レッスン室拝見

第02回 杉本安子ピアノ教室

2002/08/01
《INDEX》
1.生徒さんの演奏をきいて、杉本先生に決めました2.レッスンはまさに手取り足取り3.最後まで諦めない精神を4.人の演奏を聴くことは上達の特効薬!5.更に、国際コンクールの利用法


1.生徒さんの演奏を聞いて、杉本先生に決めました

当協会評議員、演奏研究委員長、運営委員、指導法研究委員を務める杉本安子先生。徹底研究シリーズ、コンペティション課題曲公開レッスン、トークコンサート等の企画、演奏に携わっている。 ピティナ・ピアノコンペティションでは、全国大会金賞を含む入賞者を多数輩出。トヨタ指導者賞受賞。小学生から音大生まで、幅広い年齢層に対する妥協を辞さない指導は一目置かれている。指導者が生徒を連れて一緒にレッスンを受けるケースも多い。近年小学校低学年、大人の指導も試み、更に新たな分野も開拓している。

─ 杉本先生との出会いを教えてください。

山本:私は「良いピアノ指導を受けたい」その思いで指導者を探していた時に、先生紹介のホームページを見て、杉本先生に申し込みました。今は巣鴨のトウオン音楽教室でレッスンを受けています。一度レッスン見学に伺ったのですが、生徒さんが実にしっかりと基礎の整った演奏をされていたのを見て、この先生だ!と確信しました。


─ 森谷さんも、山本さんとおなじくトウオン音楽教室でレッスンを受けられていますね。

森谷:はい。甲府でのコンペティション課題曲公開レッスンで先生にお会いし、その後杉本先生の教室に通って1年が経ちます。普段別の先生にも習っていますが、その先生に勧められて、月3回のペースでレッスンを受けています。


─ 伊藤さんは?

伊藤母:実は近所の同じマンションの方で、先生の生徒さんがいらして、その方はピアノがすごく上手で評判のお姉さんでした。毎年フィリアホールで毎年冬に門下生の発表会を開かれていらっしゃいますが、発表会を見せていただいた時に、すごく感激しました。その後も、そのお姉さんにずっと憧れていましたが、3年越しの想いが叶い、去年から杉本先生のところへ通っています。


─ 菊池さんと木村さんは、洗足学園大学での門下生ですね。

木村:はい。


─ 杉本先生は、音高、音大生をご指導されているというイメージがありますが。

杉本:多岐にわたりますよ。音大を受ける子から一般企業に勤める子まで。自分としては生徒が音大を志望したら、ということを頭に入れて、いつでも対応できるよう、どんな子にも同じ様に教育します。それで将来どうなるかは本人の希望次第ですから。最近は小学校低学年から社会人まで指導しています。




2.レッスンはまさに手取り足取り


山本さんは先生紹介ホームページで杉本先生を希望。仕事とピアノを両立しながら、レッスンに励んでいる。

─ 具体的に杉本先生は、どのようなレッスンですか?

木村:まずはすごく具体的に教えてくださる事と、やっぱり生徒に対する思いやりっていうか、厳しいけど優しさがありますね。懐が深く幅広い。一見厳しそうですが、その厳しさが先生には合っています。


─ 菊池さんは?

菊池:ピアノの具体的な弾き方はもちろん、フレーズ一つ一つについて、情景や場面が思い浮かぶように、弾く曲の作曲者の歴史などを丁寧に話してくれるんです。
さっきのレッスンでも、ロミオとジュリエットの物語に例えて・・・。

木村:上手い上手い、そういうの。臨場感溢れるお話をしてくださるので、イメージがパっと浮かびます。


─ 山本さんはお仕事をもっていらっしゃいますが。

山本:小学生の頃、ここはフォルテ、ここはディミニエンドさせていって...というレッスンを受けながら、生意気ですが、楽譜に書いていない、もっと「深いもの」も教えてもらいたいと思っていました。そのようなことを解決してくださるのが杉本先生のレッスンです。その曲がどのような意図をもって作曲されているのか、より音楽的に表現するための、具体的なテクニック等を、本当に細かくご指導くださいます。
手取り足取り、背中を押し、指をつかんでの指導です。初めて、先生に指をつかまれて、出した音に、これが自分の出した音!?と思ったほど、つやのある音が出て、びっくりし、とても嬉しく思いました。


