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キャサリン・ロリン:「ビーニー動物園」 ミュージックトレード社『Musician』2016年4月号 掲載コラム

 前回は、男の子の発表会おすすめ曲でしたが、今回は、少し大きい生徒さんへのおすすめ連弾曲をご紹介させて頂きます。デュエットゥ「踊る連弾・歌う連弾」(音楽之友社)に入っている「リベルタンゴ」です。
 デュエットゥは木内かなえさん、大嶋ゆかりさんお二人による、連弾・2台ピアノのピアノデュオです。私がお二人のことを知ったのは、本当に偶然で。発表会の連弾曲を探していた楽器店のCDコーナーでふと目に留まって、デュエットゥのCD『いいことがありそう!』を購入したことが始まりです。子ども達がよく知っている曲が素敵なアレンジで並んでいて、トイピアノを使った演奏などもあり、遊び心いっぱいの楽しいCDでした。その後、幸運にもお仕事でデュエットゥとご一緒させて頂く機会があり、すっかりチャーミングなお二人のファンになりました。
 この「リベルタンゴ」は、その時にお二人から頂いた楽譜に入っていて、発表会の時、当時中学生と高校生だった生徒にこの曲でトリを飾ってもらいました。このアレンジは譜面立てに置いたカスタネットを鳴らしたり、タップをしたり、ピアノのボディを叩いたり、演奏者はピアノを弾くと同時に、パーカッションも担当するのです。ノリノリの二人の演奏に小さな子ども達もみんな大喜びでした。
 この二人の演奏を「YouTube」にアップしましたところ、何人もの方から「素晴らしい! どなたのアレンジですか? 楽譜を紹介して下さい」とのメールを頂きました(YouTubeで"リベルタンゴ プチコンサート"と検索するとご覧頂けます)。何と2年半経った今も、まだ問い合わせのメールがあるのには驚きです。
 演奏している生徒二人は、今は教室から巣立ち、一人は東京の音大、一人は付属高校に入学しピアノの専門の道を目指して頑張っています。いつの日か、再演してくれる日が来たらなぁと密かに願っている私です。

 新学期がスタートし、それぞれ新しい学校、学年となり、希望に胸を膨らませる子供たち、ピアノ教室もこの時期は、新しい生徒との出会いの季節でもあります。いくつになっても出会いはどきどきわくわく! この春も何人かの子供たちとの出会いがありました。学校の先生と違い、ピアノ教師と生徒とのご縁はこれから何年、何十年と続くこともあり、その第一歩なのです。
 そんな新しい出会いの中で、ここ数年は男の子の新入会も多くなってきました。もちろん以前から男の子の入会はありましたが、ここ数年特に多くなってきたように感じています。「男の子がピアノなんて」という偏見は、もう過去のものになってきたのでしょう。
 今回ご紹介したいものは、そんなうちの教室の男の子達にも大人気の曲集です。キャサリン・ロリンの「ビーニー動物園」。可愛いワンちゃんが鍵盤に手を置いて、こちらを向いている姿がなんとも可愛らしい。
 「ビーニー動物園」には、まだピアノを始めて間もない男の子君でも、発表会で脚光を浴びるそんなかっこいい曲が満載です。特に「サメ!」という曲は、あの『ジョーズ』のテーマ曲を思わせるような、怪しげなフレーズが繰り返され、思わず惹き込まれて行きます。ピアノの音域を広くたっぷりと使い、演奏効果も高い曲です。
 「ピアノよりも、外で遊ぶ方が好きなんだけどなぁ、練習もあんまり好きじゃないし」と、いつもふて腐れ気味にやってくるR君に、発表会の時この曲を弾いてもらったところ「かっこいい~!」と大好評! それをきっかけにピアノ大好き少年に変身した、そんな思い出の曲なのです。彼はその後、大学受験まで通ってきてくれましたが、何より嬉しかったのは、レッスンに来なくなってからも、彼の家の近所の方から「R君、いつもピアノ弾いていますよ。しょっちゅう音が聴こえて来ます」との報告を頂いたことです。曲との出会いが、その生徒とピアノとの距離をぐっと縮めてくれる、ということもあるのです。
 さてさて私はこの春の新入会の男の子たちにも、手を変え品を変え、時にはおだて時には励ましながら、立派なピアノ男子に育てるべく、励んで行こうと思います!

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