ・ピアノコンペティションにて高い指導 実績を全国にアピール。特に1999年度は、ピティナ全国決勝大会のソロ・デュオ・コ ンチェルト部門に計7組の生徒を進出させ、ソロF級で金賞、コンチェルト初級で優 秀賞などを受賞した。導入期から上級レベルの生徒までまんべんなく育て上げる指導 法は、全国のピアノ指導者の注目の的となっている。ピティナ正会員、コンペティシ ョン全国決勝大会審査員。ステーション育成委員会副委員長。

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