ピアノ学習者を支える―楽器店担当者

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2012/04/06
ピアノ学習者を支える―楽器店担当者

あなたの街の楽器店で、ピアノを販売する営業の方をご存知でしょうか?この方々の仕事は、単にピアノを販売するだけではなく、その地域のピアノ指導者、ピアノ学習者について、おそらく誰よりもよく知り、応援している存在といえるでしょう。
まさに「地域のピアノ学習を支える存在」である方々を<営業マン>や<楽器店担当者>という言葉では、その役割の魅力を言い表すことはできません。そこで、ピティナではこの方々のことを『エリア・ミュージック・サポーター(地域音楽情報担当者 Area Music Supporter 略称:AMS)』とお呼びすることを提案したいと思います。このAMSの方々は、諸外国の楽器店には見かけられない存在であり、日本の音楽文化の発展に大きく貢献されています。
今回は、AMSの仕事と、実際の現場で活躍される3名の方をご紹介いたします。

エリア・ミュージック・サポーター(AMS)の仕事
(1)情報提供・販売業務
(1)楽器・調律・音楽環境(防音)
楽器の他、調律・メンテナンスや音の悩み(防音)、についての情報・相談窓口。メトロノームやピアノ補助ペダル等、様々なレッスンのサポートグッズの提案などレッスン環境・学習環境を整えるためのあらゆるお手伝いをしています。
(2)コンサート
周辺地域で開催されるコンサート情報の提供や、コンサートを企画される方の広報の後援など。
(3)セミナー
ピアノ指導者が勉強される機会であるセミナーの情報を、チラシの配布や各先生のニーズに合わせたものを選別しておすすめ、お知らせしています。
(4)コンクール
各種ピアノコンクールの参加要項の提供など(一部有料もあり)。それぞれのコンクールの特性を理解し、各指導者・参加者のニーズに合ったコンクールについて、情報の提供を行っています。
(5)楽譜・CD
求められる楽譜やCDの情報をお知らせする他、新刊のご紹介やおすすめのテキストなど、楽譜を探されている方のご相談にも応じています。
(6)進路相談
音楽高校・音楽大学に関する情報など。時には、希望される学校の講師の方をご紹介することもあります。
(7)音楽教室紹介
ピアノを習い始める方、また転居された方など、音楽教室を探されている方へ先生のご紹介を行っています。「歩いて通える範囲」「バスで通える範囲」など、地域に精通しているからこそ提供できる情報です。
(2)コーディネイト業務
(1)音楽指導者団体の事務局
指導者の団体は、ピティナを始め、勉強会などのサークルなど、大小様々なものがあります。それらの事務局を担ったり、ニーズの合った指導者と指導者をご紹介し、結びつけることで新しい関係を築くサポートをしています。
(2)教育委員会・メディア各社との連絡
各種公演に対する後援や提携等、申請や打合せなどの連絡をとっています。
(3)運営、運営サポート業務
(1)発表会
音楽教室の発表会、ピアノ指導者の合同発表会の企画など。ホール予約から参加者の募集、プログラムの作成、打合せ、当日の進行を行います。合同発表会の場合には、参加指導者の意見をまとめ調整して、企画に実現させる役割も担っています。
(2)コンクール
ピティナや楽器店主催のコンクールなど、企画・運営を行っています。参加者の方に対して公平にかつスムーズに気持ちよく演奏していただくために、受付の対応、舞台袖への誘導、補助ペダルの用意など、各会場にあわせた工夫も運営の大切なポイントです。
(3)セミナー
指導者のニーズに合ったセミナーを企画・広報・運営します。多くの指導者の方に参加し、研鑚を積んでいただくことで、指導者の成長をサポートしています。
(4)コンサート
地元の演奏家の他、国内外のアーティストによるコンサートを企画します。地域に良い演奏を届けるべく、聴き手には演奏を楽しむ機会を、弾き手には演奏を披露する機会を提供しています。
豊かな響きで彩る ピアノのある生活』
 ~ピティナがご提案する小冊子を発行

 ピティナでは、良い環境でピアノを学習していただきたいという思いから、ピアノの魅力をお伝えする小冊子を作成いたしました。この冊子は全国のピティナ支部・連絡所楽器店(ヤマハピアノ取扱店)にて、配布しています。まずはピアノの先生を通じて、エリア・ミュージック・サポーターの方を紹介していただいてはいかがでしょうか?きっと、より豊かで充実したピアノライフが待っていることでしょう。

