今月、この曲

36
ミュージックトレード社『Musician』2013年9月号 掲載コラム

 最近は作曲家の生後や没後の記念コンサートが花盛り。そして今年は没後50年を迎える「フランシス・プーランク」の年です。彼は風変わりで型破りな曲をたくさん書いていて、あまりに個性的なためにおそらく好き嫌いがはっきり分かれる作曲家の典型だと思いますが、そういう人でも、この「エディット・ピアフを讃えて」を聴けば、きっと好きになるはずです。
 ピアフは20世紀中盤にフランスで活躍したシャンソン歌手です。このハスキーで傷心的な独特な歌いまわしをする魅力的な女性は、当時ポピュラー、クラシックを問わず影響を与えました。あまりに小柄だったため愛称が「小さなすずめ」だったそう。彼女が歌うクラブに足繁く通いつめた熱烈なファンも多かったでしょう。実はプーランクもその一人です。彼は彼女に捧げる曲を書きました。これが『15の即興曲集』より第15曲「エディット・ピアフを讃えて」というわけです。
 曲調はクラシックとポピュラーのボーダー。演奏はなかなか難しいですね。バラバラとよく回る指は必要ないけれど、美しく繊細な和音とシャンソンの歌いまわしができる表現力、そしてペダル(P)の技術です。今にも壊れちゃいそうな「すずめ」の感情を微妙に表すにはこれが不可欠。いくら素敵にメロディーを弾いても、ペダルで濁らせてしまっては台無しですよね。踏むか切るか......というような画一的な踏み方でなく、1/4P、1/2P、3/4P等のハーフペダル。そしてウナコルダ(左のP)の1/2P。オーバーレガートP、ビブラートPなど、響きを聴きながら自分自身で工夫しながら響きを作れば、貴方だけにしかできない素敵な演奏ができるようになるかもしれませんね!

【GoogleAdsense】
ホーム > 読み物・連載 > 今月、この曲 > 第36回 プーランク「エディット・ピアフに捧ぐ」