─ 先生がレッスンされている時、教室の外にも歌声が響き渡っているということがよくありますね。(笑)

山本:そうなんです。(笑)先生の歌ってくださる歌にも、ものすごい「威力」を感じます。先生が良く響く声で朗々と歌って下さると、どんどんリードされていって、音楽がふくらんでゆくんですよ。不思議ですね。


─ 伊藤さん、森谷さんはいかがですか?小学生ですよね。

伊藤:先生の音楽や曲に対する思いっていうのを、全身で表現してる。踊ったり、私が弾いている時に一緒に歌ってくれたり、私に伝わるまで諦めずに教えてくれます。先生には、私がわかったのかわかっていないのか、すぐ分かるんです。レッスンが終わった時には、次に自分が何をしなければならないか、その課題がはっきりして、毎回目標を持てる感じです。

森谷:厳しいけれど、わかるまで教えてくださいます。コンクールに参加していますが、コンクールの曲以外にもツェルニーとかバッハのインヴェンションとかもきっちり教えてくださるので、多いときは7曲くらいやります。


─ レッスンの時も、生徒さんの横にぴったりくっついての指導もありましたね。実際に手を触ったり、例を示してあげたり。

杉本:小学校高学年以上には、言葉で解説もしますが、特に低学年の子などは、直接腕や身体を触ってあげます。あとは踊ったり、足踏みしたり。小さい子には、習うより慣れろで効果的です。




3.最後まで諦めない精神を

─ 先生は積極的にコンクールに生徒さんをお出しになっていらっしゃいますね。

杉本:コンクールという目標を持っていると、日々のレッスンも真剣になります。コンクールはぜひお勧めしたいですね。


─ 木村さん、菊池さんはコンクールをどのように捉えていますか?

木村:何か目的があると、それに向かってやるっていうことだし、特に先生は「最後まで諦めるな!」とよくおっしゃいます。「最後まで諦めなかったら、その先には何かある」そういう精神を感じるから、私たちも最後まで絶対諦めないぞという気持ちですね。


─ なるほど、そういう精神的な面も、先生の力は大きいですか?

木村:ありますね。例えばワールドカップ中はサッカー選手とか、監督の話が多かったんですが(笑)、スポーツ選手とコンクールでの舞台での演奏などの精神的な共通点とかをよく話してくださいます。

?音楽以外のエピソードも豊富なんですね。


─ コンクールから得たことはありますか?

伊藤:先生はコンクールで曲を弾くことは、人と競争することではないと、良くおっしゃいます。たくさんの人が色んな風に曲を仕上げてきて、その中で自分の曲が、聴き手の心にどれだけ響くかが大切なんだってことが今回よく分かりました。

杉本:コンクールに出て、自分の良いところ、悪いところを自らわかってもらいたいです。そして受けるからには、参加することに意義有りと思わずに努力をして欲しいです。




4.人の演奏を聴くことは上達の特効薬!

─ 先生は生徒に人の演奏を聴くように指導されているようで、ピティナのコンペティションや講座などへも、お弟子さんが多くいらしていますね。

杉本:小さい子には難しいかもしれないけれど、人の演奏を聴くことはとっても大事なことなんです。生徒にもコンクールに積極的に聞きに行くように勧めています。小学生にも勧めていますよ。

伊藤:コンクールというのとは程遠い世界で音楽をやってきましたが、去年先生に「みんながどのくらいがんばっているか、一度見に行ってみたら?」と勧められ、C級の全国大会を見に行きました。

伊藤(母):その夏に先生に出した残暑見舞いのハガキに、「私も来年はあの舞台に立ちたい」と書いたんです。そのくらいみんな同じ年の子が、がんばっているのだと実感したようです。


─ その想いが今年実現しましたね。

杉本: 私は人の上手なところは認めなさい!と教えていてます。コンペティションとか発表会など同じ世代の子の演奏を聞けるなんてめったにないチャンスですからね。また良いところだけでなくて悪いところを見つけることも大切です。ああなりたい、ああはなりたくないと思う刺激を受けるということが大事です。上手いものは上手いと尊敬する環境が大切です。

─ そのことが一番の特効薬ですね。



今年、ピティナ・ピアノコンペティションでデュオ特級最優秀賞を受賞された木村さん、菊池さん。

─ 自分の演奏の良し悪しがわかるには、良い耳が必要ですよね?どのようにすれば育つようになりますか?

