今月、この曲

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レスピーギ『シチリアーナ』ミュージックトレード社『Musician』2018年1月号 掲載コラム

 今月の1曲はオットリーノ・レスピーギの「リュートの為の古風な舞曲とアリア」から、"シチリアーナ"をご紹介したいと思います。レスピーギは1879年生まれ、1936年没のイタリアの作曲家です。ボローニャ音楽院でバイオリンと作曲を学んでおり、卒業後のキャリアはバイオリニストとして活躍しましたが、その後作曲家としての才能を開花させていきます。特に有名な作品はローマ三部作と呼ばれる交響詩で、ピアノ作品はあまり知られていません。しかしレスピーギの作品は、フランス的色彩感とイタリア的歌の文化が見事に融合した独自の繊細な音の世界があり、とても印象深い作品を数々残しています。

 レスピーギは中世の音楽にも大変関心を持っており、その研究過程でみつけたリュートの為の作品群から選び出した楽曲をオーケストラ用に編曲し、その中から更にいくつかをピアノ版に編曲したものが、計6曲からなるピアノ版「リュートの為の古風な舞曲とアリア」になります。"シチリアーナ"はイタリアのシチリアが起源の作曲者不明の舞曲を基にしています。4分の3拍子、ロ短調で、物悲しい旋律が分散和音で始まり、中間部は主旋律がスタッカートの控え目なオブリガート風8分音符に彩られて進み、だんだんとオクターブへ変化し曲の厚みが増していきます。更に華やかなカデンツァ風音階で高まりまで到達した後は、また静寂の中へと旋律が消えていきます。

 この作品は実は色々なバージョンに更に編曲されていて、室内楽版などは映画やBGMによく使用されていますので、皆さんどこかで1度は耳にしていらっしゃるかと思います。逆に、ああこの曲がレスピーギの作品だったのか! と驚かれるのではないでしょうか。計4ページ、3分ほどの小品で譜読みもしやすく、その旋律は胸の内をとつとつと語りだすような物悲しさがあり、大人の中級程度の方に是非お勧めしたい作品です。

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