ピアノ曲MadeInJapan

【こどものためのJAPAN6-1】 発表会で弾きたい全音JAPANピース1

2011/06/23
前回の「全音ピアノピース大解剖!」に続き、今回は発表会で弾きたい全音JAPANピースをご紹介します。第一弾の今回は、なんといってもこの曲、平井康三郎作曲「幻想曲さくらさくら」(297番)です!

zenon.JPG 異例の人気曲
ピース日本人作品としては異例の(?)人気を誇る、この作品。なんと、こちら全音ホームページのベストセラーピース30曲にも、「エリーゼのために」や「トルコマーチ」などと共に、ノミネートされています。私も、大学で教えている保育科の学生さんが、「こどもの頃に発表会で聞いて、ずっと憧れていた」と、この曲を弾いてきたことが...!誰もが知るメロディーを華やかにアレンジしたこの「幻想曲さくらさくら」は、特に発表会ではひときわ映える作品と言えましょう!

「幻想曲さくらさくら」とは
作曲家・平井康三郎(1910?2002)氏により作曲されたこの作品は、日本人なら誰もが知る「さくらさくら」を、幻想的にアレンジしたものです。「さくらさくら」は、江戸時代に子ども用の筝の曲として作られたもの(作曲者は不詳)でしたが、そのメロディーの美しさから、明治以降に歌詞が付けられて一般に広まりました。平井康三郎氏は、東京音楽学校でヴァイオリンと作曲を学び、日本音楽コンクール作曲部門で1位を受賞した経歴を持つ作曲家。大学在学中より民謡に関心を持ち、民謡を編曲した合唱曲を多く残していますが、この曲もその流れの中で作曲された作品と言えましょう。華やかな序奏に続いて、原曲の素朴さを保ったテーマが現れ、その後'祭り'を彷彿とさせる中間部を挟みつつ、素朴なテーマが幻想的にそして煌びやかに変奏されていきます。

弾き方のポイント
日本的「もののあはれ」を歌い上げるようなテーマのメロディー、「太鼓のように」と記された中間部の左手リズム、そして曲中何度か登場する「stringendo」のテンポ感...。まさに日本音楽そのもののようなこの曲を、美しく格好良く表現するには、まずは身近にある日本の音楽を思い浮かべながら、思い切り表現してみることが大切です。演歌のようにメロディーを色濃く歌い、和太鼓奏者になったつもりで「太鼓」のリズムを刻む、「stringendo」は拍子木を打つかのようにまっしぐら...!'なりきって'弾くことこそが、弾く人も聴く人も気持ちのよい演奏への第一歩でしょう。

同じ系統のピース作品
同じように日本のうたをテーマとした作品が、全音JAPANピースには他にもいくつか存在します。例えば、同じく平井康三郎作曲「荒城の月の主題による変奏曲」(296番)や、小山清茂作曲「かごめ変奏曲」(316番)、また山田耕筰作曲「からたちの花」(456番)など...。いずれもレベルは、同じく中級のCです。幼い頃に親しんだわらべ歌や、学校の授業で習った日本歌曲を、ピアノ用に煌びやかにアレンジした作品群。これらを弾くことで、またひとつ、ピアノの楽しみ方が増していくことを願います!




須藤 英子(すどうえいこ)

東京芸術大学楽理科、大学院応用音楽科修了。在学中よりピアニストとして同年代作曲家の作品初演を行う一方で、美学や民族学、マネージメント等について広く学ぶ。04年、第9回JILA音楽コンクール現代音楽特別賞受賞、第6回現代音楽演奏コンクール「競楽VI」優勝、第14回朝日現代音楽賞受賞。08年、第8回オルレアン国際ピアノコンクール(フランス)にて、深見麻悠子氏への委嘱・初演作品が、日本人として初めてAndreChevillion-YvonneBonnaud作曲賞を受賞。同年、野村国際文化財団、AsianCulturalCouncilの助成を受け、ボストン・ニューヨークへ留学。09年、YouTubeSymphonyOrchestraカーネギーホール公演にゲスト出演。現在、現代音楽を中心に、幅広い活動を展開。和洋女子大学・洗足学園高校音楽科非常勤講師。
ホームページ http://eikosudoh.webcrow.jp/

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