20曲の魅力を独自の視点で解説&演奏~柏・リクエスト曲でめぐるピアノ音楽の旅

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2007/01/25

070106_01.jpg2007年最初のステップが、柏で幕を開けた。
杉谷昭子先生が代表を務めるキャッツスーパーステーションでは、今年ステップ終了後に同会場でコンサートを開催した。これは、バロック・クラシック・ロマン・近現代の4つの時代の楽曲5曲ずつ計20曲を、簡単な解説とさわり演奏で綴り、90分間のコンサートに仕立てたもの。ぎゅっと凝縮された音楽の歴史を、杉谷昭子先生の一流の演奏と生の声による解説に、会場の観客は子どもから大人まで吸い込まれるように聴き入る、あっという間の90分だった。
※ビデオ>>(WMV5分)

●アドバイザーも飛び入り参加!のオープニング

070106_02.jpg開演のブザーが鳴る。暗転したステージ上で、一筋のスポットライトが中央を照らすと、そこにはキャッツスーパーステーションのキャラクターであるネコの人形がおもちゃのピアノに向かい、『悲愴』の第一楽章が流れ出す。「何が起こるんだろう?」と会場が期待に胸ふくらませる中、ステージが明るくなり、杉谷昭子先生がもう2組の素敵なゲストを紹介。

070106_03.jpg「今日は、先ほどまで柏ステップのアドバイザーを務めていただいていた6人の先生方が、2組に分かれて6手連弾を披露してくださいます。」と、まず林苑子先生・三宅真未先生・國谷聖香先生を誘い出す。3人での顔合わせは今日が初めて。見事に"ロミオとジュリエット"の『モンタギュー家とキャピュレット家』を堂々と格好よく決めた。続いてもう1組の杉谷昭子先生・田中克己先生・久保山千可子先生が"ウェストサイドストーリー"より『アメリカ』を小気味よく走り去るように演奏。アドバイザーの先生方の友情出演に勢いづけられ、コンサートは華やかにスタートした。

●質問やエピソードを交えて演奏

今回のコンサートは、申込時に"杉谷先生への質問"も受け付けた。寄せられた質問に、杉谷先生が早速答える。「曲にあわせたペダルの使い方についての質問がありましたね。とても微妙な動きですから、質問をした人はぜひ前に来て見てください。」と促す。「音を出すポイントというのは一番下までいかなくても音が出るんですね。最初の曲の『かっこう』ではハーフタッチ。半分くらい押した当たりでちょうど音が出るポイントというのがあります。この曲は、そのポイントを探して弾くといいでしょう。」と、お話をしながら早速1曲目の演奏に入った。

070106_05.jpg2曲目の『インヴェンション第1番』では、杉谷先生が独学でピアノを学んでいた頃、実はバッハがどうしても苦手だったこと、それがある時チェンバロを弾いてみたこと、対位法の話しかけるような構図や逆にした形のことを知って、はっとおもしろくなったことなどの秘話も話された。ただ弾くだけでなく、ちょっとした説明があるだけで子どもでも大人でも途端におもしろくなることがあることを実感したという話は、今日のこのミニ解説コンサートの成り立ちへの杉谷先生の想いを物語るようだ。

また、ブルグミュラー『25の練習曲』では、「これから『貴婦人の乗馬』を下手に弾いてみます。」と、どたどたと弾いてみせると、会場内は大爆笑。「これでは、馬に乗っている感じではありませんね。」と、軽やかに弾きなおしてみせるなど、聴衆の心をつかんでいた。

●1曲1曲にとっておきの注目ポイントを

070106_04.jpg当日のプログラムノートには、20の曲目それぞれ1行ずつの、杉谷先生自身による一言コメントが書かれ、次の曲に行く度に聴衆の興味をそそった。短い時間で多くの曲を紹介するには、限りなくある曲や弾き方にまつわる話の、ほんの一部分だけを取り出さなければならない。

