【公開録音】上田泰史、中村純子、林川崇(2017年1月25日(水))

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2016/11/21
公開録音コンサート
  • 19世紀のJ. S. バッハとピアノ―バッハをめぐる創造的編曲の世界
  • 2017.125日(水)
    19:00 開演(18:30開場)
  • ・上田泰史(レクチャー)
    ・林川崇(Pf.)
    ・瀬崎純子(pf.)
  • 東音ホール(アクセス)
  • 入場料:後払い方式
  • 公演終了
概要

かつてのピアニストたちにとって、バッハのレパートリーは、新たな創作や創造的なトランスクリプションへと駆り立てるインスピレーションの源でした。リストやブゾーニの例で知られるように、バッハ作品の編曲は、19?20世紀にかけて、ピアノ音楽のレパートリーの一角を占めるようになりました。こうした編曲は、バッハの「オリジナリティ」や「オーセンティシティ」という視点からみると、「原曲」よりも価値の低いものに見えるかもしれませんが、ピアノ音楽の歴史の中で、むしろポジティブに理解すべきものではないでしょうか。というのも、オルガンやチェンバロ、管弦楽のために書かれたバッハの作品を、純然たる「ピアノ音楽」として成立させるには、演奏技法と楽器の効果を熟知し、新たなピアノ曲として生命を吹き込む必要があるからです。この意味で、編曲は、オリジナルの「縮小」ではなく、オリジナルに基づく「再創造」と云うことができます。

そこで、今回のレクチャー・コンサートでは、長いピアノ編曲の歴史をもつバッハをテーマとして、19世紀に編曲されたバッハ作品を聴きながら、その魅力について考えてみたいと思います。コンサートの舞台は、講師が専門とする19世紀パリの音楽シーンです。ロンドン、ウィーン、ライプツィヒなど、当時のヨーロッパにはいくつもの音楽文化の中心がありました。中でも、パリは、楽器製造、作曲、出版、消費が一体となってピアノ音楽が渦巻いた特殊な街です。この都市で、ピアニスト兼作曲家たちは、3つの役割を担っていました。1)ピアノ演奏の未来を切り開く 2)同時代の音楽様式を普及する 3)過去の音楽を同時代のピアノ文化に統合する今回のプログラムに登場するバッハ作品に基づく編曲群は、当時から見た未来・現在・過去についてのビジョンを表す色とりどりのピアノ曲で、バッハ協会創立(1850年)後、主に1860年代に続々と出版された作品です。バッハをめぐるこの多様な彩りが、「オリジナリティの欠如や歪曲」といったネガティヴな考え方では捉えられない、魅力的な「19世紀のバッハ」というビジョンを垣間見させてくれるはずです。

ききどころ

今回のプログラムには、バッハのいわゆる「名曲」や、学習者の間でよく知られた作品が登場します。連弾用に編曲された《平均律クラヴィーア曲集》から(ベルティーニ編曲)、「モダン」な演奏技術を駆使したリストやサン=サーンス(無伴奏ヴァイオリン・パルティータ第3番のガヴォット他)の編曲、同時代の宗教声楽曲の様式に改編されたグノーの《アヴェ・マリア》のピアノ版(グノーによるピアノ独奏版)、J.シュルホフが編曲した《管弦楽組曲第3番》のエール(「G線上のアリア」)他。プログラムの最後には(パリで刊行された作品ではありませんが)、ブゾーニ以前に書かれた初期の《シャコンヌ》の編曲(連弾)が上演されます。

Program
  • ベルティーニ編曲:平均律クラヴィーア曲集第1巻第4番(4手)
  • ダムケ:バッハへのオマージュ(4手)
  • サン=サーンス編曲:カンタータ第29番より 序曲
  • リスト:バッハの「泣き、嘆き、憂い、おののき」による前奏曲S.179
  • グノー:バッハの第1前奏曲による瞑想曲
  • J.シュルホフ編曲:管弦楽組曲第3番より エールとガヴォット
  • アルカン編曲:フルート・ソナタBWV1031より シチリアーノ
  • ル・クーペ編曲:聖霊降臨祭のカンタータ(BWV68)より アリア
  • サン=サーンス編曲:無伴奏ヴァイオリン・パルティータ第3番より ガヴォット
  • ライネッケ編曲:無伴奏ヴァイオリン・パルティータ第2番より シャコンヌ(4手)
Profile
上田 泰史/Yasushi Ueda(レクチャー)

