【実施レポ】音楽総合力UPワークショップ2017 第2回 大政 直人先生

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2017/05/26
音楽総合力UPワークショップ2017 音楽総合力UPワークショップ2017
実施レポート
レポート:坂 かず先生
  • 2
  • 大政 直人先生 (2017年5月17日(水):開催)
  • コンペティション課題曲から学べること

今回のワークショップは作曲家の大政直人先生をお迎えしました。今年のコンペティションの課題曲を“ヴァイオリンとピアノの二重奏で楽しむ”という内容で、大政先生から最初に「課題曲をどう弾くかを示すことが今日の目的ではありません。皆さんの心の貯金箱に音楽のアイディアを加えてほしい、そう思ってお話させていただきます」とあった通り、曲目解説ではなく、大政先生の音楽に対しての思いやお考えを私達と共有してくださるとても有意義なセミナーでした。

<音楽において、メロディーは「顔」であり、伴奏は「心」である>

シンプルな「ド~ソ~」のモチーフにバッハ風、モーツァルト風、プロコフィエフ風など10名の作曲家の典型的な伴奏を付けて違いを聞かせてくださいました。たった2音なのに伴奏が付くことで作曲家それぞれの色彩感が生まれます。「メロディーに名曲無し、和音付けと伴奏形で音楽は成り立つ」ということが証明されました。

今回のセミナーでは課題曲6曲を取り上げ、ヴァイオリンとピアノでのアンサンブルで掘り下げました。こちらではそのうちの3曲をご紹介させていただきます。
ヴァイオリンは山田友里恵さん、ピアノは大野真由子さん、どちらも大政先生の門下生が演奏してくださいました。

<B級/メヌエット ト長調(バッハ)>

この曲では、大政先生と山田さんがヴァイオリンの2重奏で演奏してくださいました。バロックのスタッカートはいわゆるスタッカートとは違うということ、アンサンブルのやり取りの中でより密な音色を探すために、2人のボーイングのdownとupを揃えることなど、ピアノ以外の楽器での演奏の工夫は非常に参考になりました。そして構成について1小節×4の起承転結、また2小節×4のフレーズごとの起承転結が同時進行。音楽とは「hop-step-jump-landing~起承転結」。色々なところに行って最後は家に帰ってくる「旅」なのだという大政先生の言葉が心に残りました。

<C級/子守歌(平吉毅州)>

大政先生のレッスンでは生徒に譜読みの段階から「音を作る」ということを繰り返し伝え、その音楽で作りたいイメージ、出したい音色、それらを想像し作ることを徹底的に指導されるそうです。そのためにも「耳の力」が大切で、転調のおもしろさが分かる耳を作ることは、音楽全体の中で自分が「どこにいて、なにをしているか」を的確に知るため。決して聴音のためではありません。転調のアナリーゼは人によって違ってよいという話もありました。「子守歌」の中の和声進行をピアノ、その上に流れる長いフレーズをヴァイオリンで歌い上げる二重奏にはたくさんのヒントが隠されていました。

<D級/ゴリウォークのケークウォーク(ドビュッシー)>

ドビュッシー本人の言葉、「楽譜に忠実に演奏する」ということについて。ドビュッシーの自演を聞くと楽譜に忠実というよりもかなり自由です。では、私達はこの指示がたくさん書かれている譜面を前にどうすればよいのかを作曲家の目線でお話しくださいました。例えばスタッカート記号について。ロマン派以降のスタッカートはいわゆる「切る」という意味だけではなく、その音を意識してほしいという意味が込められていること。その他、楽譜に散りばめられている作曲家のサインを読むために、メロディーはどこか、和声進行はどうなっているのか、どのような音色、演奏が求められるのかを考えることが求められています。こちらも2重奏で聞き、音の質感やアーティキュレーションなどが参考になりました。

セミナーの最後に昨年のカワイピアノコンクールの連弾部門の課題曲にもなった大政先生の作曲された「三日月のゴンドラ」のソロバージョン、「トロイメライ」のジャズバージョンを大政先生ご自身の演奏でプレゼントしてくださいました。どちらも素敵で、会場の先生方もうっとりと聴いていらっしゃいました。

今回のファシリテーターの武田真理先生から「分奏をするだけでも子供は変化する。楽器の調達は簡単ではないけれど、積極的に使いたい」というお話があり、他の先生から「作曲するときに調はどのように選ばれますか」という質問がありました。大政先生は曲を書くときには不思議と調も一緒に浮かんでくるそうで、「調は考えて作るものではなく、自然にイメージの中に織り込まれるものかもしれません」とおっしゃっていたのが印象的でした。

そして!大政先生は知る人ぞ知る料理人です。毎晩、魚と肉のメインが付くフルコースをご家族のために作っているそうです。フレンチ、イタリアン、中華、日本食とレパートリーは数百種類。ワインと一緒に楽しむそうです。

「料理も作曲も楽しさは同じ。どれが第1テーマでどう展開していうのか考えて作っていく。ちょっとしたひと手間の愛情がどちらも大切なのです」という大政先生の素敵な言葉でセミナーが終わりました。

<おまけ>

大政先生の素晴らしい手料理。「和牛切り落とし肉のハンバーグとフォアグラのソテーをバルサミコソースで」と「トマトクリームパスタにウニとキャビアを添えて」です。たくさんのレパートリーの中から大政先生のご自慢セレクションです。


こちらの講座は「音楽総合力UPワークショップ2017」のeラーニングコースでご覧いただけます。eラーニングコースは随時受け入れており、途中からでも2017年度すべての講座のご視聴が可能です!

  • 「音楽総合力UPワークショップ」は定額見放題のeラーニングではご視聴いただけません

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