杉谷先生は、『かっこう』ではペダルの動きに注目させ、スカルラッティの『狩』では同じ年に生まれたヘンデルとの作風の違いを喚起し、ベートーヴェンの『月光』では有名なメロディの裏の4つの下降音に隠された悲しみと苦しみのモチーフへの注目を促し、『幻想即興曲』では激しい情熱の中に潜む"かげり"を探させ、『トロイメライ』では、病床のシューマンがクララに「今、すごく美しい曲ができたんだ。」と言って聴かせたエピソードとともに情景を思い浮かばせたり、『月の光』では「いくら冷たい月の光でも、熱く燃える時もある」という言葉とともに、穏やかな響きの中に情熱を感じさせる...というように、様々な方面から聴衆の感覚を刺激し、演奏へと導入した。そこで選んだエピソードから、杉谷先生が今、何を伝えようとして演奏しているかが感じられ、聴衆もそれを目の前の演奏から吸い取ろうと、一心に耳を傾ける空気が会場を包んでいた。

また、ブラームスのワルツを耳にして、ステップに参加した幼い子どもに、応援しに来たおじいちゃんが「ほら、この曲は○○ちゃんも知ってるだろう。」と嬉しそうに耳打ちする微笑ましい姿も見られたり、ちょうど勉強している曲なのだろうか、楽譜を広げて指を動かしながら演奏を真剣に聴く姿もあった。中でも杉谷先生が、ご自身が何も食べられなくなるくらい感動し、「私は、感心されるより、感動される演奏がしたいと思った。」というエピソードを話されたのは、心に沁みた。

●リクエスト、お年玉共演などの企画も満載

070106_07.jpg20曲の解説とさわり演奏だけでなく、各時代1曲ずつ、リクエストの多かった曲はほぼ全曲演奏する、という試みで、バロックではパッヘルベルの『カノン』、クラシックではベートーヴェンの『月光 第3楽章』、ロマンではショパンの『幻想即興曲』、近現代ではラヴェルの『亡き王女のためのパヴァーヌ』が選ばれた。

一度にたくさんの曲を聴ける贅沢な企画の一方、「もっと演奏を聴きたかった!」という飢餓感も与えたコンサート。最後にはお年玉企画として、入場チケットを使った抽選会。あたった2人は、ステージに上がって杉谷先生と3人で『ネコふんじゃった』を共演、恥じらいながらも最後まで3人で弾ききった。割れんばかりの拍手の中、杉谷先生はお気に入りの『カタリ・カタリ』をアンコールに弾きながら、静かにスポットライトが消えた。

070106_06.jpg●来場者アンケートより・・・・・・・・
Q.どの曲が一番印象に残りましたか?
・バッハ:インベンション第1番~私も弾いたことがあって、こんな弾き方もあるんだなぁと思いました。(11歳)
・ブラームス:ワルツ~高音で奏でられるメロディがあまりにもきれいに響き、心にしみ入りました。(39歳)
・ラフマニノフの豪快な雰囲気
・ブルグミュラーは今度弾くので、うまく弾きたいです。(8歳)
・ブルグミュラーを下手に弾いた時と、上手に弾いた時の違いが7歳の子どもにとってもとてもわかりやすくおもしろかったようです。
・ドビュッシー:月の光~とても神秘的な感じがしました。思わず鳥肌がたってしまいました。(13歳)
・ゴリウォーグのケークウォークが、とても変わった感じでおもしろかったので、最後まで聴きたいです。(13歳)
・月の光~天上を見上げて聴いていると、フワッと体も浮いて音に吸い込まれそうになった。(40歳)
・トロイメライ~小さい時に聴いていたのが鮮やかによみがえってきて、涙が出そうになりました。(37歳)

Q.印象に残ったことは?
・ツェルニーやブルグミュラーなど、子どもの弾く曲もこんなにステキなんだと思いました。(43歳)
・ピアニストはppが大事、ということがとっても印象に残っています。(39歳)
・6手連弾!
・抽選に当たり、先生と一緒に「ねこふんじゃった」を弾いたことです!とても貴重な体験をさせていただいて、ありがとうございました。(13歳)
・感心されるより感動する演奏をしましょう、という言葉。(40歳)
・先生の幼少期のエピソード、感動してごはんが食べられない程のするどい感性におどろいた。(35歳)
・トークがあるとお人柄がよくわかり、とても楽しかった。(35歳)

