ピアノ曲MadeInJapan

【こどものためのJAPAN5-2】中田喜直作曲 『こどものゆめ』 中級編

2011/04/14
cyuukyuu.JPG
中田喜直作曲『こどものゆめ』大解剖第3回の今回は、前回の初級編につづき、中級編(「★★」=チェルニー30番前半ぐらい)の7曲を、ご紹介させていただきます!

自然なリズム感を身につける
初級編では、メロディーを歌わせることを重視した曲が多かったですが、中級編では、それにリズム的要素も加わった曲が多くなります。と言っても、現代音楽的な複雑なリズムではなく、例えば4拍子の拍子感であったり、また付点のリズム感であったり...。聞いている人も一緒に体を動かしたくなるような、自然なリズム感を身につける練習といえるでしょう。

メトロノームを活用!
聞いている人も一緒に体を動かしたくなるように弾くには、まず一定のテンポを保つことが大事ですね。そこで、曲をある程度弾けるようになったら、メトロノームを使ってみるとよいでしょう。自分では気付かなかったテンポの揺れを、強制的に直してくれます。ただ今度は反対に、メトロノーム通りで音楽的ではなくなってしまう場合がありますよね。曲を完成させていく段階では、一定のテンポ感を持ちつつ、その均等なビートからはみ出しながらメロディーを歌わせる、というテンポルバートの技術こそが、大切になってくるのかもしれません。

各曲ご紹介
ただ、テンポルバートといっても、なかなか頭で計算してできるものではありません。その点メロディアスな中田作品は、自然にそれを学ぶことができる教材といえるでしょう。一定のテンポ感に留意しつつ、歌いたいところは少しはみ出しても歌ってしまおう!という感じでしょうか・・・。

ここでは各曲を、初級編の《メロディー》と《ハーモニー》に《リズム》も加えて分類し、曲ごとに簡単な解説を書かせていただきました。音源とともに、選曲の参考にしていただければ幸いです!


第9番 おじいさんのワルツ 《リズム》
YouTube.jpeg日本人には難しいワルツのリズム...。'ブンチャッチャッ'という左手を一定に刻むのは、跳躍もありかなり難しいのですが、それを救ってくれるのが「おじいさんの」という題名かもしれません。少しぐらいヨタヨタしつつも、楽しんで踊っている様子が表現できるといいですね。




第11番 右手黒鍵 《メロディー》
YouTube.jpegよりダイナミックな題名が付いていてもおかしくない、ストーリー感のある素敵な曲です。右手のみならず左手も黒鍵が多く、その♭的な優しい音色が、やや民謡風の柔らかいメロディーに乗って流れていきます。スタッカートとレガートを弾き分けながら、細い黒鍵の上でも、美しくメロディーを歌わせていきましょう。




第12番 たのしいワルツ 《リズム》
YouTube.jpeg「おじいさんのワルツ」とは違い、左手の'ブンチャッチャッ'がない、ちょっと洒落たワルツ。一定のリズム型がないなかで、いかに踊りやすく3拍子を刻んでいくかがポイントです。2拍目に休符を含むリズム型の部分は、特に間が詰まらないように気をつけましょう。黒鍵を多く含む、優しい響きの素敵な曲です。




第13番 朝のさんぽ 《メロディー》
YouTube.jpeg時折聞こえてくる中田先生らしい日本的な節回しが、なんとも愛らしい曲。後半には16分音符や半音階も出てきて、少し難しくなりますが、それをいかに美しくレガートで弾けるかがポイントです。朝のさんぽ中に見えてくる、色々な風景を思い浮かべながら弾きましょう。




第14番 元気なおどりとしずかなおどり 《リズム》
YouTube.jpeg付点のリズムが、少しジャズ的な雰囲気も醸し出す、カッコいい曲!4拍子は、クラシックでは1拍目と3拍目が大事とされていますが、この曲では、どちらかというとウラノリ、つまり2拍目と4拍目を強調する方が、素敵に聞こえるかもしれません。最後に出てくる3拍子の部分が、さらに大人っぽさを演出します。




第15番 明るいひざし 《メロディー》
YouTube.jpeg左手の分散和音にのって、右手が大らかに歌います。右手のメロディーが、音数の多い左手に負けてしまわないよう、気をつけましょう。左手にもスラーがついている部分は、右手の半分ぐらいの音量で、一緒にクレッシェンド、デクレッシェンドをしてあげると、美しい弧線が描けます。




第16番 みんなで歩こう遠くまで 《リズム》
YouTube.jpeg4拍子の元気な行進曲!列が乱れないよう、一定のテンポで弾きましょう。メロディーには、スキップをしているかのような付点のリズムが常に出てきます。左手がメロディーの部分は、右手の刻みを軽くして、左手に堂々とスキップさせてあげたいですね。一瞬現れる3拍子の部分は、途中で寄り道でもしているのでしょうか...。最後まで生き生きと、楽しさ溢れる曲です。

須藤 英子(すどうえいこ)

東京芸術大学楽理科、大学院応用音楽科修了。在学中よりピアニストとして同年代作曲家の作品初演を行う一方で、美学や民族学、マネージメント等について広く学ぶ。04年、第9回JILA音楽コンクール現代音楽特別賞受賞、第6回現代音楽演奏コンクール「競楽VI」優勝、第14回朝日現代音楽賞受賞。08年、第8回オルレアン国際ピアノコンクール(フランス)にて、深見麻悠子氏への委嘱・初演作品が、日本人として初めてAndreChevillion-YvonneBonnaud作曲賞を受賞。同年、野村国際文化財団、AsianCulturalCouncilの助成を受け、ボストン・ニューヨークへ留学。09年、YouTubeSymphonyOrchestraカーネギーホール公演にゲスト出演。現在、現代音楽を中心に、幅広い活動を展開。和洋女子大学・洗足学園高校音楽科非常勤講師。
ホームページ http://eikosudoh.webcrow.jp/

【GoogleAdsense】