金子一朗先生レクチャー&マスタークラス 開催レポート

文字サイズ: |
2019/05/15
金子一朗先生レクチャー&マスタークラス 開催レポート

レポート執筆:中川 智浩 (東京六大学ピアノ連盟/上智大学)

 2019年4月14日(日)東音ホール(巣鴨)にて、一般大学生・社会人向けのレクチャー&マスタークラスが開催されました。今回のレクチャー&マスタークラスは、慶応義塾大学・上智大学・東京大学・明治大学・立教大学・早稲田大学の6つの大学のピアノサークルからなる東京六大学ピアノ連盟が、ピティナと共同で企画・運営を行いました。
講師は、当連盟の多くの会員と同じく一般大学のご出身であり、現在早稲田中学校・高等学校副校長を勤めながら第一線の音楽活動を継続されている金子一朗先生です。学業とピアノを両立された経験を持つ金子先生にぜひお話を伺えたらと、レクチャー&レッスンを依頼させていただいたところ、ご快諾いただき、本企画が実現しました。

第1部のレクチャー『社会人としてピアノを追究していくために』がeラーニングで公開中!
◆ ダイジェスト
視聴はこちらから

開催告知のウェブページはこちら

クレッシェンドは、0.618(黄金比)の曲線を意識すると音の変化が明瞭になる

 第1部のレクチャーのテーマは『社会人としてピアノを追究していくために』。社会人になってからもピアノを続けていくための秘訣・留意点についてお話をいただきました。
その中で特に興味深かった2点をレポートします。

 1つ目は「ライフスタイルが変わっていくことを見越して、若いうちにピアノとのかかわり方を決めておく」ということです。大学卒業後には、ピアノの練習時間が取れなくなり、あるいは、ピアノがない環境で生活を送らねばならなくなる可能性があります。若いうちにするべきことを明確化するためにも、ピアノと自分の関係を決めておくのが大切です。
金子先生によれば、社会人として聴衆の前で演奏を続けてゆくためには、演奏の「正しさ」を演繹的に考える能力が必要だといいます。学生である間に、対位法と和声を効率的に勉強しておくべきであり、そのためにはバロック(とくにバッハ)や古典派の作品に取り組んで、さらにはバロック・古典派とロマン派の作品のつながりを意識できるようにならねばなりません。

 2つ目は才能についてです。金子先生によれば、才能は「興味の大きさ」であり、興味の大きさや興味を持ち始める時期は人によって異なります。そして「才能は育つものである」と金子先生はいいます。多くの人が持つ「才能は持って生まれてくるもの」という考えを覆す興味深いお話でした。
私たち学生も、これから先、記憶力が衰え、練習時間を取ることも難しくなっていきます。その中で曲をしっかりと弾きつづけていくために、学生時代を「才能=興味」を育てる時期に充て、音楽を学ぶ時間として「いま」を大切にするべきことを再認識しました。

 第2部のマスタークラスには、5月11日(土)に当連盟が主催する第24回定期演奏会の出演者の中から、6名が受講者として参加しました。
この演奏会は、各大学2名の代表者が選抜されて出演するもので、連盟の中でも「ハイレベルな演奏会」として位置付けられています。受講曲も、『舟歌Op.60/ショパン』『バラード第3番Op.47/ショパン』『創作主題による32の変奏曲WoO80・ベートーヴェン』『幻想曲Op.28/スクリャービン』『前奏曲集第5番Op.23-5/ラフマニノフ』『スケルツォ第3番Op.39/ショパン』など、難度の高い作品が集まりました。それだけに、今回金子先生にご指導の機会をいただけたことは、受講生にとっても、連盟にとっても、大きな意義がありました。

 マスタークラスでは一人あたり約30分のご指導をいただきました。「原典版の楽譜を利用して、作曲者が意図した正しい音・解釈で演奏をすること」「響きのバランス・音量を設計すること(とくに直線的なクレッシェンドは避けること)」「書かれていないペダリングを考えること」といったアドバイスは、受講者本人にとってだけでなく、すべての大学生ピアノ演奏者にとって大切なものだと感じます。とくに和声を理解することの重みがひしひしと伝わり、レクチャーで教えていただいたことの意味を、マスタークラスでより深く確認することができました。

 マスタークラス後には、金子先生と受講生・聴講生が飲み物とお菓子を囲んで、懇親会を行いました。第一線で演奏活動されている方とお話する貴重な機会だったうえに、大学で勉強している学問など、ピアノ以外の話題についても金子先生とお話することができ、受講生は勿論のこと聴講生にとっても非常に有意義な1日を過ごすことができました。

金子一朗先生の直近のコンサート情報はこちら
東京六大学ピアノ連盟の直近のコンサート情報はこちら


【GoogleAdsense】
ホーム > 協会概要 > ニュース > > 金子一朗先生レクチャ...