【実施レポ】音楽総合力UPワークショップ2018 第2回 武久 源造先生

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2018/06/06
音楽総合力UPワークショップ2018 音楽総合力UPワークショップ2017
実施レポート
レポート:村上美紗子先生
  • 2
  • 武久 源造先生(鍵盤楽器奏者)(2018年5月23日(水):開催)
  • 楽曲解釈の新常識・・・コンクール課題曲から「適正律」まで
ジルバーマンピアノの音色を聴いてバッハの奏法を考える
バッハへの疑問

武久先生が「ジルバーマンピアノ」で奏でる平均律。その音色を生まれて初めて聴いた。バロックを感じさせるチェンバロに似た響きを持ちながらも、思いの他、余韻が重なり合っていく複雑さ。

いわゆる「平均律クラヴィーア曲集」とは、ヨハン・セバスティアン・バッハの作品で、原題の"wohltemperierte"には「平均」という意味は含まれず、「良い塩梅」「良い加減」といったニュアンスをもつ。武久先生は近年の演奏会やCD等では「適正律」という訳を採用している。

1730年代、ゴットフリート・ジルバーマンはクリストフォリの発明した楽器を参考に、フォルテピアノを完成させた。ハンマー式で強弱を可能にし、全ての弦のダンパーを一度に取り外す機能もつけられた。バッハといえばチェンバロやオルガンのイメージだが、この楽器とどのように関わっていたのだろう。

私はジルバーマンピアノの音色を聴いて、やはりバッハは難しいと感じた。現代から遡っていけばいく程、伝記も楽器の響きも異世界の物の様で、とても遠くに感じるのだ。どんなに追求しても答えがはっきりしないものを、どう表現していけばよいのか。

バッハの作品を知る

技術を習得するには長い時間と鍛錬が必要だが、情報に溢れた今日の社会において、知識は手に入り易い。ここでバッハの作品について、その特徴を挙げてみる。

  1. 楽譜の指示が少ない

    バッハは教会や宮廷での演奏のために、定期的に作曲をした。ある程度パターン化されていた演奏に、細かく指示を書く必要はなかった。その為、現代での解釈は演奏者に任される。

  2. 複数のパートから成る多声部(ポリフォニー)

    バロック音楽の特徴といえる多声部。複数のパートで曲が形成される。それぞれの声部をきちんと成り立たせるには、とても繊細な技術が必要だ。

  3. ノンレガートとレガート

    バッハの作品が演奏される時、しばしば音を短く切って弾くノンレガート奏法を耳にする。私自身もそう弾いてきたのだが、ある時聴いたCDでは、正反対のレガートで演奏されていた。なぜ奏法が分かれたのだろうか。

対極する二つの奏法

奏法が分かれた理由には、時代と共に変化してきた楽器と、その音色が関わっている。

弦をはじいて奏でるチェンバロ。音はすぐに衰退し、強弱はつけられない。音を切って弾くノンレガート奏法はチェンバロ風の演奏と言える。

もう一つはハンマーで弦を叩いて奏でる現代のモダンピアノ。羊毛に包まれたハンマーによる音の柔らかさと余韻で、なめらかなレガートの奏法が可能になった。鍵盤へのタッチの差で強弱もつけられる。

バロックの響きを意識するか、現代のピアノを活かすかで奏法が変わるのだ。

しかし、奏法に関わるのはこの二つの楽器だけではなかった。もう一つはジルバーマンピアノだ。ノンレガート奏法の根拠となっていたバッハ=チェンバロという考えが覆されるかもしれない。

バッハとジルバーマンピアノ

バッハは1736年にジルバーマンのピアノを試弾したが、その時はあまり良い評価をしなかった為、フォルテピアノを好まなかったとされていた。しかしその後、改良された彼のピアノを認め、1747年にプロイセン国王の前で演奏した事が記録に残っている。適正律の完成した1742年には、既にフォルテピアノのアクションや響きを知っていたかもしれないのだ。

ジルバーマンピアノから見えてきた可能性

ジルバーマンピアノという「新たな要素」が加わることで、演奏の解釈が大きく変わるかもしれない。ノンレガート奏法を選んできた演奏者達は、当時の音色に近づけようとチェンバロの響きを追求してきた。しかしバッハが思い描いていたのは、現代のモダンピアノに近い音色だったのかもしれない。

この事から、奏法を考える上で、曲を書いた年代、作曲家の状況、時代背景などの様々な情報に目を向ける重要性が痛感できた。知識で得たものは、納得のいく奏法を見つける手助けとなるだろう。作曲者を知る事が、曲の深い理解に繋がっていくのだ。

知識と経験が詰まった引き出しから溢れてくる武久先生のお話はジルバーマンピアノと共に豊かに響いてくる。しかしバッハについて深く研究をされている先生でも、まだ分からない事だらけなのだと言う。バッハの音楽は様々な技術が発展していく世の中で、これから解明されていく未来の音楽なのだと。

現代のモダンピアノで弾かれる演奏をバッハが聴いたら、一体どんな反応をするのだろう。何百年もかけて、たくさんのピアニスト達に煮詰めてこられた解釈の広がりに、きっと驚くことだろう。

受講生インタビュー
瀬川順子先生

武久先生のお話されるバッハのエピソードは、豊富な内容でとても参考になりました。適正律以外にも、良い加減律やしなやか律と訳す先生の言い回しや考え方が面白く、また、ヘビや悪魔、愛、イェスキリストを音型で表しているというお話はとても興味深くて、更に勉強していきたいと思いました。


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