ピアノ曲MadeInJapan

◇エッセイ「和ピアノへの道」2 世にはこんなに音楽が...

2007/02/23

笙 思春期まっただなかの18歳で雅楽に恋し、13年間続けてきたピアノから心が離れてしまった私は、その後、東京芸大の楽理科に転がり込みます。楽理科に惹かれた理由はただひとつ。雅楽のビデオを見せてくれた先生が楽理卒だったから。 そこに行けば雅楽や日本音楽のことをもっと深く知れる、と思ったのでした。

 楽理科は、音楽大学にあって唯一「勉強」を実技とする学科です。日本音楽、西洋音楽、民族音楽、音楽理論、音楽美学、音響学、楽器学...。様々な音楽的知識を洪水のように浴びる日々は、ピアノ一筋に歩んできた私にとって実に新鮮でした。「勉強」に加え、雅楽や小鼓、シタールやガムランなど世界の楽器を演奏する授業もあり、毎日が刺激的!世の中にはこんなに色んな音楽があったのか...と目の前がどんどん開ける思いでした。



 もちろん私は、「日本音楽」の授業に一番気合を入れていました。が、民族音楽や音楽理論など、ご自分の専門音楽について目を輝かせながら語る先生方や、各々好きな音楽にのめり込む友人に囲まれて、私自身の「日本音楽」への頑なな想いも徐々に和らいでいったように思います。拒絶していたクラシックも、世界の音楽の一つとして前向きに捉えられるようになり、ピアノ一筋だったそれまでの自分の人生も、少しずつ肯定できるようになってきたのでした。

 今回の音源、松平頼則作曲『盤渉調「越天楽」によるピアノのための主題と変奏』より「変奏1」は、前回の雅楽風「テーマ」を様々に装飾した艶やかな曲です。雅楽命だった自分が、色々な音楽に触れる中で少しずつ柔軟になっていく様を、私は重ねているのですが...。(つづく)

松平頼則作曲 『盤渉調「越天楽」によるピアノのための主題と変奏』より「変奏1」(mp3、外部リンク著者ホームページへ)


須藤 英子(すどうえいこ)

東京芸術大学楽理科、大学院応用音楽科修了。在学中よりピアニストとして同年代作曲家の作品初演を行う一方で、美学や民族学、マネージメント等について広く学ぶ。04年、第9回JILA音楽コンクール現代音楽特別賞受賞、第6回現代音楽演奏コンクール「競楽VI」優勝、第14回朝日現代音楽賞受賞。08年、第8回オルレアン国際ピアノコンクール(フランス)にて、深見麻悠子氏への委嘱・初演作品が、日本人として初めてAndreChevillion-YvonneBonnaud作曲賞を受賞。同年、野村国際文化財団、AsianCulturalCouncilの助成を受け、ボストン・ニューヨークへ留学。09年、YouTubeSymphonyOrchestraカーネギーホール公演にゲスト出演。現在、現代音楽を中心に、幅広い活動を展開。和洋女子大学・洗足学園高校音楽科非常勤講師。
ホームページ http://eikosudoh.webcrow.jp/

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