<冊子目次>
特別インタビュー:成長期こそ、良い楽器で良い響きを!(江崎光世先生)
購入者インタビュー:
  • 電子ピアノ⇒グランドピアノ+消音機能~昼も夜も!教わったタッチを家で再現」
  • アップライトピアノ⇒グランドピアノ~「こう表現したい」に応えるピアノを
楽器店ウォッチング!~近くの楽器店に行ってみよう
いざ試弾!響きづくりの面白さを味わおう~試弾の参考曲を譜例付で紹介
いよいよ購入!グランドピアノが我が家へ
私達も長~くおつきあいします!~ピアノメーカー・楽器店担当者・ピアノ調律師より
さあ、ステージに飛び出そう!~ホーム→レッスン室→ステージが身近に
ピアノと歩む音楽ライフとは?~いろんな出会いが待っている!
楽器店 担当者インタビュー
田口博之
伊藤楽器YAMAHAピアノシティ船橋ピティナ船橋支部事務局)
―ピアノ指導者・学習者を応援できる仕事―
◎コンペ・ステップ会場での司会を通して
 実際にお客様との関係が生まれるのは、多くはピアノを購入される段階からとなりますが、コンペ・ステップ・発表会など各種イベントの舞台で司会やご挨拶をすることで、普段から「顔」を覚えていただく機会になればと思い、積極的にマイクを握っています。後でお会いした時に、「あそこで司会をやっていた人だ」と思い出していただけると、嬉しいですよね。
◎ピアノの先生方とのお付き合い
 伊藤楽器では、年間40回近くのピアノ指導者向けセミナーを実施しています。ほぼ毎週のペースですね。セミナーの種類は、単発のもの、シリーズのものなど様々に組み合わせています。初めてセミナーに参加される方にとっては、まず単発のセミナーでしたら参加しやすいと思いますし、参加を重ねるうちに次第にシリーズを通して勉強される方が多くなっていきますね。先生方にとってはセミナーはご自身の研鑚の場となりますし、それと同時に私にとってはセミナーの会場で先生方をお待ちすることで、定期的にお会いすることができますので、セミナーでコミュニケーションをとれるのは、お互いにとって良いことづくめだと思います。先生方が積極的に足を運んでくださるような魅力的なセミナーを企画することに、使命感を感じています!
◎ピアノ購入から始まる長いお付き合い
 ピアノを購入してくださるお客様は、ピアノ指導者の方からご紹介いただくことがほとんどですが、そのご紹介から始まるお付き合いは、お客様一組一組、ピアノ一台一台にドラマがありますね。ピアノを購入された後で、どのようにレッスンを続けられているか、どんな環境で練習されているか、コンクールなどでどのように頑張っていらっしゃるか、長い目で見守り続けています。ピティナ・ピアノコンペティション全国大会表彰式には、毎年必ず出席し、私のお客様が入賞した時には、まるで自分のことのように嬉しく、その場で先生やお客様と一緒に大喜び!お客様の成長を長い目で応援、共感できることは、この仕事冥利に尽きると思います。
日髙英恵さん(9歳/ピティナ正会員 根津栄子先生に師事)のお母様より
※平成22年12月に伊藤楽器YAMAHAピアノシティ船橋にて、田口氏よりグランドピアノを購入
 私が昔から使っていたアップライトピアノに消音機能を付けようかなと思い、お店に行ったことが田口さんとの出会いでした。実は、ピティナの会場で以前から田口さんのことは何度かお見かけしたことがあり、何となく一方的に存じ上げていました。田口さんのお話を聞く内に、アップライトに消音...のはずが、いつの間にかグランドピアノに気持ちが傾いていましたね。すごい説得力だったのだと思います!グランドピアノ購入後、1年ぐらい経って引越の機会があったのですが、ピアノ運搬について不安だらけだったので、すぐに田口さんに相談しようと思いました。運搬の紹介、調律、置き場所、搬入経路など、購入後しばらく経っているにも関わらず、本当に親身になって相談に乗って下さり、安心して引越を終えることができました。これからも、何かあれば田口さんに相談できると思うと、ピアノを長く続けていく上で、とても安心感があります。
楽器店 担当者インタビュー
道法義一
日響楽器(株)池下店ピティナ名古屋支部副支部長)
―ピアノ指導者と共に成長できる仕事―
◎夢を共有することで得られる一体感
 「子ども達にピアノを長く学んでいただきたい」と、常に夢を持って仕事をしています。その思いが通じたのでしょうか、2歳のお子さんのお宅に商談で伺った時に、いつもは人見知りをするお子さんが、すぐに私の手をとってくれました。その様子を見たお祖母様が、「この人はきっと信頼できる人だ」と、私の勧めるグランドピアノをその場で買って下さったことがありましたね。また、ピアノ指導者に対しては、私が夢を熱く語ることで、方向性を共有することができ、一体感が生まれます。子どもの成長のために、ピアノ指導者自身も成長していくことの大切さを感じていただき、共に成長に向かって歩みを進めていきたいと思っています。
◎ピアノ指導者を育てるために
