今月、この曲

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ウィリアム・ギロック「スターライト・ワルツ」ミュージックトレード社『Musician』2017年8月号 掲載コラム

 皆さんにとって夏の楽しみといえば何ですか? 海水浴、キャンプ、花火、いろいろありますが夏休みはちょっと夜更かしして星空観測もステキですね。昼間の暑さでかいた汗をシャワーで流し、私なら少し早めの夕食をとって、枝豆とよく冷えたコカコーラを持って荒川の土手へGo! ペルセウス流星群が見られなくても、夏の大三角、琴座のベガ、わし座のアルタイル、はくちょう座のデネブ、それにさそり座のアンタレスなどなど。日常のスマホやパソコンから離れて星を眺めていると、時間の感覚を忘れてしまいそうです。

 そんな夏の夜空にちなんで今月選んだ曲は、ウィリアム・ギロック作曲「スターライト・ワルツ」です。ギロックは1917年生まれのアメリカの音楽教育者であり作曲家。今年がちょうど生誕100年となります。子どものピアノ学習者だけでなく、大人の方にも愛される作品集がたくさん出版されていますね。この曲「スターライト・ワルツ」は、楽譜「ギロックの世界」「ギロックベスト レベル4」に収められています。

 曲の雰囲気は軽やかで華やか、思わず身体を左右に揺らしたくなるような拍子感。この曲に物語があるなら主人公は少女でしょうか。まるでドレスの裾がひらっと舞うようなモチーフが繰り返され、少女は憧れの人と踊っているかのようです。途中転調とともにモチーフが変化し、場面は盛り上がり、ロマンチックな気分の高揚に胸がいっぱいと思うと、さらに転調。少し落ちついたトーンで大人の雰囲気を匂わせておいて、テーマの再現、でもやっぱり心は夜空に向かって浮かび上がっていきそう。音域も高くなり最後はくるくるとワルツを踊り続けてfff、フィニッシュ! 楽譜の中からイメージを膨らませて物語を紡いでいく作業はとてもステキな時間です。

 さて、枝豆とビールもとい! コカコーラなんて言っていないで家へ帰ってピアノを弾きましょうか、そして音楽の中で物語のヒロインになってみましょうか。

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