【CrossGiving】活動レポート 逢えてよかったね友だちプロジェクト2015 ~6月7日・岩手県大槌町

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2015/06/17
活動レポート
逢えてよかったね友だちプロジェクト2015
~6月7日・岩手県大槌町

「逢えてよかったね」を大槌町のコーラスの皆さんと合唱!

2011年3月11日―忘れることのないあの日。今年デビュー25周年を迎えるピアニストの小原孝先生は、翌12日に「逢えてよかったね友だちプロジェクト」を起ち上げ、急遽レコーディングしたCDの売上で被災地に楽器や楽譜を届けたり、2013年からは被災地で無料コンサートシリーズを行っている。この4年間で数千人もの方々と音楽を分かち合ってきた。「音楽はいつも心にやさしい」というメッセージとともに。
今回は6月7日岩手県大槌町中央公民館で行われたコンサートをリポートする。


今こそ、音楽ができることがある





キッズコーラスと


コーラスと

今回コンサートが開催された岩手県大槌町は、リアス式海岸の入江にある小さな町である。突然襲った大津波に町は全壊し、4年経った今、ようやく町の再建が始まろうとしている。この日のコンサートには県内外から200名近くが集まり、かつて身近で暮らしていた方々が再会の時を心から喜んでいた。

温かい拍手に迎えられて登場した小原先生がまず弾いたのは、『ひょっこりひょうたん島』。大槌湾内にある蓬莱島がこの人形劇のモデルとなっており、地元の人々には昔からなじみ深いようだ。きらきら光る波のようなグリッサンドの合間からひょっこりと小島が顔を現すようなアレンジの曲に、聴衆から早くも笑みがこぼれた。

「今こそ、音楽ができることがあると思うんです。年々被災地のニュースが少なくなっていますが、私たちは音楽をとおして被災地を応援しつづけたい」

小原先生は『花は咲く』を弾き終えると、このプロジェクトにかける想いをそう語った。またギタリストだった父親との思い出が詰まっている『アルハンブラの想い出』では、ギターを連想させる右手の繊細なトレモロに深い情感をこめ、会場はしっとりとした雰囲気に。「音楽は音だけではなくて、その時の記憶や周りのものをすべて引き連れて戻ってくるんですよね・・」聴衆の皆さんも深くうなずいていた。その他にも、軽妙洒脱な演奏を次々と披露して会場を沸かせた。(プログラム:CD『弾き語りフォーユー』シリーズより、『カッチーニのアヴェ・マリア』『ショパンのノクターン(ヴァリアント付)Op.9-2』『トルコ行進曲(CDデビュー25周年記念アレンジ)』など)。

続いて若手ピアニストの細貝柊さんがデュオパートナーとして登場し、『茶摘み(サンババージョン)』などの童謡唱歌を披露した。細貝さんは小さい頃からのお弟子さんで、「若い人にも東日本の現状を知ってほしい」と今回同行してもらったそうだ。

コンサート終盤には「大槌童謡を歌う会」と「キッズコーラスあぐどまめ」の皆さんがステージに上がり、『逢えてよかったね』(作詞・作曲:小原孝)を大合唱!会場の聴衆も一緒に口ずさみ、ホール全体にエネルギーがふつふつと漲ってくるようだった。

実は2年前、小原先生は「歌うことで被災地の方々に元気になって頂きたい」と考え、大槌町、福島県浪江町、東北大OBの合唱団をサントリーホールのステージに招待し、共演をしている。大槌童謡を歌う会会長の阿部惠子さんは、「この曲の"傷ついて泣いた日も・・"という歌詞が心にすっと入ってきました。本当に逢えてよかったねと、人間の絆を感じる曲です」。また合唱指導をした児玉奈佳先生は、「ぜひ小原先生に大槌に来て頂きたくて、今日はもう本当に嬉しかったです。コーラスの皆さんも一層声が明るくなったと感じました」と、二度目の共演に感激ひとしおだった。

前から
横から
地元に寄り添いながら、ゆっくり長い支援を
小原先生と児玉先生。小原先生は避難所で釜石高校の生徒たちが『願い』(樹原涼子作曲・小原孝作詞)を歌っているのをテレビ中継で偶然見て、被災地を応援する歌詞に書き換えたという。実はこの曲は被災前から同校で歌われており、元音楽部指導者だった児玉先生も以前から気に入っていたそうだ。これも音楽が繋いだご縁である。

小原先生は音楽が地元の活性化に繋がればと、演奏会チラシやチケットを地元の印刷会社で印刷してもらったり、ホールの協力を得たり(2014年度気仙沼※ほか)、楽器支援も地元楽器店で購入して贈るという形を取るなど、必ず地元経由の活動にしているそうだ。コンサートでは地元合唱団との共演も多く、毎回地元の先生方にも協力してもらう。児玉先生とも、義援金と楽器支援先のマッチングをしている中島恵美子先生の紹介で知り合ったという。

またコンサートの合間には各地の視察も欠かさない。「震災から4年経ち、2年前にはなかったホールが完成していたり、宅地造成が始まっていたり、少しずつ復興が進んでいるなと思います。でも津波で被害に遭われた方とご無事であった方と、人や地域によって復興度の差はますます広がっていると感じます。僕はあまり皆さんが見ていない町にも行きたいと思っています」

ご報告を兼ねて支援者に配布している漫画。

「そっと寄り添うこと」が一つのテーマ、と小原先生は語る。
「全国放送のラジオをやっている中で、被災地からもお便りを頂きました。その中にあまり『がんばれ』と言われたくない、というメッセージもありました。あえて頑張れって言わないけれど、声をかけてくれたらいつでも応えられるように・・・そんな支援が音楽ではできるかなと思っています。
今日も楽器を贈った子供たちが来てくれました。彼らが大人になって、将来どこかで何かが起きたときに、『あの時音楽があってよかったな、力になったな、今度は自分が困っている人の役に立ちたいな』、そんなふうに音楽でできることを伝えてくれたら、支援活動の輪が広がっていくと思います。今後もゆっくり続けていきたいですね」。

  • 2014年5月10日宮城県気仙沼市はまなすホールで「逢えてよかったね友だちプロジェクト」コンサートを開催し、400人が集まった。ピティナのCrossGivingで31万円を支援(スタッフの旅費交通費、ホール代等の必要経費など)。
音楽を復興のシンボルに町の再建へ

大槌町ではこれから本格的に町が再建される。その復興のシンボルとして、新しい音楽ホールを建設するための「槌音プロジェクト」が始動している。もともと吹奏楽が盛んなこの町を、再び音楽で活性化させたいとの願いからだ。さらにエル・システマ教育プログラムも昨春から採用し、東京から派遣された若手専任指導者が学生の音楽・英語指導にあたっている。エル・システマはオーケストラが主体となるが、大槌町では吹奏楽と融合させ、大槌ならでは独自色を生かしているそうだ。復興に向けて、音楽はこれから大きな役割を果たすことだろう。


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