【実施レポ】徹底研究シリーズ2018 鈴木弘尚 前編(第1部)

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2018/05/24
★タイトル
当日のレポート前編(第1部)

徹底研究シリーズ2018として、演奏研究委員会の企画による鈴木弘尚特別公開講座『音と響き ━ その先へ』が、5月13日(日)JTアートホール アフィニスにて開催され、各地からの参加者に埋め尽くされた会場は熱気に包まれました。

演奏家としてはもちろん、教育者としてもすでに数々の実績を持つ鈴木弘尚先生ですが、その卓越した指導法と音楽性の原点にあるのは、ゴルノスタエヴァ教授によって早期に叩き込まれたというロシアのメソードであり、それを支えているのは音楽芸術の根幹である音、そして響きへの鋭敏な耳と感性だと言えます。

一連の流れを持つ「音を作る、響きを作る」「レガートの奥義」「芸術作品への仕上げ」と題された3つの部は、 それぞれ前半で鈴木先生による実演とピアノの内部機構の映像等も交えたレクチャー、後半にモデル生徒による公開レッスンという構成で進められ、鈴木先生の持つ言葉による豊かな表現力も相まって、内容の濃い充実した講座が展開されました。

◆ 第1部(12:00-13:30) 音をつくる、響をつくる
◆ 第2部(14:00-15:30) レガートの奥義
◆ 第3部(16:00-17:30) 芸術作品への仕上げ

日程:2018年5月13日(日)会場:JTアートホール
主催:一般社団法人全日本ピアノ指導者協会/企画:演奏研究委員会

第1部「音を作る 響きを作る」

まず冒頭で、音楽が「音」そして「響き」で全てを語る、あるいは語らなければいけない芸術であり、音楽的な「基礎」から芸術的な仕上げに向かう「応用」まで、全ての過程で「音」「響き」が根幹にあることを強調された上で、8年間ロシアのメソードを叩き込まれたゴルノスタエヴァ教授や、故中村紘子女史とのエピソードを交えながら芸術家としてのご自身の体験などが語られました。

また、日本語と欧米の言語の間の根本的な違い、つまり日本語と比較した場合の欧米の言語における母音の種類の多彩さ、子音の発音やアクセント法の違い(抑揚か強弱か)にも触れられ、そうした言語的な差違から生じる日本人と欧米人の音楽的な聴感覚の違いについても言及されました。

続く実際に楽器を使ってのデモンストレーションでは、タッチの変化によって生まれる様々な性格の音を検証し、それらの音の立ち上がり方から伸びた響きの行方までを追う一連の行為により音の「聴き方」を体験。ロシアのメソードの根幹でもあり、音色の変化の最も重要な要素である「倍音」を操ること、ハンマーの振動や雑音などの要素も加えて生じる様々な音のグラデーションを聴き取る「耳」を育てることの必要性を強調され、さらにそれらの様々な音色を具体的にどのように演奏に使ってゆくかの実践を、メンデルスゾーンの無言歌から「ヴェニスの舟歌」Op.30-6、「岸辺にて」Op.53-1、「失われた夢」Op.67-2などを題材に、根拠となる楽曲の分析・解釈と実際の音の質との「結びつけ方」に焦点を当てつつ、多彩で情感豊かな演奏を交えながら披露され、会場を暫し魅了しました。

前半のレクチャーのまとめとして、楽曲の持つ様々な音楽的な表情を読み取り、それをどのように「響き」として形にするのか、そうした感受性を伴った作業に至ってようやく分析が意味を持ってくるということ、また音色の追求の中でのダンパーペダルやシフトペダル(左ペダル)の多彩な使用についても言及され、音の追求に対しての貪欲さと同時に自分の音に対する責任を持つ心構えを強調されました。

第一部後半は、中瀬智哉君(中1)をモデル生徒に迎えての公開レッスン。演奏曲はメンデルスゾーンの無言歌から「甘い思い出」Op.19-1。

まず響きを作る予備練習として、背もたれに寄りかかり上半身を楽にした状態で、低音と中高音域の倍音を同時に奏しながら音の調和を聴く訓練を行った上で、実際の曲の中でのフレーズごとのメロディーや伴奏の音色などの吟味に入ります。伴奏の持つ空気に漂う香りのような質感、メロディーの音域の違いや、和声の変化、曲の抑揚などに伴う音色の繊細で決定的な変化など、鈴木先生から繰り出されるさまざまな要求にも持ち前の柔軟で若々しい感性で応えていました。

第1部への質問と回答

浦壁:指導において耳の発達が大事だというお話があったが、高校生・大学生の生徒に対して、耳の発達という意味で心がけていることがあるか?

鈴木:小さな生徒も大きな生徒も、一音から二音三音と音を響かせる練習などを通して耳を育てて行く。かかる時間は違うかもしれないが基本的にはやることは同じ。

浦壁:音楽的なイメージが大事だとのことだが、それをご自身や生徒の中に育んで行くために心がけていることがあれば。

鈴木:小さい頃にゴルノスタエヴァ先生から聞かされた様々な分野にまたがる話がきっかけとなって、そこから色々なことを自分で調べたりするようになったが、それらが全て音楽につながっている。また、良い意味での遊び、日常のちょっとした体験全てが音楽や音色といったものにつながると思う。

レポート:松浦健(正会員/演奏研究委員)
質問者:浦壁信二(正会員/演奏研究委員)
撮影:財満和音・江崎晶子(正会員/演奏研究委員)

徹底研究レポート 後編(第2部、第3部)は、来週公開予定!

詳しくはピティナeラーニングで!

徹底研究シリーズ2018鈴木弘尚の模様をパソコンやタブレット、スマートフォンで聴講することが出来ます(有料)。是非、レポートと合わせて視聴いただくことで、より理解を増していただけることと存じます。ご自宅での学びにお役立てください。

Eラーニング公開(第1部)


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