マズルカを味わう

第08回 マズルカ第8番、第9番(5つのマズルカ Op.7より 第4番変イ長調、第5曲 ハ長調)

2008/02/12

** 第8回 マズルカ第8番 変イ長調、第9番 ハ長調 **

Op.7は2曲の明るいオベレクで締めくくられます。

掛け声と共に速いテンポで渦巻きのように回りながら踊る。
民俗的なメロディーが短い単位で永遠に繰り返される。

 これらの特徴が、地に根ざした民衆的な性格を演出しています。青年ショパンが「自分らしさ」よりも、ポーランドの素朴な魅力をこれまでにストレートに映し出した作品は、他の作品にも以降のマズルカにも見られません。

● 5つのマズルカ  第4曲 変イ長調

 Presto, ma non troppo(1小節=76)
 マズルカの中で、ショパンが指示した最も速いテンポです(Op.6-4とこの作品のみ)。まず40小節間を一気に駆け抜けます。4小節単位のメロディーは途切れることがありません。3連符や8分音符の連続が踊りの回転の速さを表し、それにアクセントを加える符点リズムはスタッカートや前打音、休符を含むなどヴァリエーション豊かに飛び跳ねます。掛け声やカンカンと踵を鳴らす音が聞こえてくるようです。ヘミオラ的(2拍子のように感じる)アクセント(とてもオシャレなFes音を強調!)を持つ左手の和音の連続も手伝って、勢いは増していき宴のムードは最高潮、永遠に踊り続けるかのように感じます。
 すると突然下属調に転調し、dolcissimoからritardandoに。ついにはピアニッシモで幻想の世界へ・・・コラール風なナポリの響きの調和が遠くに聞こえ、一時停止。高速回転の音楽が再開し、あっという間に終わります。終わる直前のフェルマータは、皆の勢いを不意に止めさせて驚きと笑いを誘う、楽団の楽しいいたずらです。

● 5つのマズルカ  第5曲 ハ長調

 繰り返し記号の間をいつまでもいつまでも(senza Fine)演奏し続けるよう書かれている!?たった1ページの譜面からもわかるように、これは演奏会用の作品というよりも、サロンに集まった地元の仲間たちと踊りに興じる際の音楽という印象です。批評家アンドレ・クーロワは「純粋な状態の生の飛躍(エラン・ヴィタル)で、ショパンにあってはひじょうにまれなものである」と言っています。
 ではこの作品を演奏するとき、皆さんはどの小節を持って終わりとすれば良いと思いますか? A.ルービンシュタインは、2回繰り返した後に前奏の4小節をつけて終わらせており、永遠に続く音楽が余韻を残し消えてゆくような録音となっています。私も悩みまして・・・ショパンには大変大変申し訳なく思いますが、今回はハ長調のI度で気分が高揚して終わるように、終止の場所を含め少々アレンジさせていただきました。「生の飛躍(エラン・ヴィタル)」が表現できているでしょうか・・・?
 この作品の演奏方法に関しては様々な意見があると思いますし、時間が経てば私の考えも変わる可能性があります。これからも違うパターンを試奏してみたいと思います。


佐藤 展子(さとうのりこ)

東京音楽大学付属高校、同大学ピアノ演奏家コースを経て、2002年同大学院修士課程修了。在学中、特待生奨学金を得る。1997年モーツァルテウム音楽院サマーアカデミーに奨学金を得て参加、A.ヤシンスキ氏に師事。2000年卒業演奏会、讀賣新人演奏会に出演。ロンドン英国王立音楽院に奨学金を得て短期留学。2001年第25回ピティナ・ピアノコンペティション特級金賞グランプリ受賞。2002年日本フィルハーモニー交響楽団と共演。2004年、2005年アンサンブル信州in宮田と共演。これまでにヤマハ銀座店、越谷にてリサイタル開催。ピアノを神野明、加藤一郎、加藤恭子、播本三恵子、倉沢仁子、C.ベンソン各氏、室内楽を土田英介、迫昭嘉各氏に師事。現在、東京音楽大学ピアノ科助手。ピティナ主催「学校クラスコンサート」、ヤマハ主催「ピアノ名曲コンサート」で活躍中。

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