ロンドンレポート

バービカンセンターの新体制:クリエイティブ・ラーニング 第1回

2011/08/18
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バービカンセンター外観
バービカンセンターの新体制:クリエイティブ・ラーニング 第1回~音楽院と共同で教育部門

ロンドンの最もメジャーなコンサート会場の一つと言えば、バービカンセンター。ここの教育部門が2009年秋、ギルドホール音楽院と共同して、「バービカン/ギルドホール・クリエイティブラーニング」という組織を新しく発足させた。バービカンにとって、この新しい組織はどういった位置付けになるのであろうか。

--- 情報---
バービカンセンター:(Barbican Centre, Silk Street London, EC2Y 8DS)[地図]
クリエイティブ・ラーニング:The Barbican/Guildhall School Creative Learning Department

総合アートセンター、バービカン

バービカンセンターは、ロンドンにあるヨーロッパ最大の総合アートセンターで、中には1949名収容のバービカンホール、1166席のバービカンシアター、200席のピットシアター、シネマ、2つのアートギャラリー、7つの会議室、2つの展示スペース、公立図書館、レストラン、カフェが入っている。バービカンホールでは、レジデント・オーケストラのロンドン交響楽団の他、世界の有名なオーケストラやアーティストたちが代わる代わるに腕をふるいにやって来る。そこで開催される、年に約3700のイベントへ総計約86万人が、そしてオープンスペースやレストラン、図書館等の機能を利用しに、さらに多くの人々が日々訪れるのである。

センターの構成を見ても分かるように、バービカンセンターの活動は、総合アートセンターとして、大きく音楽、演劇、映画、美術、その他クロスアート的な最先端の現代アートにと大きくまたがっている。各イベント数と動員数、収入の配分は次の通り。

(Barbican annual report: 2009-2010より)
イベント構成(2009-2010シーズン)
イベント数 動員数
音楽(Music) 261 351,217
演劇(Theatre) 333 134,296
美術(Art) 5 169,928
映画(Cinema) 2,860 191,051
教育(Creative Learning) 220 16,453
合計 3,679 862,945
イベント数
イベント数
動員数
動員数
収入
収入


バービカンセンター入口

戦後廃墟となったロンドンの復興の目的で1950年代に構想が始まったバービカンセンターは、1982年3月3日に開館し、間もなく30周年を迎える。シティ・オブ・ロンドン(City of London)により場所の提供を受け、また毎年収入の50%以上の資金的な援助も受けている。収入源としてはこの他、アート関連事業の直接収入に加え、アーツ・カウンシル・イングランド(Arts Council England)その他のトラストや基金、企業や個人の寄付などから資金調達をしている。

アートを支え、新しい価値を付加するのが教育プログラム

2009年秋に発足した新体制:バービカン/ギルドホール・クリエイティブ・ラーニングは、このバービカンセンターに12年前から存在していたバービカン・エデュケーションの部門と、地理的にも隣にあるギルドホール音楽院のコネクト(参照)とが合体してできた組織だ。ギルドホール音楽院のショーン・グレゴリー氏がダイレクター(Director of Creative Learning)として就任し、クリエイティブ・ラーニングの17名のチームが、バービカンとギルドホールの双方の教育活動を運営する。

バービカン・エデュケーション

ギルドホール・コネクト

バービカン/ギルドホール・クリエイティブ・ラーニング


「次世代の国際的アート&ラーニングセンターのモデルを作る」という長期目標を掲げたクリエイティブ・ラーニングは、「音楽、演劇、美術、映画、ダンス、文学というあらゆるアートジャンルに関わる、世界トップクラスの創造的な教育プログラムを開発する」ことを通じて、「新しい聴衆層にアプローチし、アート全体の体験に新たな価値を加えるクリエイティブ・ラーニングの力を証明する」ことを目的としている。

「アートとの生涯に亘る深く長い関係を動機づける」という目標の対象は、広くアーティスト、愛好者、アートの仕事に携わる人、聴衆とそれらの可能性を秘めている全ての人々である。そうした意味で、今ではバービカン全体の中でクリエイティブ・ラーニングは、ただアートプログラムから派生した一部門という意味以上に、「全てのバービカンのプログラムの根底を支えるもの」、という見方をされているのが印象的だ。

―次回は、クリエイティブ・ラーニングの音楽プロデューサーにインタビュー。

取材・執筆:二子千草


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