アンサンブル力を鍛える

第03回 國末貞仁さん(サクソフォーン)

2008/02/12
第3回 國末 貞仁さん(サクソフォーン) 第3回 國末 貞仁さん(サクソフォーン)

ピアノは優れたアンサンブル楽器です。ピアニストの可能性を広げるアンサンブル力とは何かを楽器奏者、歌手、ピアニストのインタビューを通して探って行きます。第3回目は学校クラスコンサートでもご協力頂いているサクソフォーン奏者の國末貞仁さんにお話を伺いました

― サクソフォーン(=サックス)におけるピアノ伴奏者の現状を教えてください。

第3回

そうですね、やはり弦楽器とかに比べると人数が少ないと思います。以前、譜面を見てから伴奏をやるかどうか決めると言われて、一通り見た後に「やっぱりやめとく」と返されたことも(笑)。引き受けてくれる人があまり多くないので、出来る人は重宝がられて、そこに集まってくるという感じですね。限られたピアニストに多くの負担がかかってしまって、一人で9人、10人とか、コンクールの時も大変なことになってましたね。


― サックスの国際コンクールなどでは指定のピアニストがいるのでしょうか?

公式伴奏者がいることが多いです。しかし、公式伴奏者にお願いすると基本的に直前しか合わせができないので、日本から行く場合は誰かを連れてチームを組んで行くことが多いですね。そういう意味でも、ピティナのこの紹介サイトは役立つと思います。いつも頼んでいる人がダメになった時に代わりが見つからない場合もあるので、そういう時にもサックスの伴奏経験がある人を紹介して頂けると助かりますね。


みせて!

― サックスは現代曲が多くて難しそうなイメージがありますが・・

学生のころから一緒に組んでいれば自然とレパートリーは増えると思いますが、例えばリサイタルの時に、サックスの伴奏をしたことが無い人にお願いすると、あたふたすることになると思います。あと時代的に言えば、ピアノのソロでおなじみのショパン、リストなどの時代のレパートリーがあまり無いですね。1920年以降、特にジャズが盛んになった後に書かれた曲が多いので、戦後生まれの曲の方が多いんです。


― そもそもサクソフォーンという楽器はいつ頃から発展したのですか?

サクソフォーンが誕生したのは、19世紀半ばです。ポップス的要素やジャズ的な要素が含まれた曲が多いですね。リズム的にも刻んで和音も複雑なので、今までの時代に無い要素が多く含まれている。慣れない人にとっては「なに、これ」という風になります(笑)。でもこのジャンルが好きな人だと、最初は出来なくても「面白いね」と楽しんでやって下さるので、やりやすいですね。逆に難しいから嫌だという人もいます。


― サクソフォンのという楽器の特徴は?

熱演

まず音量ですが、サックスはヴァイオリンより音が大きいです。ヴァイオリンの方が音は通るのですが、サックスは物理的な音量が大きいので、ピアニストも大きな音を出してくれないと厳しい。結構ガンガン弾く曲も多いので。もう一つの特徴は、円錐形になっているからか、低い音が出にくいです。多分オーボエもそうだと思いますが・・。あとは、移調楽器なので、楽譜の音と実際聴こえる音が違う移調譜なので注意が必要ですね。
楽器は7種類位あります。ピアニストとやるのが多いのはアルトとテナーですね。ソプラノの曲はやや少なく、バスやコントラバスはサックスアンサンブルのみで使います。最近は楽器の進歩に伴って大きな音が出るようになったり、吹きやすく改良されているので、だんだん色んなことができるようになってきています。


― サックスとピアノを合わせる際の難しさは?

第3回

やっぱり拍子が普通じゃないというか、いわゆる現代曲なので、お互いが理解してやるまでが大変。テンポ感や息の吸い方も難しいですね。経験が多いピアニストの方だと、「ここ吸う?」みたいに言って頂いたり、予想してくれたりしますけど、初めての場合はその辺のディスカッションが必要ですね。呼吸をしっかり感じてくれる人、ソロでピアノを弾いているときにもしっかり呼吸をしている人とやるのが一番やりやすいですね。息の吸い方でテンポを感じる、というところもありますから。
僕の場合、サックスから始めたのでピアノのことが全くと言っていいほど分かりません。例えばフレーズ感、拍の感じ方等の基本的なことは、逆にピアニストからたくさん教わりましたね。ピアニストも自分の演奏の一部だと思いなさい、とか、色々言われました。バッハとかそういう時代を知らずにいきなり現代曲から入るので、ピアニストから学ぶことは本当に多いです。


― サックスの曲におけるピアノの役割は?

第3回

伴奏、という感じではないですね。ソナタ的、室内楽的、いわゆる同じレベルで、むしろピアニストの方が音をたくさん弾いているから大変だと思います。とにかく音の数が多いでしょう?多分ソロの曲を演奏するのと同じくらいの負担を掛けてやってくれているんじゃないかな、と思います。


― サックスの有名曲を教えてください。

スタンダードはミヨーのスカラムーシュとか、クレストンのソナタ。途中に間奏があるんですが、難しい。後はドビュッシーのラプソディ、ミヨーやイベールのコンチェルティーノ・ダ・カメラ(室内協奏曲)、ポール・モーリスのプロヴァンスの風景などでしょうか。フランスの曲が多いので、フランス音楽が得意な人にはとっつきやすいと思います。
実は、国内のサックスのコンクールはあまり無いんです。まだクラシックの楽器として認められていないんですね。世界的に見てもレベルが高くなってきているのに、何でだろうと思いますが・・。
今後、サックスと一緒に共演してくれるピアニストの方がもっと増えると良いなと願っています。


― ありがとうございました。


國末 貞仁(くにすえ さだひと)
香川県立高松高等学校、東京芸術大学を経て、同大学院修士課程修了。1996年第13回香川ジュニア音楽コンクールにおいて管弦打楽器部門総合第1位、併せて香川県知事賞受賞。同コンクール受賞者記念演奏会「'96高松テルサ音楽祭」においてグランプリ獲得。第4回若手奏者のためのコンペティション第1位。第22回日本管打楽器コンクールサクソフォーン部門第3位。 これまでにサクソフォーンを西宇徹、須川展也、石田智子、二宮和弘、冨岡和男の各氏に、室内楽を中村均一氏に師事。

◆國末さんの出演するコンサート
北本学校ガラコンサート 2008年3月8日(土) 15:00開演 北本市文化センターホール
詳細はこちら ※終了しました

ピティナ編集部
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