杉本:良いものを聴き分ける「ピント」がとても大切だと思います。自分の耳と音楽感を修正しなさいって。コンクールは受かる、落ちるで評価がはっきりとわかりますよね。それで子供たちが良いなと思ったものが入っていけば、ある程度判断も正しいと思えるようになると思います。ピントを合わせてから、さあ練習に入りましょうという感じです。


─ 木村さんは、数々のコンクールを聴きに行ったり、杉本先生のおっしゃることを実践されていますね?

木村:部屋に閉じこもって練習、練習というばかりじゃなく、外へ出て色んなものを聴くと、自分と照らし合わせる部分はあります。良い演奏があったら吸収したい、というような感じでしょうか。


─ 今までコンクールを聴きに行って勉強になったと印象に残っているものはありますか?

木村:やはり日本音楽コンクールです。予選からほとんど全部聴きました。朝から晩までを毎日ずっと聴いてると、何か入り込んでくるというか、染み込んでくるものがありました。 こうなりたいなというイメージが、ずっと聴いている中で生まれてきて、それを家に持って帰って、また練習したりしましたね。


─ 誰が入るかという予想もしましたか?

木村:はい、もちろん!絶対もう確実な人って、予選の時からわかるっていうか。ずば抜けている人は分かるんですけど、微妙なラインは結構分かりづらかったです。


─ 菊池さんもそのような体験はありますか?

菊池:自分とは違う音楽性とかを持っているので、良いところは真似しようとか。それぞれの先生の教え方って違うと思います。
弾きかた一つに対しても違いますし、音の出し方でも、色々な音色がありますね。いろんな人の演奏を聴いていく中で、輝いている音は、やっぱりいいなあ、って思って・・・。


─ どのような指導を受けた演奏か、というのが分かってくるということでしょうか?

菊池:そうですね。なんとなく(笑)


─ 最初からわかりました?

菊池、木村:いえいえ、全然。でも先生がたくさんの情報をくださるので、その中でなんとなくわかってきました。情報をいただけるのは、非常にありがたいことです。




5.更に国際コンクールの利用法

─ 今度ミュンヘン国際コンクール視察に行かれると伺いましたが。

杉本:はい。ショパンコンクール以来なので、とても楽しみにしています。過去にも生徒を連れて行ったことがあります。


─ 杉本先生はどのような視点でご覧になるのでしょうか?

杉本:コンクールは、先生にとっても意義深いものです。他の先生の指導法を勉強できるでしょ。今若い人たちがどのように弾いているか、というものがわかります。確実に私たちの若い頃とは演奏が違ってきていますから。自分の耳のピントも合わせてくることができます。また、特に海外のコンクールでは近現代などの珍しい曲で出場する子がいるから、そういう曲を仕入れて、なるべく多くの曲を知ることが先生には必要です。発見した珍しい曲を、次は自分の生徒に発表会やコンクールで弾かせるんです。


─ 今まで国際コンクールで参考にした曲の中で、良かったと思われる曲を1曲挙げるとすれば?

杉本:カール・ヴァインのソナタですね。アメリカのシンシナティで開かれている、ワールドピアノコンペティションで98年に、ドミトリー・テテリンというロシアのピアニストが演奏した曲です。今年のチャイコフスキー国際コンクールでもテテリンは同じ曲を本選で演奏しています。楽譜を見つけるのも苦労しましたね。


─ 新しい曲を勉強されるのは、先生ご自身にとっても大変なことではないでしょうか?

杉本:そうですね。指導者にとっては新しい曲を教えるのは知識も乏しくて大変だけど、私は好き(笑)。楽しんでやっています。


─ ミュンヘン国際音楽コンクールの報告も楽しみにしております。



ピティナ編集部
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