100のレッスンポイント

054.構成を見ることは大切な読譜

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2010/12/10

曲の始めに出てくるメロディーやモチーフが、どこでふたたびあらわれるか。その時どのように変化しているか?
また、最も盛り上がる部分はどこなのかなど、曲全体の造りを理解することはとても大切です。

音程やリズムを見ることで、同じパターンのまとまりがわかるようになり、それが繰り返されたり、同じ塊のものが2度ずつ上行したり(ゼクエンツ)することもあります。

曲は、無造作にひらめいた音を並べているのではなく、ある一定の秩序にそって書かれていることがほとんどです。
まとまりのあるものを聴く方がわかりやすい。そこで形式が生まれたのだと思います。

形式を考えることで、弾いている人も聴いている人も、先の予測ができたりクライマックスを感じられるのではないでしょうか?

予測が出来るということは、演奏者にとっては、安心して力まず弾けることにつながります。
形式を考えると、同じフレーズを探せるようになりますので、大きくフレーズをとらえるようになります。
大きなフレーズどうしの違い。たとえば同じフレーズの最後だけ違うとか、ハーモニーが少し変わっているというようなことに気づき、より「まとまり」がはっきりし、表現につなげることが出来ると思います。

初歩の段階では、2部形式、3部形式を理解し演奏につなげると良いと思います。
2部形式では、(a-a'-b-a')という形が多く、同じか似ているもの(a、a')と、全く違うもの(b)のキャラクター(性格)の違いを認識し、演奏すると良いと思います。
多くの場合、その差ははっきり分かる事が多いです。性格の違いを演奏できると楽しいですね。

3部形式は、ABAとなりますが、大きなまとまりAとBには性格の違いがかなりあるはずなので、そのことを理解すれば、表現につながるはずです。

ソナチネ形式はソナタ形式を理解する準備として、とても重要な役割があると思います。
ここでは、第一テーマと第二テーマの差をはっきり理解する事が 大切です。
決まりごととして、第二テーマは第一テーマの属調で書かれます(短調の場合は平行調)が、その事を念頭に、転調の為の臨時記号を見逃さず変化の気配を感じ、ガラッと気分を変える準備をします。
第二テーマは色合いも違います(転調しているので)が、性格も反対である(第一テーマが優しいときは、第二テーマは元気生き生きしている等)ことが多く、そのような対比を演奏に活かして提示部を弾きます。
展開部では、そのテーマがどう変化しているのかを楽しみます。
最後(再現部)は第一テーマが戻って来ます。ここでは第二テーマが原調になります。
提示部とは異なる点をきちんと押さえておくと良いと思います。

ソナチネの3楽章に見られるようなロンド形式は、サンドイッチ形式と呼んでいます。何度も出てくる最初のテーマは、何度聴いても飽きない軽快なものが多いです。重く弾いてしまうと「また出てきた」とうんざりするので、軽快に弾くと良いですね。「中身」には、ハムや卵など、違った味のものが入っています。より特徴を生かして弾きたいものです。

形式を読み取ることで、曲がより「生きた」ものに出来ると思います。
そのことをよく学んで、わかりやすく説得力のある演奏になる事を願います!


池川 礼子(いけがわ れいこ)

武蔵野音楽大学ピアノ専攻科卒業。武田宏子氏・吉岡千賀子氏に師事。バスティン・ メッソードの講師として全国各地で講座を行う一方、地元鹿児島ではピアノ指導法研 究会を主宰。生徒育成においては、ジュニア・ジーナ・バックアゥワー国際コンクー ル第2位輩出のほか、長年にわたりピティナ・ピアノコンペティションにて高い指導 実績を全国にアピール。特に1999年度は、ピティナ全国決勝大会のソロ・デュオ・コ ンチェルト部門に計7組の生徒を進出させ、ソロF級で金賞、コンチェルト初級で優 秀賞などを受賞した。導入期から上級レベルの生徒までまんべんなく育て上げる指導 法は、全国のピアノ指導者の注目の的となっている。ピティナ正会員、コンペティシ ョン全国決勝大会審査員。ステーション育成委員会副委員長。

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