Q.その他感想など
・とても、とてもすばらしい演奏会でした。すばらしい先生がかんたんな曲を弾くと、こんな感じになるのかと、びっくりしました。(38歳)
・こんなコンサートだとは予想もしていませんでした。勉強になりましたし、とっても楽しいコンサートでした。(39歳)
・ピアノを楽しく弾くコツを教えていただけて、これから娘と楽しく弾きたいと思います。
・すばらしいコンサートでした。帰ったらすぐピアノがやりたくなりました。(15歳)
・身近なホールで素晴らしいお話と演奏、本当に楽しかったです。(35歳)

♪コンサート情報---------

「杉谷昭子先生による リクエスト曲でめぐるピアノ音楽の旅」
2007年1月6日(土)18:30~20:00
アミュゼ柏クリスタルホール
PTNAキャッツスーパーステーション/PTNA柏支部
詳細はこちら>>

●プログラムノートより---------
♪バロック
1.ダカン:かっこう(1694~1772)
 ...フランス風のしゃれた、きゃしゃなチェンバロ音楽
2.J.S.バッハ:インヴェンション 第1番 ハ長調 BWV.772(1685~1750)
 ...音楽の父・バッハが、息子のために書いた聖典
3.ヘンデル:調子のよいかじや「クラヴサンのための組曲第1集」5より「アリアと変奏」(1685~1759)
 ...ヘンデルの太くスケールの大きなチェンバロ音楽 
4.パッヘルベル:カノン 「3つのバイオリンと通奏低音のためのカノンとジーグ ニ長調」(1653~1706)
 ...パッヘルベルの和声の美しさが味わえる名作
5.D.スカルラッティ:ソナタ ハ長調「狩」K.159 L.104(1685~1757)
 ...イタリアの明るい透明な、地中海の青が見えてくるソナタ

♪クラシック
6.ハイドン:びっくりシンフォニー 交響曲第94番「驚愕」(1732~1809)
 ...シンフォニーのパパ・ハイドンのオーケストラの響きをピアノで
7.モーツァルト:ピアノ・ソナタ 第11番 イ長調(トルコ行進曲付き)(1756~1791)
 ...天才モーツァルトの傑作ぶりを楽しい演奏で(1770~1827)
8.ベートーヴェン:エリーゼのために
 ...天下のこの有名曲をどう弾くかお楽しみに
9.ベートーヴェン:ピアノ・ソナタ 第14番 嬰ハ短調「月光」第3楽章
 ...耳が聞こえなくなってくる彼のモチーフがかくされています
10.ツェルニー:30番練習曲より(1791~1857)
 ...たかがツェルニー、されどツェルニー。いかに音楽的にきれいにひくか!!

♪ロマン
11.ブルグミュラー:25の練習曲Op.100より(1806~1874)
 ...音楽的なすばらしい小品たち。これぞロマン!
12.ショパン:幻想即興曲 嬰ハ短調(1810~1849)
 ...ショパンの情熱と痛める"かげり"をどう表現しますか?
13.メンデルスゾーン:ヴェニスの舟唄 Op.30-6嬰ヘ短調(1809~1847)
 ...美しいヴェニスによせる曲は多いが、これもそのひとつ
14.ブラームス:ワルツ Op.39-15(1833~1897)
 ...ブラームスの"ロマンの極致"です
15.シューマン:子どもの情景より「トロイメライ」(1810~1856)
 ...トロイメライのような小品で、いかに聴衆の琴線にふれるか?

♪近現代
16.ドビュッシー:ベルガマスク組曲より「月の光」(1862~1918)
 ...信じられないほどの宇宙の美しさをお楽しみ下さい
17.ドビュッシー:子供の領分より「ゴリウォーグのケークウォーク」
 ...楽しいリズムと美しい和音がすばらしい曲
18.ラヴェル:亡き王女のためのパヴァーヌ(1875~1937)
 ...ドビュッシーとはまたちが違う、ラヴェルの高貴で上品な美音
19.ラフマニノフ:プレリュード 嬰ハ短調 Op.3-2「モスクワの鐘」(1873~1943)
 ...ロシアの教会中の鐘が鳴り渡る壮大な曲
20.アルベニス:スペインより「タンゴ」 Op.165-2(1860~1909)
 ...粋としゃれっけのタンゴです 

コンサート詳細ページには、各作曲家の音源(ピアノ曲事典より)へのリンクも貼られています。
※終了いたしました。


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