金沢市出身。東京藝術大学音楽学部楽理科卒業、同大学及びパリ=ソルボンヌ大学で修士課程及び博士課程を修了。在学中に安宅賞、アカンサス賞受賞。2010 年から 2012 年まで日本学術振興会特別研究員(DC2)を務める。2010 年に渡仏、2013 年、パリ第 4 大学音楽学修士号(Master2)取得。2015 年、日本学術振興会より育志賞、2016 年、平山郁夫文化芸術賞を受ける。同年 3 月、東京藝術大学に提出した論文『パリ国立音楽院とピアノ科における教育----制度、レパートリー、美学(1841 ? 1889)』で音楽学博士号取得、9 月にパリ=ソルボンヌ大学にて音楽学博士号取得(博論題目:『ピエール = ジョゼフ=ギヨーム・ヅィメルマン----人、教育者、音楽家』)。これまでにカワイ出版より校訂楽譜『アルカン・ピアノ曲集』(2巻, 2013年)、『ル・クーペ ピアノ曲集』(2016年)などを出版。19 世紀の作曲家を紹介する演奏会企画を行う他、ピティナ・ウェブサイト上で連載、『ピアノ曲事典』の副編集長として執筆・編集に携わっている。東京藝術大学大学院専門研究員、一般社団法人全日本ピアノ指導者協会研究会員、日本音楽学会、地中海学会会員。

林川 崇/Takashi Hayashikawa(Pf.)

1978年生まれ。東京藝術大学音楽学部作曲科卒業。少年時代にエディソンの伝記を読んで古い録音に関心を持ち、19世紀後半から20世紀前半にかけて活躍した巨匠ピアニストの演奏を探究するようになる。以後、彼らが自らのレパートリーとするために書いた作品及び編曲に強い関心を寄せ、楽譜の蒐集及び演奏に積極的に取り組んでいる。また、楽譜として残されなかったゴドフスキーやホロヴィッツのピアノ編曲作品の採譜にも力を注いでおり、その楽譜はアメリカでも出版されている。ピアニスト兼作曲家として自ら手掛けたピアノ作品の作・編曲は、マルク=アンドレ・アムラン等の演奏家からも高く評価されている。ラヴェルのオペラ「子供と魔法」から「5時のフォックス・トロット」(ジル=マルシェックスによるピアノ編曲)の演奏を収録したCD「アンリ・ジル=マルシェックス:SPレコード&未発売放送録音集」がサクラフォンより発売されている。

瀬崎 純子/Junko Sezaki(Pf.)

福岡市出身。東京藝術大学大学院音楽研究科ソルフェージュ研究領域博士課程修了、博士論文「スコア・リーディングからピアノ演奏表現へ」。在学中、ピアノを東誠三、ソルフェージュを林達也、照屋正樹、ローラン・テシュネの各氏に師事。ソロ・室内楽ともに幅広い演奏活動を行い、ピアノ曲事典に多数の音源を提供している。1992年ピティナ・ピアノコンペティションC級の部全国決勝大会入選。1994年九州・山口ジュニアピアノコンクール最優秀賞、全日本学生音楽コンクール福岡大会小学校の部第3位。1995年ポーランド国立クラクフ交響楽団とコンチェルトの共演。2002年石川ミュージックアカデミーに参加。 2005年名演奏家オーディションにピアノトリオで奨励賞。2008年パブロ・カザルス国際音楽アカデミーにて独奏および室内楽の指導を受ける。Y.A.ミュージックアカデミーソルフェージュ講師、日本ソルフェージュ研究協議会正会員、一般社団法人全日本ピアノ指導者協会演奏会員。

◆入場料:後払い方式 コンサート後に、好きな額を当日お配りする封筒にいれて頂きます。そのお金は演奏者ならびにピティナ・ピアノ曲事典への寄付金として大切に使わせて頂きます。規定の計算方法により過半(60%~場合によって全額)を演奏家にお渡しし、残りは本企画の調律費等に充てます。

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