ピアノ曲MadeInJapan

◇エッセイ「和ピアノへの道」3 現代音楽との出会い

2007/05/01

雅楽への恋心から、13年間続けてきたピアノを辞め、楽理科に転がり込んだ私は、そこで様々な音楽に出会います。古代西洋の教会音楽、アジアや中東の民族音楽、そしてジャズやテクノ、現代音楽まで...。各々に魅力的なそれらの音楽に囲まれて、雅楽への恋心も、ピアノへの拒絶感も、次第に和らいでいきました。


そんな中、ひとつ面白い授業がありました。船山隆教授の"音楽美学"です。「音楽的時間とは...」とおっしゃりかけて、そのまま数分間無言になってしまうような先生の授業は、独特な(時に眠気を催す...)時間でしたが、そこで教わった美学や音楽はとても洗練されたものでした。そして、その授業関連で行ったあるコンサートから、私はその後の進路に関わる決定的な影響を受けることになります。


エッセイ3用

それは"クロノスカルテット"という、アメリカの現代音楽専門カルテットのコンサートでした。同時代作曲家の最新作を、照明やエレクトロニクスを駆使しつつ初演するコンサート。そこには、経験したことのないスリルとかっこよさが満ちていました。そして、その麻薬のような音楽に取りつかれた私は、以後、夜な夜な現代音楽のコンサートに通うようになります。作曲科の友人の作品を初演させてもらう、という活動もその頃から始めました。 

 

現代音楽には、本当に様々なものがあります。かっこいい系、不響和音の嵐系、理解不可能系...etc。唯一の共通点は、各々がそれなりの美学を持ってこれまでになかった音楽を目指している、という点でしょうか。新しい響きに耳が驚き、思考が更新される...、そんな刺激的な体験が現代音楽の魅力かもしれません。


今回の音源「変奏2」は、右手と左手が違う調性で演奏される"複調(ストラヴィンスキーミヨーも使用した技法)"の音楽です。クラシック的に聴けば不協和音の連続...。私にとってはたまらなく魅力的なのですが、みなさまいかがでしょうか?


松平頼則作曲 『盤渉調「越天楽」によるピアノのための主題と変奏』より「変奏2」
(mp3、外部リンク著者ホームページへ)


須藤 英子(すどうえいこ)

東京芸術大学楽理科、大学院応用音楽科修了。在学中よりピアニストとして同年代作曲家の作品初演を行う一方で、美学や民族学、マネージメント等について広く学ぶ。04年、第9回JILA音楽コンクール現代音楽特別賞受賞、第6回現代音楽演奏コンクール「競楽VI」優勝、第14回朝日現代音楽賞受賞。08年、第8回オルレアン国際ピアノコンクール(フランス)にて、深見麻悠子氏への委嘱・初演作品が、日本人として初めてAndreChevillion-YvonneBonnaud作曲賞を受賞。同年、野村国際文化財団、AsianCulturalCouncilの助成を受け、ボストン・ニューヨークへ留学。09年、YouTubeSymphonyOrchestraカーネギーホール公演にゲスト出演。現在、現代音楽を中心に、幅広い活動を展開。和洋女子大学・洗足学園高校音楽科非常勤講師。
ホームページ http://eikosudoh.webcrow.jp/

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