 ピアノの先生方には、日響楽器やピティナ名古屋支部主催のセミナーを通して勉強していただく機会を提供しています。セミナーだけでなく、私自身がピアノ教室の講師会に毎月顔を出したり、同じ先生と毎月面談を設けたりと、先生方の輪の中にどんどん飛び込んでいき、叱咤激励を繰り返す日々です。そうしたお付き合いの中で、先生の意識が少しずつ変わってきて、成長していく姿を見られることは、何よりの幸せとやりがいを感じます。
◎率直な意見をぶつけ合うモノづくり・信頼づくり
 信頼関係は人とのコミュニケーションで生まれるものです。その際に、好かれようと思うことよりも、「嫌われても信頼されること」が大切だと思っています。だからこそ思いを率直に言うことができ、こちらが本気でぶつかれば、相手も本音でぶつかってくれる。ぶつかり合いでお互いに成長を重ね、そこで生まれるモノづくりの過程が大好きです。コミュニケーションにより成長し合えることは、この仕事の大きな醍醐味だと思います。
石黒加須美先生(ピティナ正会員 ピティナ名古屋支部支部長)より
 ピアノの先生は、道法さんのような楽器店の方とどんどんお付き合いすべきだと思っています。私達指導者は楽器店から勉強の場を提供していただき、逆に私達は楽器店のためにピアノ販売を紹介したり、楽譜を購入したりする。お互いが良い方向に成長し合える関係だと思います。道法さんは、ピティナ名古屋支部を指導者主体の活発な組織へと導いてくださり、指導者自身がセミナーやコンペの運営に携わることになりました。その中で「勉強と経験を積んで、自分の環境を整えるために頑張らなければ」と、指導者の意識が変化してきているのを感じます。道法さんの「一緒にやりましょう」と指導者を巻き込んで下さるパワーは凄い!地域の指導者が成長できる機会を大いに与えてくださっていると思いますね。
楽器店 担当者インタビュー
栄谷耕司
(株)ヤマハミュージック東京横浜店ピティナ横浜中央支部事務局)
―ピアノ指導者・学習者に寄り添うことのできる仕事―
◎興味・関心を共有する
 「ピアノってすごい楽器!」ということをもっと知っていただく機会として、夏休みに小中学生のピアノ学習者を対象とした「グランドピアノ工場見学ツアー」をおこなっています。横浜から工場のある浜松(現在は掛川)まで、バスの中で、ピアノのアクション、ギターやカリンバ作りを私達楽器店スタッフが子ども達と一緒になって体験したり、楽器博物館を見学したりと、楽器への興味の高まりを共有します。また実際にピアノ工場を見学すると、熟練した作業で手早く進められる細かな工程に、皆さんそれぞれに感激されています。一緒に参加された保護者の方からは「こんなに手間をかけて作られた工程を見て、これまで値段が高いと思っていたグランドピアノが、ちっとも高くないと感じました!」と仰っていただけたり、数年後、実際にグランドピアノを買って下さった方もいらっしゃいましたね。「ピアノ」という楽器に対して、興味や感動を共にすることで、子ども達との距離がぐっと近づく機会になったように思います。
◎生徒さんの身近な存在に
 ピティナのコンペやステップなどの会場では運営をしながら、回を重ねるごとに顔見知りになれるようにしています。また、その運営はスムーズな進行にこだわりを持っており、参加者の方に安心して参加していただくことで「ここで参加して良かった。次もここで参加したい!」と思っていただけると嬉しいですね。安定した運営は、練習の成果をステージで存分に発揮していただくための、大切なお手伝いのひとつだと思っています。参加者の皆さんにとっては、ステージへの思い入れは特別なものと思いますので、その場にいつも居られる身近な存在でありたいですね。
◎ピアノ指導者のニーズに合わせた役割
 生徒募集のサポートや、テキストの相談、セミナーの情報など、ピアノ指導者が求めていらっしゃることに対して、何かお役に立てるお手伝いができないかと常に心がけています。先生と先生を結びつけるコーディネートも大事な仕事ですね。例えば「勉強したい」という意欲の高い先生を、そのニーズにあった指導者サークルにご紹介することで、新しい関係の中で刺激を受けて勉強され、活躍の場をどんどん広げられていくこともあります。ピアノの先生によって、悩みや求められるニーズは十人十色です。ピアノ指導者として活躍いただけるために、お一人お一人のニーズを丁寧に汲みとっていくことが、この仕事の喜びにつながると思っています。
江崎光世先生(ピティナ理事 ピティナ横浜アンサンブルアソシエステーション代表)より
 舞台袖で緊張している子ども達に笑顔で見守ってくださる栄谷さんのお姿に安心して舞台に出ていくことが出来たり、お店に行くと優しくお言葉がけをしてくださるお人柄に、子どもたちはみんな栄谷さんのファンです。だから楽器、調律、補助ペダルなどのご相談は、「栄谷さんに聞いてみて」と言っています。楽器店の方とピアノ指導者は「ギブ・アンド・テイク」の関係を上手く築くことで、地域の音楽文化がより発展していくと思います。私達が共存共栄して手を取り合うことで、未来に向けて子ども達の音楽教育の土壌をしっかり作っていくことが理想ですね。
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